「真実の瞬間」というのがある.これはユーザー,上層部,プロジェクト・チーム・メンバーが期限までにシステムが完成しないことを認めなければならないときだ.
(デスマーチ 第2版 ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか, p.137)
この「真実の瞬間」というのは,腑に落ちます.
いろいろな状況で見かけます.
プロの将棋の観戦記で,負けを悟ったとき*1.
学校生活で「あいつには敵わない」と気づいたとき.
野良猫を見つけて可愛がっていたけど,あるときに手元を離れ,見つけたときには,本当の飼い主のところで大事にされている*2というとき.
キュブラー・ロスの死の段階モデル*3で,「受容」と呼ばれる第5段階に入ることになったとき.など.
それが大事の「ここにあなたがいないのが 淋しいのじゃなくて // ここにあなたがいないと思う事が淋しい」も含めたいところです.
ここまで関係しそうな例を挙げてから,Googleでgoogle:真実の瞬間を調べてみると…ショックでした.世の中の使われ方は,全然意味が違うのでした.
『真実の瞬間』という言葉がある。これは、航空会社、ホテルをはじめとしたサービス業を営んでいる方やその仕事に就いている方(特に管理職)なら御存知の言葉だと思う。
http://www.kumagaya.or.jp/~sam/kidd-8.htm
(略)
『真実の瞬間』(MOMENTS OF TRUTH)というのは、SAS(スカンジナビア航空)グループの最高経営責任者(現在も、同じ職にあるかどうかは未確認)のヤン・カールソンという人間が、自著のタイトルに使った言葉で、(ただし、『真実の瞬間』(MOMENTS OF TRUTH)という言葉自体は、ヤン・カールソンが自著に使う前から存在していたはずだ)簡単に言えば『従業員が顧客に接する(最初の)15秒間でその企業の成功が左右される』という意味を持っている。その15秒が利用者にとって、その企業を表す『真実の瞬間』というわけだ。
真実の瞬間
真実の瞬間(しんじつのしゅんかん) - ITmedia エンタープライズ
MOT / moment of truth / 決定的瞬間
主にサービス業で使われる言葉で、接客などの現場で企業(従業員)が利用者(顧客)と接するわずかな時間のこと。顧客にとっては、現場スタッフの接客態度や店舗設備の状態などから、その企業全体に対する印象・評価を決定する瞬間となる。
それにしても,『デスマーチ』の「真実の瞬間」を,何と言い換えればいいのだろうか…
「悟りの瞬間」だと宗教色が濃いし…
「アハ!体験」*4や,英辞郎を引いて出てきた "aha! moment" が近いかなとも思ったものの,そこでは "Aha!"*5のあとに喜びと感動を覚えるものですが,冒頭に挙げた例はいずれもその方向ではないので,やっぱり不適切….
もう少し考えるとします.
*1:その後の負け側の指し手には,「形づくり」という言い方がされます.
*2:ついでに,そういうときは,自分がつけたのと違う名前で呼ばれているものですね.
*3:http://www.osoushiki-plaza.com/mosimo/kokuchi/kokchi18.html など.
*4:http://aha.sega.jp/aha_01.htm
*5:個人的に初めてこの単語を知ったのは,『珠玉のプログラミング―本質を見抜いたアルゴリズムとデータ構造』でした.「アハ!アルゴリズム」だったかな.