わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

ゼミ発表での質問の仕方

最近のゼミで,自分の質問の作り方を,分析してみました.
原則は,次の2つです.

  • 自分がどのタイミングで質問できるかを確認し,そこに合わせて質問の候補を作る.
  • 「ここが埋まれば,発表内容の全体が分かるんだけど」という部分を,質問にする.

現在,立ち会っているゼミ発表では,「PowerPointと液晶プロジェクタを使ったスクリーン映写」ばかりです.研究グループ内では,そのスライドを6upの両面で印刷し,発表に先立って,配布してもらっています.
さて,自分がどのタイミングで質問できるか…これは何回か出席すれば分かりますし,そうでなくても,司会者の言うことに従えばいいでしょう.とはいうものの,3年のゼミ(DBゼミ)では長らく,質疑の順番は

  1. 3年生のみ
  2. 上回生を含め,学生全体
  3. 教員(上位から)

となっています.小ゼミは

  1. 学生
  2. 教員(上位から)

ですね.小ゼミのこの順番は,大ゼミで

  1. 学生
  2. 教員(順序は任意)

となっているのが元です.
というのを意識して,私は自分の質問がしやすいように,発表や,他の方の質疑で,メモをとっています.方針は次のとおり.

  • 気になったことを,疑問文として書きます.ここが訓練のいるところなのですが,少しでも効率よく能力アップを図りたいのなら,発表後に,先輩でも誰でも,どんなメモをとっているかを見せてもらうのはどうでしょうか.私のメモについても,いずれ実例を出したいと思います.
  • 後の説明や質疑で,疑問が解消したら,その下にでも,「→」と,答えの内容,または説明をしているスライド番号などを書きます.
  • 自分の書いた疑問と同じことを,他の人が質問したら,書いたところの左上に小さな黒丸の印をつけます.ぐるぐるぐるぐるとしながら,質問があったことを短期記憶に入れておきます.ただし発表後には,そんなに重要な情報ではないので,大きく描く必要はないのです.
  • 見かけた誤記もメモしておき(あるいは,配付資料に印をつけ),時間に余裕があれば,正しい表記を添えておきます.経験上,そういった小さなところから,根本的な課題が浮かび上がってくることがあるからです*1

話し方については,自分にとっての「べからず集」を作っておきます.

  • 「3つあります.ひとつは,…」:質問を先に列挙されて,順に(あるいは順不同で),答えることは,私が発表者だとできません.代わりに,質問ごとに1往復以上のやりとりをして,けりをつけるまでは,次の話題に移らないようにしています*2
  • 「ここが分からない」:分からないと放り投げても,答える側も困ります.「ここはこういう意味ですか?」と,自分なりの解釈を言ってみることをおすすめします.正解だったら,自分の中で,分析能力の点数をアップします.間違っていれば,コミュニケーションが進展するというものです.
  • 「ここを解決しないと,研究にならないよ」:文字にすれば明らかなのですが,この発言は,「ここを解決しない限り,研究として認めてくれない」という可能性がある,危険なアドバイスです.これで発奮してくれて,力を注いで実際に解決できればいいのですが,必ずしもそうではないし,本当に先が進まなくなって,卒業研究や修士研究が停滞してしまうと…その発言が単独の要因でないにしても…まずいことです.難しいけど,そこを解決すれば査読付き論文にまで持って行けそうなくらいの課題については,「ここが重要そうですね.ただ,そこばっかりに時間をかけて,モノにならなかったというのは(学生の)研究としてまずいので,他の小さなところを解決していきながら,大きな課題に答えが出せないか,常に意識するようにしてください」と言いたいところです.
  • 「筋が悪いんじゃないの」:もしこのアドバイスを受けたら,あなたが悪いのではなく,あなたが採ったアプローチが,その先生の経験に即して良くないと言っていることを,理解しましょう.でもまあ辞書にも「素質がない」「たちが悪い」という意味で書かれていますし,「筋が悪い」は聞いていてあまりいい印象を持ちません.私なら(とくに卒研*3なら)「今回発表してくれた方式のほかに,コレコレというやり方があります.よく知られているものなので,ちょっと調査して,できれば,それとこれとの比較をしてみてください.複数のアプローチが考えられる中で,なぜ自分の研究ではこれを選んだのか,筋道立てて説明するというのは,問題解決という観点で重要な作業なのですよ」と言いたいところです.
  • 「評価の方法を,教えてください」:これは会話やプレゼンで発する「えー」「あー」「えっと」を長くしたようなものです.なくせとは言いません.コミュニケーションを滑らかにする効果があるのは事実ですが,いろんな発表者に対して使うと,「それしか言えないのか」という評価が定まるでしょう.また,限られた発表時間,質疑時間を考慮し,活動内容のところでの質疑を期待して,準備していた人に対して,この質問は失敗です.代案は,「評価の方法が書かれていなかったのですが,もしするとしたら,…といった感じになるのでしょうか?」と,実施可能そうなプランを立ててみることです.

質問内容からうかがうことのできる,質問の仕方,心がまえは,人それぞれです.私の質問内容を「ぬるい」と思う人も,いるのかもしれません.
ただ,ゼミ発表に対する質疑を,ひとつのコミュニケーションとして見たとき,

  • 質問を受けた側が喜べる
  • 質問を発した側も喜べる

どちらの観点も不可欠だと思っています.もし「黙っていてもいいや」という考えで,ゼミに出席している人がいれば,沈黙の時間(その都度)に,次の2つについて,考えを巡らしてみてください.

  • 今,何も言わないことを,発表者は嬉しいと思っているのだろうか?
  • 今,何も言わないことを,自分自身は嬉しいと思っているのだろうか?

*1:誤記があるところには,事前に十分なチェックがなされていなかった,という解釈も可能でしょう.

*2:ただし,http://twitter.com/takehikom/status/6230251934で書いたようなデメリットもあります.そこでは「ぼやき」の形にしましたが,自分の発言で,場が活発になったのなら,まあいいかなと割り切っています.

*3:なぜ卒研限定なのかというと,当雑記でときどき書いている「エンジニアリングデザイン」が背景にあります.修士の学生にも,同じようにアドバイスをして,必ずしもいけないというものではありません.