「ただいま~」
「晩ごはん,できてるよ.食べよか」
「ほ~い,ほんなら,2階上がらんと,すぐいただこかな」
「手は洗ろてね」
「へいへい」
「おっ,さきの子や」
「パパ,おかえり!」
「食べんのは,みんな揃ってからやで」
「もう鶏肉食べた!」
「あかんがな.…ふむ,今日のメインは,鶏の照り焼きか」
「おいしかったで!」
「いやいや…そういえば,あとの子とすえの子は?」
「すえの子は,塾で,あとの子は…2階で,『推しの子』(単行本)見てるんかなあ」
「ええことないなあ」
「ん? さきの子とあとの子の,お皿の間のお弁当は,何なん?」
「これねえ,おじいちゃんのお弁当やってんけど,食べやんねんて!」
「そいで,さきの子とあとの子で食べるんか?」
「そういうこと」
「あら,あとの子ちゃん,まだ来てないの? 叱らなあかんなあ…」
「っと,ママが来た」
「鶏の照り焼き,ジューシーやな.ちょっと油が多いようにも思うが」
「そうやねん.パパ,あげる」
「ありがとさん.もらうよ」
「あ~~! パパ,ずるい!!」
「何やなんや,お前,ほしいんか?」
「パパはお外で働いてきてんから,これくらい食べてええの」
「パパ太る!」
「(え!? 食たらさらに肥えてしまうから,パパが食うんやなくて,さきの子に回せってか!?)」
「パパ太ってる!」
「(なんと!? ママすごい返し方しおったぞ)」
もう少し,さきの子とママとで言い争いをして,ママの鶏の照り焼きは結局,パパが食べました.
あとの子がやってきて,顛末を話す余裕もなく,さきの子とあとの子の間で,お弁当を等分する作業に取りかかりました.鶏の唐揚げに餡かけがついたものが,1個だけあり,さきの子がまず1口,そして(さきの子の基準で)半分になるまで食べていきました.