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マジメ学生,バカ学生

アホ大学のバカ学生 グローバル人材と就活迷子のあいだ (光文社新書)

アホ大学のバカ学生 グローバル人材と就活迷子のあいだ (光文社新書)

久しぶりに,読者を選ぶ本,というかエピソードフレーズを見つけました.

慶應に限らず、表現にこだわるのも広報の特徴。
著者・石渡は以前、立命館大を取材し記事を書いた。その際、「立命館大は〜だ。同大では〜」という一文があった。もちろん、言葉の重複を避けるためだ。すると、
「同大は『同志社大』の略称と混同されるので訂正してほしい」
と要求された。
立命館関係はそこまで同志社をライバル視しているのか、と驚いたものだ。
(pp.44-45)

読者の反応として「大学って,こだわりがあるんだねえ」「それは石渡さんの配慮不足」「自分のことが文字になるなら,そんなふうにチェックするかも」あたりが思いつきます.そしてさらに読み進めていくかの判断に迫られます.
そして私はというと,「自分のことが文字になるなら,そんなふうにチェックしたくなる*1.ともあれ読み進めよう」です.


本日の本題は,「マジメ学生・バカ学生」です.ページで言うと,pp.86-94です.
なのですが,本の中で述べられている,マジメ学生とは何か,バカ学生とは何か,どのような良し悪しがあるのかについては,次の記事が的確にまとめています.

本からどこを引くのがいいかというと,次のところでしょう.

バカ学生の特徴を一言でまとめると、目の前に面白いことがあれば、そこに興味を持つことだ。それが非効率なことであってもお構いなし。小学生だと、学校で宿題をやりなさいと言われて、おとなしく宿題をするのがマジメ学生、宿題をやろうとしたところに友達から遊ぼうと誘われたら宿題を放り投げるのがバカ学生である。
(pp.89-90)

光景が目に浮かびます.
しかし,「できすぎ」の感もあります.なんとも洗練されたように見えます.
読み進めると,元ネタを知ることになります.

ビジネス雑誌「プレジデント」の2011年10月17日号「大学と就職・出世・結婚・お金」の人事部対談ではIT業界の採用担当者のコメントとして次のような本音が書かれている。
「うちが適性試験で最も重視しているのは働く動機だ。(略)たくさんの設問があるが、たとえば『宿題をやっているときに、友達から遊びの誘いがありました。あなたはどうしますか』という質問がある。答えの選択肢には『宿題が終わってから遊びにいく』『宿題を放り投げて遊びにいく』というのがある。うちで活躍しているのは、宿題を放り投げて遊びにいくやつなんだ(笑)。つまり、楽しい話があれば、すぐに飛び乗るタイプが仕事でも成功している。(略)」
(p.93)

「宿題が終わってから遊びにいく」「宿題を放り投げて遊びにいく」を,適性試験の設問の選択肢として挙げています.
ですが,マジメ・バカといった言葉は出てきません.プレジデントの読者層を考えると,そうなるのでしょう.
今回取り上げた本の中で,石渡氏が「マジメ学生」「バカ学生」というネーミング(ラベリング)をしたということです.
就職のことから離れますが,いま,研究室の学生は,修士論文卒業論文の執筆に追われています.ある学生の原稿に赤入れをしていたとき,「ここは,『Xの方法としてAとBの2種類が考えられる.Aは〜.Bは〜.』とすれば見通し良くなるなあ」と思いました.先に2項目の名称を挙げてから,それぞれを具体的に述べるという,パラグラフづくりの構文です.
Xは,原稿に書かれています.そして,A・Bにあたる,分かりやすい名称すなわちラベルは,少々考えたものの,いいのが出てきませんでした.結局,学生に構文を伝え,AとBに当てはまるものについては探させました.


「あなたは,『宿題が終わってから遊びにいく』タイプか,それとも『宿題を放り投げて遊びにいく』タイプか」と聞かれると,ちょっと答えに悩みます.ケースバイケースなのです.葛藤とか,ジレンマとかいった言葉は,問題の解決にちっとも役立ちません.「就職に有利だから,これからは『宿題を放り投げて遊びにいく』タイプになろう」と,学生に呼びかけるわけにもいきません.
記憶をたどってみると,2つのことを思い出しました.一つは,確か小学校5年生のときです.夕食後,漢字ドリルをしないとと思っていたときに,急に母が,親類のところへ行くとなり,ついて行ったのですが,そこのおうちで漢字ドリルをしました.
もう一つは,中学の1年だったか2年だったか.塾で勉強をしていたら,塾長から「家から電話やで」と言われました.とると,母からで「これからお父さんが遠くまで(プレハブの解体に)行くんやけど,あんたも行くか」という内容でした.早引けして,仕事を手伝えというのです.次の日は祝日だったと思います.これは塾を優先しました.

(最終更新日時:Sat Feb 11 05:36:16 2012ごろ)

*1:学科教員間,大学院のクラスタ教員間で文章チェックの依頼が来て,この種の表現を見かけたら,疑念として表明し,他の先生のツッコミを待ちます.