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状況を図にする3

いくつかの問題と立式と根拠の組み合わせについて,図を作ってみました.
図をお見せする前に,いくつか準備を.高さ2の木構造で表現します.最上段でオレンジ色に塗りつぶしたのが「問題」,中段の,青い楕円で囲まれているのが「立式」,最下段の,緑の角丸長方形の中に書かれているのが「根拠」です.問題に対して立式はもっとありますし,立式に対して根拠はもっとありますが,図の大きさの都合で,代表的なもののみを挙げています.
かけ算で式を立てていますが,いずれの問題についても,「3+3+3+3+3=15」という,累加の式については,今回の議論から外しています*1
根拠は必ずしも正誤判定の対象とされないこと,そもそもどれが正解でどれが不正解かは,問題文のみから一意に定められないことに注意し,どんな答案や考え方(の結びつき)が「正しい」ではなく「あり得る」のかについて,ご覧いただけると幸いです.

《問い》

「ひねくれ」とは,

「dの求め方で「5×3=15」と書きたくなるところだけど,これは引っかけ問題だと認識して,(「1つ分の大きさ」「いくつ分」の当てはめをすることなく)「3×5=15」と書く」

分かりやすく抽象的に・2010年11月バージョン

のことです.
立式と根拠を結ぶ線が細かったり太かったりしますが,太い線は,その組み合わせになる可能性が高いことを示します.別の言い方をすると,この問題文に対して,「5×3=15」を書いた児童の中で,「5と3を取り出してかけ算」した可能性が最も高く,トランプ配りは非常に低い*2となります.証明はできていませんので,個人的にいろいろな情報を見てきた経験に基づく「仮説」とお考えください.
なお,線の太い細いは,定式化できます.具体的には,「立式が与えられたときに,それはどのような根拠で書かれたのか」を条件付き確率で表せそうです.とはいえ,それぞれの確率は不明ですし,pやらqやらといった文字で表すと,それぞれの可能性がフラットに見えてしまいそうです.なので,「できそう」にとどめておきたいと思います.

アレイ図

問題については,机のかけ算で検討済みです.
この問題に対しては,4つのいずれの根拠もあり得て,2つの立式はともに正解となることを期待します.
ですがこのことをもって,最初の図の《問い》で「5×3=15」を正解とするわけにはいかないとも考えます.アレイ図の問題文には,数量を書いていませんが,最初の問題文には「5まい」「3こずつ」といった単位付きの数量が書かれているからです.この数量情報は,式を立てたあと,問題文の状況に合っているかのチェックに(そして採点や,答案返却後の先生の解説にも)使われます.
別の言い方をするなら,最初の《問い》からこのアレイ図に変換することはでき,そのアレイ図をもとに「5×3=15」として丸の数を計算できるけれども,この立式を最初の《問い》にそのまま戻して正当性を主張することはできない,ということです.

皿に乗ったりんごの図

上の2つの問題の中間的なものを考えることができます.

皿(のようなもの)で分類をした状態*3を与えているため,4つの根拠の中では「3個の5つ分」がもっとも自然な解釈になります.

前者と後二者の違い

2番目と3番目の図では,「総数が図から読み取れる」という共通点が指摘できます.
もちろん冒頭の《問い》では読み取れません.なので,かけ算の順序とは別に,「5+3=8」という足し算にしてはいけませんよという意図も,想像できます.
アレイ図で総数を数える問題を,図なしで表現できるでしょうか.例えば,「つくえを たてに 5つ、よこに 3つ ならべました。つくえは ぜんぶで いくつ あるでしょう。」とすると,

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という解釈だけでなく,

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といった解釈も,できてしまいそうです.

*1:問題文だけではなく,出題者(先生)と解答者(児童)の間で,どのようにして解けばよいか,何を正解とし何を不正解とするかの取り決めに依存します.取り決めが明確でない場合であっても,バツをもらってから「こう考えることができる(から正解にしてほしい)」と主張するのではなく,「誤解されるとまずいので,(式を含む)答案から根拠が分かってもらえるような書き方にする」と意識しながら答えを形にしてほしいと願っています.

*2:「無視できる」でも,「無視できない」でも,お好きなのをどうぞ.

*3:新潟のケースに類例があります.