某年月日,帰宅すると,大人ばかりで,子どもはいませんでした.
妻が台所の引き戸を開け,顔を出しました.うえの子は9時まで図書館,さきの子・あとの子とすえの子はそれぞれ塾とのこと.
自分の部屋に上がって,ひと息つき,ズボンを寝間着のものに履き替えて,靴下を脱ぎました.
ほどなく階下から夕食の声がしたので,靴下を手に降り,洗濯機に放り込んでから,台所に入りました.
久しぶりに,1階のテーブルで夕食です.
いただきますを言った直後に,妻から,うえの子ちゃんのほうはあたしが行くんで,パパは,あと3人のお迎えに行ってねと,返ってきました.
あいよと返事をしました.靴下を履いたままにしとけばよかったと,後悔しながら,旬を過ぎたオクラを,口に入れました.
(妻の)父の車を借りて3人を入れ,無事故無違反で車庫まで戻りました.鍵を定位置に掛け,2階に上がると,部屋にいるのはさきの子だけでした.
5分ほどして,妻が上がってきました.
「パパ,すえの子ちゃんに,何も買わんかったん?」
「あーせやったな」
「買うちゃげてって言うてたやん!」
「うーんそれについては,こっちも言い分があってやな」
「パパ,いけいけー」
「さきの子ちゃんは,アイス食べててんて」
「そうやでー,おいしかったでー」
「さきの子とあとの子のほうが迎えるの,先やってやな,すえの子を待つ間に,コンビニで1品ずつ,買わせたんやが」
「すえの子ちゃん,帰ってきて,ママに,お腹すいたって言うてたからさあ」
「それがやな,車にすえの子乗せて,出発進行した直後にな,すえの子な,自分のリュックから,お菓子取り出しおってん」
「そうそう,グミ」
「すえの子が1個食べて,さきの子・あとの子と,パパも1個ずつもろてんけど,むっちゃ硬ぁて,噛み切るのに苦労したんな」
「そやったなー.塾行く前に買うてた言ってたでー」
「そんなんじゃあ,5時から9時まで勉強したあの子の,足しにならんやないの」
「まーせやねんけどな.そいで,帰りのコンビニに入るタイミングを失ったのも,事実やねん」
「あの子も何か食べたいって言わんかったしー」
「そこで,『お腹すいてない?』って聞くのが,お姉ちゃんやないの!」
「あの子,こっちを姉と思ってないし」
「いやいやその反論はまずいぞ.ともあれ今後は気ぃつけるよ」