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DBゼミの勘所: 3.発表と質疑〜おのおの作って衝き合わせよう

DBゼミは,「グループの各メンバが対等の立場でシステムを構築する」(DBゼミの勘所1より)ものですが,設計にせよ実装にせよ,「分担を決めておのおの進める」ものではありません.一人の内容が別の人に完全にカバーされるというのはまずいにしても,2人以上が関わる領域を作っておき,そこでは連携を図り,一人だけのところは一人が責任を持って展開していくべきでしょう.
そして,それぞれがコンテンツなり実装なりをして,そのまま発表するというのもまたまずいです.どんな順番で,どこをアピールポイントとして発表しないといけないかを,決めておかないといけません.アピールポイントというのは,いわゆる「売り」のことですが,ゼミ発表に関しては,前に発表して改善を指摘された点がどこか,そしてそれをどのように改善・解決したか,というのも欠かせません.
個々人の成果をもとに,グループとしてどのように発表をしていくか,すなわち「衝き合わせ」の作業は,できれば発表の3日くらい前にしておきたいものです.
あれ,タイトルが「発表と質疑」なのに,ここまで発表準備のことばかり書いていますね.まあ準備がままならない状態で発表に臨み,アドリブを効かせようという考えは,よくないものです.
ともあれ発表の場に視点を移しますか.
発表での話し方は,大丈夫でしょうか.基本は以下のとおり*1

  • スライドは「である体」または「体言止め」で書いておき,話すときは「です体」にする.
  • 対等のものを列挙するとき,列挙の前に「〜は3つあります」のように個数を言う.順番に言うときの接続詞は,「〜.次に〜.次に〜」ではなく.「まず〜.次に〜.それから〜.最後に〜」のように変える.
  • レーザポインタは,図などでここを見てほしいというときだけに使う.文を読み上げるときは,オフにする.
  • 自分の話す分が終わったら,「以上です」(最後の人は「以上で発表を終わります」)と言い,次に話す人か,司会の先生に,目で合図を送る.

しゃべり*2が終われば,すぐ質疑です.DBゼミでは同学年,先輩(いれば),教員と,質問できる人が広がっていきます.
質疑は,発表者にとっては,発表の至らない点を認識し,将来に役立てる時間です.ここでまた補足ですが,「至らない」には,「準備不足・知識不足」といった,通常の意味だけでなく,「時間その他の制約で割愛した」というものを含みます.もちろん,そういう割愛した部分で答えられるような質問が来たら,自信をもって答えましょう.
一方,聞く学生にとっても,質疑には,無批判に聞くのではなく,抜けているところ,不確かなところを見つけて質問の形にするという,大事な教育的役割があります.そうでなければ,発表の後いきなり教員が質問したほうがいいわけです.批判的に物事を見て,欠けているものを見つける能力,それと,相手に角を立てずに質問して情報を引き出す能力を養っておくと,研究でもビジネスでも即役に立つものです.
さて,うまい質疑をするコツですが,自分なりには次の三つです.

  • 発表を聞きながら,気になったことはメモする.
  • 他の人の質疑もメモする.
  • 質問は一つだけにする.

実際には,聞きたいことはいくつもあるものですが,質疑にも時間の制約があるということ,そして他にも質問したい人はいるということ,そして自分のその発表に対する問題意識を集中させるのが望ましいことから,質問は一人一つに絞るほうがいいと考えます.
とはいえこれは,DBゼミで,同学年の発表を聞くときの心構えであり,先輩モードや先生モードでは,また立場が違ってきます.それと,どうしても聞きたいことが他にあれば,発表後にこっそり聞くというのもいいでしょう.
他の人の質疑をメモする際,質問文そのものは不要です.キーワードだけ拾えば十分です.しかし,どこの内容に対する質問なのかについては,間違いなく押さえておきます.そこを掘り下げれば,本質に関わるような質問が出るかもしれません.ある1枚のスライドで質問が出すぎて,一通り出尽くしたら,他のスライドに照準を変えて検討するというのも有益です*3
今年度のDBゼミはもう終わりましたが,振り返ってみると,「質問魔」と呼ぶべき学生がおりました.その是非を言うよりも,途中からそういう役回りになってしまったかなと,同情の気持ちがあります.自分が質問をする番になったとき,焦点を絞った質問,教育的効果の高い質問は,決して多くなかったなあと,反省しています.

*1:発表する状況が少し違いますが,報告書でひと工夫 - わさっきもあわせてご覧ください.

*2:「発表」あるいは「プレゼン」という言葉は,自分の見聞きする範囲では,発表者が一方的に話すだけの意味でも,話したあとの質疑応答を含めるという意味でも用いられるように思います.「話すこと」だけを指す表現は「しゃべり」「トーク」「スピーチ」あたりですかね.

*3:ただし,あるスライドで熱心に議論し,別のスライドに移って議論し,前のスライドに戻って別の観点で議論する,というのは,避けないといけません.「いつ話題を変えるか」というのは,ゼミの質疑に限らず,一般に難しい問題です.