わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

デはじ2023

「『第5回 インターネットの概要・その5 転送速度の計算』について,解説します」

「その2の資料でも,説明しましたが,データ転送速度とは,1秒間にどれだけの情報を転送できるかを表したものです.
 データ転送速度の単位として,『bps』がよく用いられます.『bit per second』の頭文字ととったもので,日本語にするなら『ビット毎秒』です.
 例えば,『80Mbps』(80メガビーピーエス)と書いたなら,『1秒間に80メガビット転送』を意味し,8ビット=1バイトを用いると,『1秒間に10メガバイト転送』という意味にもなります.
 このデータ転送速度やbpsといった単位は,インターネット通信だけでなく,USBなどPCの機器における通信でも使用されます.また動画でも,『15Mbps』といった表記が採用されています.動画をファイルに保存する場合には,必ずしもデータ転送を行いませんが,数値が大きいほど,動画の品質が高くなります.その分,ファイルサイズも大きくなり,再生時には高性能なPCやアプリなどが必要となることがあります」

「データ転送速度について,いくつか補足します.
 まず,これは,パケットその他の形態のデータが,『どれだけ速く到着するか』ではなく,『単位時間にどれだけ多くのデータが通過するか』を表すものです.
 次に,『転送速度』に替えて,『伝送速度』『回線速度』『通信速度』と書かれることもあります.それぞれ,少しずつ意味が異なっており,使い分けも,あるのですが,本日の資料では特に区別せず,同義語として扱っています.
 補足の3番目を,これから活用していきます.転送速度は,世の中でいう速さとは違う,と言いましたが,小学校の算数で学習した速さと同じように,相互関係があり,かけ算・割り算を使った式で表すことができます.
 具体的には,転送速度は,データ量を時間で割って求められます.式にすると,『転送速度 = データ量 ÷ 時間』です.
 この等式を,『データ量=』の形に変形すると,『データ量 = 転送速度 × 時間』と表せます.転送速度に時間をかければ,データ量になる,ということです.
 もう一つ,変形ができます.式は『時間 = データ量 ÷ 転送速度』です.データ量と転送速度が分かっているときには,このように割り算を行うことで,データ転送の時間を算出できるのです」

「転送速度の計算例,一つ目です」

あるネットワークを使用して,3.6MBのファイルをダウンロードするのに1.8秒かかったとき,ネットワークの回線速度は何Mbpsか.

「求めるには『転送速度 = データ量 ÷ 時間』を使用します.データ量は,3.6MBとなっていますが,8倍して,3.6 × 8 Mbitとしておきます.時間は,問題文の1.8秒をそのまま使います.
 式にすると,回線速度 = データ量 ÷ 時間 = \displaystyle\frac{3.6\times8}{1.8} = 16Mbpsとなります.これが答えです.
 ところでこの問題で,『3.6 ÷ 1.8 = 2Mbps』とすると,間違いです.この割り算で求めた値は,実際には2MB/sです.bpsの形で,データ転送速度を求めるときには,ビットにしてから,計算することをお勧めします」

「転送速度の計算例,二つ目です」

伝送速度が20Mbps、伝送効率が80%である通信回線において、1GBのデータを伝送するのに掛かる時間は何秒か。ここで、1GB=10³MBとする。

「これは,『ITパスポート試験』という,情報処理技術者試験の区分の中で,最も易しいとされる試験で出題されたものです*1.実際には多肢選択式でしたが,計算して答えを求めましょう.
 『伝送速度が20Mbps』そして『伝送効率が80%』とありますので,実際の伝送速度は,20 × \displaystyle\frac{80}{100} = 16Mbps です.そして『1GBのデータ』は,1GB = 1000MB = 8000Mbitです.
 計算ですが,3つの式のうち,『時間 = データ量 ÷ 転送速度』を使いましょう.\displaystyle\frac{8000}{16}は500,答えは500秒です.
 この問題も,ビットに揃えることをせずに,1000 ÷ (20 × 0.8) = \displaystyle\frac{1000}{16} = 62.5秒と,求めるのは間違いです」

なにこれ

 今年5月の授業の一部です.「データ転送速度とはどういうものなのか」を理解し,「自分のPCで,大きいサイズ(数百MB~数GB)のファイルをダウンロードするときの時間の見積もり」ができるようになればよいと考え,資料(スライド,ナレーション*2)を用意し,課題を設定しました.
 資料は1年前から大きく変えているわけではありません.

 それと,「第5回 インターネットの概要」の回は,他と比べて学習内容が多くなっていました.そこで,その1からその4までの内容について,当日締切の課題を実施し,その5(転送速度の計算)は,次回授業の前日を締切とする宿題にしました.
 宿題は3つの小問からなります.第1問では,回線速度を測定してくれるサービス(https://www.speedtest.net/など)を使用して,自分の利用環境のネットワーク回線速度を「●Mbps」の形式で解答してもらい,その回線速度で4.5GBのファイルをダウンロードするのに必要な時間(理論値)を計算することを,第2問としました*3.第3問は,デはじ2017から数値を変更した出題です.
 「データ量 = 転送速度 × 時間」を用いた計算問題を課していないのは,意図的なものです.データ転送速度の計算は,試験で出題する予定はなく(この科目は試験を行わないと案内していました),この回のみの学習です.限られた時間で,データ転送速度の計算方法を学習・確認するには,2種類の割り算が必要であり,それで十分と判断したのでした.

*1:https://www.itpassportsiken.com/kakomon/02_aki/q95.html

*2:遠隔・オンデマンド型の授業です.

*3:学生ごとに第1問の値が異なるので,採点が少々大変ですが,「100Mbpsなら,4.5GBのダウンロードに必要な時間は6分(360秒;45秒だと,バイトをビットにする処理を忘れています)」「回線速度と時間は反比例」を使えば効率化できます.