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ファイルのバックアップ手法

先々週のゼミで,発表資料を作ったけれどもハードディスクがクラッシュし,提出・発表ができなかったという,学生の発表の時間をとって,説教をしました.
これを機に,重要なファイルは,「バックアップ」をとりましょう.
いろいろソフトウェアもありますが,選ぶ際のポイントはふたつあって,一つは手軽にバックアップができることです.取り出すほう,これは「リストア」とか「レストア」とか呼ばれますが,必ずしも簡単でなくてもかまいません.
もう一つのポイントとして,修正したり更新したりしていくファイルとは,物理的に異なるデバイスに置くことを挙げたいと思います.ここで少し脱線しますが,テキストエディタの持つ,バックアップ機能について,取り上げておきます.エディタによっては,そのファイルと同じディレクトリに,ファイル名の後ろに「.bak」だとか「.1」だとか「~」だとかを付けて保存する機能を持っていて,これもバックアップと呼ばれます.しかし,ハードディスクがダメになったら,そのバックアップファイルを取り出すことも,当然,ほぼ不可能になります.これはテキストエディタやOSが異常終了したときのためのバックアップであって,今回したいバックアップとは異なるのですが,念のため知っておいてください.
さて,「物理的に異なるデバイス」に注目して,バックアップ方法を考えると,実際に物理的に違う媒体にコピーすることです.一番手軽なのは,USBメモリです.持っていなければ,4GBのものを,量販店にでも行って買いましょう.研究室配属から卒業研究終了までくらいなら,一杯にならないでしょう.ただし,紛失に注意です.
あとは,SDカードや,音楽プレーヤというのも,ファイルをコピーしたり取り出したりするのによさそうですね.それぞれ,PCと接続するためのアダプタだとかケーブルだとかを忘れずに.筆箱に入れて,持ち歩けばいいんですよ.
少々贅沢が効くのなら,普段使っているパソコンに,ハードディスクドライブを増設するというのも一つの手です.そして,テキストエディタの設定か何かで,バックアップ先ディレクトリを,その新設したドライブの中にすればいいわけです.
しかしここまで言った方法だけが,バックアップではありません.
インターネットの力を借りましょう.現在,ファイルを「物理的に異なるデバイス」に置いておくことのできる無料サービスがたくさんあります.
まずは,サービスとかソフトウェアとかではないのですが,「自分宛メール」というのを知っておいてください.その名のとおり,自分宛にメールを送って,そこにファイルを添付するのです.もう使わないとなれば,サーバからそのメールを削除すればおしまい.メールを使うもう一つのメリットは,いつ「バックアップしたか」が,Dateのフィールドにばっちり残ることです.
なお,メールで送る場合,ファイルサイズには注意です.エンコードというのによって,メール本文のサイズは,元のファイルの5割増しくらいになります.zipなどで圧縮したファイルを送ればいいでしょう.それでも,10MBを超えるファイルは,個人的に,メールで送るのに気が引けます.
あとはフリーのソフトウェアをインストールすることで,快適になる方法をいくつか紹介します.
メールと同じくらい古典的な,情報のやりとりの方法で,FTPというのがあります.現代では,FTPはユーザ名やパスワードが簡単に盗聴される*1ので使うのは好ましくなく,代わりにSSHを使用します.
前書きはここまでにして,SSHを利用して,Windowsのパソコンから,SSHサーバに通信してファイルをやりとりするソフトとして,広く普及しているのが,WinSCPです.
WinSCPに限らず,SSHクライアントについては,ダウンロードやインストール,そしてログインまでの設定であれこれ苦労させられがちです.しかしこれらは「手軽に使えると危険」なものです.それとは別に,研究室で卒業研究をしていくための基礎となる勉強をしているみなさんには,これくらいの利用はできるようになって当たり前,になってほしいものです.まあ独力で苦労してあれこれやらなくても,Googleで検索して,使い方を書いているところを参考に,使っていけばいいんですけどね.
WinSCPを使う場合,接続する「SSHサーバ」が必要です.うちの大学なら(略).
SSHとは別の,ファイルやりとり方法で,手軽なのは,Dropboxです.WinSCPよりは,導入が簡単です.少々,英語は出てきますが.導入後も,簡単です.使うには,Dropbox専用のアカウントの登録が必要ですが,もちろん無料で登録できます.そして,自分が普段使っているパソコンの,特定のフォルダにファイルを置けば,それだけであとはネットワークを介してDropboxの領域にコピーしてくれます.実に手軽です.
別のパソコンで同じようにDropboxをインストールしておき,すでに登録しておいたユーザ名とパスワードを打ち込んで,しばらく待てば,ファイルがやってきます.「別のマシンにDropboxをインストールできない」だとか「他のアカウントで使用されている」だとかいったときでも,ブラウザを起動してURLを指定して,まあ途中でユーザ認証がありますけどね,それでもってファイルを一覧でき,そこからダウンロードも可能です.
Dropboxの気になる点は,外部に置きますから,情報漏洩や,取得したいときに取得できない場合にどうしましょう,ですね.WinSCPで一旦,学内の自分のホームディレクトリの中に入れておけば,機密性にせよ可用性にせよ…というのは,セキュリティの三大要素として教わりましたよね,教わりましたよね!…損ねる可能性を下げやすくなるというものです.
あと,研究室内限定であればSubversionが有効です.TortoiseSVNとその日本語設定ファイルをインストールして,こちらで指定したリポジトリURLでチェックアウトし,快適に使ってください.
ということで,まとめますと:

  • バックアップは物理的に異なるデバイスに取りましょう.
  • サイズが大きいときや,複数のファイルを一括して扱いたいときは,zipで圧縮しましょう.
  • インターネット経由でファイルを受け渡しするときは,機密性と可用性をよく考えましょう.
  • バックアップの手段は,一つではなく,自分にとって使いやすい2〜3個を選びましょう.

ゼミを離れて,余談をふたつ.

*1:「だだ漏れ」と言います.