1年ゼミの指導の参考にしようかと,本を何冊か読んでいます.
その中で,これは許容範囲を超えているな…と思わずにいられなかった記述がありました.
できればケータイからいきなりメールを送るのはやめよう.PC用のメールアドレス,それも大学のメールアドレスを使うのが望ましい.(略)
それでもケータイから送る必要がある場合もあるだろう.実際にわたしが受け取ったメールの,良い例と悪い例を挙げておく.
良い例サブジェクト:携帯から失礼します
**先生
**学科4年の**です.風邪を引いてしまい熱が出てしま
ったため,本日の授業を休ませていただきたいと思います.
申し訳ありませんが,よろしくお願いします.
***************************
**大学**学部**学科4年
****
******@***.senshu-u.ac.jp
***************************このメールは,ケータイからの発信だが,署名もきちんと使っている.
(知のツールボックス―新入生援助(フレッシュマンおたすけ)集, pp.196-197)
4つ,気になる点があります.
まずは,サブジェクトです.何の用件かわかりませんし,ケータイメールなのは,メールアドレスや,文章がPCメールと違うのですぐ分かります*1.
それでも,「携帯から失礼します」を書きたいなら,本文の2番目(名乗りの次)に置くのがいいでしょう.
サブジェクトは,「本日の<授業名>について」が無難なところでしょうか.欠席を強調するなら,「本日の<授業名>を欠席します*2」とか.
次に,「**学科4年の**です」という名乗りの記述に,待ったをかけたいです.
ここは,発信者(学生)と受信者(教員)との関係を,書き手が規定し,読み手は確認することになります.典型的なケースと,そこで期待される書き方を列挙してみます.
- 授業(講義,演習)の相談であれば,「<学生番号>の<氏名>です」.
- 学外の先生へのメールであれば,「<大学名>の<学生番号>,<氏名>です」.
- ゼミ(1年ゼミを含む)や,研究室内からなら,「<学年>の<氏名>です」.
それから,署名について.ケータイメールで5行にもわたる署名を書くのは冗長です.From行と本文の署名でアドレスが違っているメールを受け取ったとき,返信をどちらに送るといいか,迷うこともあります.
ケータイメールに署名はなくてもいいと思いますが,もし書くなら,本文末尾に改行せず「--<姓>」とするのが,見かける限りスマートな表記です.
最後に,このメールを送ることで学生が教員に何を期待するかが,この文面から読み取れません.
無断欠席でないことを伝えたいのでしょうか? 授業資料が欲しいのでしょうか?
もし,授業中に発表が当たっているけれども,風邪のため休むというのなら,確かに要連絡ですが,その旨の情報を本文に含めるべきでしょう*3.
ちなみに引用部のあとには悪い例が続きまして,その中の『課題などありましたらお知らせください』は,上の良い例にない,良い記述と言えます.
(2009年4月24日:細部をいくつか修正しました.)
*1:改行なく数十〜百数十字程度の本文なら,From欄で確認するまでもなく,ほぼケータイメールです.引用における改行位置は,本文に合わせていますが,実際に受け取ったメールでは改行がなされていなかった可能性が考えられます.
*2:「欠席させていただきます」とすると,一見丁寧な表現に思えますが,「自分の一存で欠席を決めました」というニュアンスが含まれるので,読み手に良い印象を与えません.
*3:後日の発表にせざるを得ませんが,病気が理由なら,そこまで気を回さなくても,先生の返信の中に,「では後日に」か,具体的な発表日があることでしょう.もちろん,就職活動やクラブ活動など,前もって分かっている場合には,代わりの日を相談するのは,学生の役目となります.あらかじめ他の学生からチェンジの内諾を取ってから,報告するというのも,よく行われます.