「さて,作業をするか.….と思ったら,長女がやって来たっぽいな」
「(勢いよくドアを開けて)ぱぱ〜」
「あい,おはようさん」
「ぱぱ,ぱぱ」
「えっとやな.今からな,昨日のうちに親類やお世話になっている人向けに,“双子,生まれました”って印刷したハガキにな,切手を貼るねん」
「?」
「ここにな,お皿があるやろ.水を張ってんねんけどな…ってこら,皿を持つな! ああもお,テーブルが濡れてしもたやないか.さっそくやなあ」
「きゃ! きゃ!」
「あとやな,切手ってのはこんなんや(切手シートを見せる).点々になってるとこで,切らなあかんねんけど…やってみるか」
「…」
「それとハガキやな.さてうちの子よ,うまいこと切れたか…ああ,おしい.最後の最後で,切手を切ってしもたか」
「ぱぱぁ」
「ええよええよ.こっからはおとなしく見てるんやで.まず指を皿に入れ,ちょっとぬらします」
「…」
「次に,切ってくれた1枚の切手の裏っ側に,このぬれたんを当てます」
「…」
「それで,切手を表に向けて,ハガキのここんところに,ぺたっと.あ,ずれてもた.まあええか.んでちょっと待ったら,もう動かなくなって,貼り付け完了ってわけや」
「ぱぱぁ」
「やりたいねんな.その気持ちは分かるが,この作業でミスられると,どうしょうもないので,あとはパパがやる.お前はやな…あ,ええのがあった(切手シートの端切れを渡す)」
「?」
「これも,裏がな,おんなじようになってて,貼ることできるんねんで.やってみるか.まず(長女の右手の人差し指をつまんで),指をぬらして…こっちの面に,ちょんちょんとして…」
「(喜ぶ)」
「しもた,何に貼り付けよか…テーブルの上の,ママのんやけど,旅行ガイドに貼ってみるか.反対向けるんやで…よっしゃできた」
「できた?」
「あ,まだ乾いてないから,今触ったら,動いてまうぞ.今のうちに,お前の指,拭いちゃろ.….もうええやろ.さっき貼ったん,触ってみ」
「(動かないのを知る)」
「これが“貼る”っちゅうこっちゃ」
「まま〜」
「こらこら,その本持って,寝てるママのところへ行くっちゅうんかよ…」