夜のこと.
「そろそろ騒ぐのやめようか」
「だって~さきの子ちゃんが~」
「あとの子からやんか!」
「止まらんなあ…あ,おいしいもん,あったんや(リュックから袋を取り出す)」
「食べていいの?」
「何それ!?」
「スモークチーズっちゅうて,まあちょっと加工したチーズやな」
「1個1個は一口サイズになってて,パパ,仕事場で食てたんやが…」
「持って帰ってきたんや.ただし,残り何個かはわかってないんで…」
「今から1個ずつ,出してみるで.いち,にい,さん,しい,ごお.…」
「これで終わりか.5つやな」
「ちょうだい!」
「あたしも!」
「やるよ.さきの子に1個」
「やったあ!」
「あとの子に1個」
「おいしそう…」
「黙ってテレビを観てるすえの子にも1個」
「1個はパパが食べて…」
「残り1個はとりあえずリュックに戻すか」
「こんなん食べたことない!」
「ないか? スモークっちゅうのは,燻製のことな」
「けどチーズの味がする!」
「中までは,スモークされてないからな」
次の日の朝のこと.ママとすえの子と,自分が食卓におりまして….
「んでは朝ごはん,いただきます」
「パパそのノート取ってくれる?」
「あいよ.すえの子は,お勉強かいな」
「朝早よに勉強するつもりが,起きれやんかってんて」
「へえ」
「パパ消しゴムないかな?」
「ん? これか」
「そ.ありがと」
「その形状,そしてサイズは,昨日1個ずつ食べた,スモークチーズを思い出すなあ」
「…」
「あ,食べてない人がおる状況で,言うたらあかんかった!」
「そうやで,あたし,食べてないんやからね」
「(うう,食べ物の恨みはおそろしい…)」
出勤前に玄関で.
「じゃ,行ってくるね」
「気をつけてね」
「水筒をリュックに入れて…」
「(思い出した.昨日入れたスモークチーズの最後の1個は…)あった.ママ,これやねん,朝ごはんのときに言うたたやつ」
「食べてええの?」
「ええよ」
「(食べる)なるほど,スモークチーズやね.おいしいやん」
「じゃ,行ってくるね」