わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

母の伝説

母のことについて,転載する.
父については http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20110816/1313447298 にある.

母の伝説として,真っ先に書かないといけな
いのは,母の父,私から見れば祖父の,葬儀
のことになる.
火葬場で,蓋が閉まるときにそこに駆け寄り,
「私も行く〜」と叫んだ.
親類の誰だったかは後に「女優ばりの行動」
と言っていた.

もう一つ,親類経由で聞いた話.ある人が結
婚することになった.
親類みなが反対する中,母は「愛し合ってる
んやからええやろ」と言って賛成し,式にも
出席した.
披露宴の親族出席者が母だけという状況を想
像してみると,すごい.

母は,自分の父や母や,兄や姉からたっぷり
の愛情を受けて生きてきたに違いない.
そして妹と甥・姪その他,自分より年少の者,
弱い者にふりまいている.

兄と私,すなわち我が子への愛情はどうか…
何のやりとりだったか,「子どもへの愛情イ
コール子どもにどれだけモノを食べさせるか,
なのか」と聞いたところ,きっぱりと肯定し
た.
母の伝説の少なからぬ部分は,食に関するも
のである.

朝から気合いを入れてカレーを作る.具材は
もちろん残り物ではない.

カレーでないときでも,朝食の量が異様に多
い.
「こんだけ食べたら,昼も夜もいらんやろ」
と言ってくる.

いってきますと言ったら,ある日には
「今晩はカレーやから,お昼に食べてきたら
あかんで〜」という.またある日には
「今晩はお好み焼きやから,お昼に食べてき
たらあかんで〜」という.学食にはない.

ナンキン(カボチャ)は,煮るか,味噌汁の
具になる.
その際,一口大には切るが,皮もヒゲも種も
取らない.すべて食べさせる.

豪快な料理というと,どんぶり鉢の茶碗蒸し.
1回につき蒸し器には1杯だけ.
ずいぶん時間をかけても,中は固まらない.

トマトは生で,丸かぶりが基本.リンゴかよ.

スパゲティに,焼きそばソースをかける.
しょっぱい.
お好み焼きのメリケン粉が足りないからと,
ホットケーキの素を入れる.甘い.

帰宅して,すぐ食べたいと言ったところ,カ
レー皿にごはんと,おはぎのアンコを盛って,
スプーンを挿して持ってきた.勘弁してくれ.

けっこうな量の大豆を買ってきた.「味噌,
作んねん」と言い,水に浸けて…
次の日の朝食は,大量の大豆の煮物になって
いた.挫折したらしい.

ふわふわの卵焼きが,食卓にのぼることはま
ずない.
乾燥した,ちりめんじゃこ(いりさん)をど
ばっと入れるので,そいつが水分を吸ってし
まう.

家族外にも,「我が家風」を振りまく.
ある朝,友人が車で迎えに来てくれたとき,
食べられるものを手当たり次第に出す(私は
運ぶ係).
焼きたてトーストに,揚げたて天ぷら.
友人は何人かいるのに,牛乳瓶1本.
「お茶を飲んでや」と,モロゾフのプリンの
グラスに茶を入れる.

長女がベビーカーに乗っていたくらいのこと.
母と,白浜で合流しようとなった.駅まで車
で迎えに行ったところ,母は重箱と手提げカ
バンを持っている.
昼食タイムになり,開けてみると,3段の重
箱の,上の段と中の段には,行楽では違和感
のないおかず.なのだが下の段には,3×3の
おはぎ.表面がアンコのと,きな粉のを,市
松模様になるよう配置している.
手提げカバンの中からは,もずくのパック.
ちょっと大きめ.どうやって分けるのか聞い
たら,人数分の同じパックが出てきた.一人
1パック.心の中で涙して,食べ切った.

好き嫌いはないはず.
と言いたいが,おにぎりのシーチキンマヨ
ネーズは食べるかと聞くと,「誰があんなん」
と.私もあれは厳しい.一応,味覚は受け継
いでいるらしい.

食以外のことを.
結婚当初は別だったらしいが,私が物心のつ
いたころから,堺市某所の4軒長屋の一角に
住んでいた.借家であった.
退職金とそれまでの蓄えで,家を買い上げた.
「4軒長屋の1軒だけ買うって,できるの?」
違う.4軒を買い上げた.
その年に私は結婚することになり,家を離れ
る.代わりに兄夫婦が戻ることに.

私が小中学生のころ,そして年齢の近い親類
が多かったときは,よくトランプで遊んだ.
母の入るババ抜きは,母がJOKERを持ってい
るか持っていないか,手札に入れてしまった
か出て行ってくれたかが明確に分かって,楽
しい訳がない.
花札も好きで,2人で遊ぶときは牡丹と萩を
除いて「手八の場八」,3人だと「手七の場
六」だったか.

母が,私が生まれるときのことを語ってくれ
たことがある.
お医者さんとは「いくでー」「あいよー」の
掛け声で,生まれたという.
もちろんこれは母なりの笑い飛ばしであり,
母子手帳には陣痛は5時間とあった.

自分の方法で,愛情表現をすること.
苦労を苦労と思わずに,生活を楽しむこと.
母から受け継ぎたいのはこの2点.