鉛筆削りに赤のクレパス

　夕食をとり，2階で横になっていると，すえの子がやって来ました．
　寝ている頭の横で，ゴトンという音がしました．
　そしてすえの子が言いました．
「パパあのねえ，えんぴつけずりにクレパス入れてもてん．とってくれる?」
　あいわかったと言うと，すえの子は部屋を出て行きました．
　体を持ち上げて…ゴトンの音の正体が，鉛筆削りと分かりました．ACケーブル付きです．
　2Bの鉛筆を持ってきて，鉛筆削りのプラグを差し込んでから，鉛筆を入れてみると，軽快とは言えない音です．
　そして鉛筆を引っこ抜くと，鉛筆の先の円錐の側面部が，真っ赤に染まっていました．
　もちろん鬼に襲われた血ではなく，赤色のクレパスが刺さっていて，鉛筆についたのでした．
　プラグを抜き，鉛筆削りをいろいろな角度に変えて，トントンしても，クレパスは出てきません．
　次に用意したのは，エアダスターです．強めの風で，クレパスのクズを吹き出そうという作戦です．鉛筆を差すところに，エアダスターの先を向け，シュッとすると，クズが飛び出しました…が，ほんの，ほんのちょっとです．刺さったというクレパスが，出てきたようには見えません．
　買って放置していた，USB接続のライトを開封しました．USBで電力をとり扇風機の，USBポートにつなぐと，良い感じに光りました．鉛筆削りの鉛筆を差すところに光を向け，片目を閉じて見ると…奥に，真っ赤な塊が見えました．こびりついています．
　ドライバーセットから，先端がキリになっているものを取り出し，ゴリゴリと，奥のクレパスを削り取ることを試みました．ゴリゴリして，トントンして，エアダスターでシュッとして，USBライトでのぞき見して，というのを何度か繰り返したものの，奥の赤いのは，減る気配を見せませんでした．
　削っていない2Bの鉛筆を差したところ，削れたのは数mmでした．
　この鉛筆削り，丁重に葬るのがいいのではないかと思いながら，プラグを抜いてケーブルを束ね，また横になりました．