わさっきhb

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論文の,表の「べからず」

 今年度も提出された修士論文の査読を担当しています.
 昨年3月に1人の先生が退職され,提出学生は昨年度よりも増えたので,修士論文の査読担当の数は多くなっています.当ブログで例年この時期に取り上げていますが,この査読は,合格・不合格の振り分けではなく,修士論文の質を高めるために実施しています.査読は指導教員でない教員2名が行い,期限までに「査読コメント」を連絡します.学生は「査読コメントへの回答」付きの修正版修士論文を提出して,発表会でプレゼンと質疑応答に臨みます.
 こちらは,1件1件査読して終わるたびに学生に連絡するのではなく,まずは担当すべてに目を通し,コメント案を書いていきました.次に,「どこをどのように修正すべきか」がわかるよう手直しをして,メールを書いて送りました.
 読んでいって,驚いたことがあります.全員,表(table)のフォントがゴシック体なのです.
 自分の認識としては,表に使用するフォントは,本文と同じにします.Wordで編集するなら,日本語はMS 明朝,英数字はCenturyまたはTimes New Romanです.フォントサイズは,本文よりも小さくてもいいのかもしれませんが,本文と同じでも気にはなりません.
 もう一つ,気にするのは,罫線です.学部講義で,繰り返り処理を手計算で行い答えを求めるのを,表であらわしています.表全体の最も上と最も下に横線,それと表頭(表の1行目)の下にも横線を引き,他には縦線・横線のいずれも引かないという形状を,スライドや試験の解答に載せています.
 具体的には以下のようにします.内容は,今年度の人文情報学概論のシラバス(授業計画)からの抜粋です(実際の授業はこの順番ではありませんでした).

 ただ,ここまで線引きにこだわらなくても,Wordで以下のように,縦横すべてに同じ太さ(Wordの表の罫線のデフォルト)で引いているのは,許容範囲です.

 まずいのは…言葉で説明すると,「Excelのシートの一部を,図としてWordに貼り付けた表」です.Excelのセルにときどき表示されるいわゆる三角マークがついたままだったり,セルの強調の意図がないのに一部の枠が太かったり(色がついていたり)したら,「論文としての表」としては不適切,作り直してくれ,と判断するのです.
 図にせよシートにせよ,ExcelからWordに貼り付けると,セルの各文字はゴシック体になりやすいです.さらに,ある学生の表は,2行目以降が縞模様のカラーになっていました.罫線にせよセルの塗りつぶしにせよ,強調の意図がないのに色を使うのを見ると,「要修正!」と心の中で反応します.
 そんな中,また別の修士論文を読んでいくと,ここまで挙げた,自分の思う「べからず」の事項を数多く満たし,しかしきれいに作られた表を見つけました.こんな感じです.

 フォントは,ゴシックです.各セルを,塗りつぶしています.表頭の文字色は,白です.罫線も,白色です.
 しかし,読みやすく構成されています.今年度査読した修士論文の中で,最も修正事項が少なかったのでした.体裁と中身の完成度が,高かったのです.
 その表を見て,修士論文の表の許容範囲を,より広くとることにしました.ゴシック体OK,セル塗りつぶしOK,表頭を濃く塗りつぶして文字は白抜きOK,罫線も,何色でもいいじゃないかというわけです.
 ただし,先述の三角マークつきの表については,作り直しを指示しました.
 修士論文修正版の提出期限は,発表会の2日前です.1つ1つダウンロードして,修正事項がきちんと反映されているか,査読させてもらった者としてどんな質問をするとよいかなどの検討に,時間をとる予定です.