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大学生が新聞1面コラムを書き写すことの意義は?

 1年セミナーの宿題として,新聞の1面コラムを一つ選んで,書き写してもらいました.
 科目の取りまとめの先生が,天声人語の切り抜きを何日分か画像化していました.そこから選ぶのでもよかったのですが,一部にルビが振ってあるのと,体言止めが目につき,自分で探してみました.Web上で天声人語は有料会員でないと読めないことに気付き,他紙を探すと,毎日新聞の余録は,制限がありませんでした.
 そこで以下を選びました.

 スクリーンショットを保存しました.宿題としては,この画像を見て,書き写してもらいました.ただし提出はしません.次の回のはじめに,何人かに当てて,感想を発表してもらうと予告しました.
 「次の回」というのは,昨日の1限のことです.Teamsのビデオ会議です.最初に当てた学生は,戸惑いながらも,過去・現在・未来の3要素が,この1個の文章に入っていることを,指摘しました.2番目の学生が報告したのは,括弧類の多さでした.
 ところで昨日の1限は,開始時に欠席が2名いました.1名からは事前連絡をもらっていましたが,もう1名は,メールを見ても,欠席の情報は見当たりません.
 宿題の件を終え,10分ほどの課題に取り組んでもらっている最中に,遅刻で会議への参加がありました.
 セミナーが終わってから,Teamsのチャットで連絡がきました.遅刻したことのお詫びと,宿題の件がどうなったかという質問です.
 やりとりした内容を振り返りながら,以下を伝えました.

  • 出典は毎日新聞の2021年5月1日付の「余録」です.「余録」は,朝日新聞の「天声人語」,読売新聞の「編集手帳」と並んでよく知られた,新聞の1面コラムです.
  • 「▲」は,句点と改段落を合わせた記号です.改行をすることなく,限られたスペースで文章を構成するための,1面コラム特有の書式です.レポートや論文では見かけない表記です.
  • 過去・現在・未来という時間の経過を意識して,文章にすることは,卒業論文でも行うことになるかもしれません.

 ところで私自身も,新聞の1面コラムを書く課題があって,毎日ではなかったけれど,一時期,書いていました.高校生のときで,天声人語でした.1面コラムを担当する人は,新聞記者の中でも腕利きであり,洗練された文章を書き写して学ぶという意図でした.
 大学生が新聞の1面コラムを書き写すとなった場合,時事に親しむ手段の一つというのはあるでしょうが,書き方を学ぶという意図は,弱いはずです.
 むしろ(実は課題でも明示されていましたが),1面コラムの書き方と,レポートや論文として,工学部の学生が書く文章との違いを意識することが,重要な目的となります.上にも書いたとおり「▲」は使いませんし,レポートより前のメモの段階であっても,改行なしで書き付けるよりは,情報(項目,アイデア)ごとに改行するほうが,あとで整理しやすくなります.
 また違いを意識することによって,「使える考え方」を知ることにもつながります.学生が指摘したのは,過去・現在・未来が文章に入っていることでしたが,事前にこちらで用意していたのは,人の関わりです.工学の教科書や論文の,読む人によっては無味乾燥に見えるかもしれない記述にも,よく見ると先人の創意工夫が込められています.卒業論文においても,他の人は何を行ってきたか,それを踏まえて自分は何を実施したのかを,適切な形式と内容で文章にすることが,要請されるわけです.


 野暮な補足ですが,「毎日ではなかったけれど」には,every dayではなかったのと,書き写したのは毎日新聞の余録ではなかったという2つの意味があります.