わさっきhb

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2aは「2つのa」

id:chochonmage 言語, 議論, 掛け算 「a multiplied by b」に関しては昔ちょと触れました。http://p.tl/owUP(プチ自慢)で、「(自然言語により)順序がある派」は複数の未知数を「2a」とか表記することに文句ないんだろうか?(2aは「2つのa」でしょ?)

http://b.hatena.ne.jp/chochonmage/20120224#bookmark-82118517

中に入っているURLを見ていくと,どうやらこれのことみたい.

追記:7/17/09
書き忘れていたことがありました。
「日本ルール」(と思われる)「掛けられる数が先の逆順」って、考えてみれば我々も平気で付き合っていることがあると思うんです。


即ち、未知数 X ,Y, a,b,などが複数ある場合我々はなんの抵抗もなく、
2X とか、3Yとか、5aとか書くわけですね。


これは恐らく国際ルールで決まっていることだと思うのですけど、
例えば3Yってのは 3 x Yの演算子を省略して書いているわけですが、例の「掛け算の順序」にしたがうならば、Y3でないとおかしい(この場合Yが掛けられる数ですよね?)と文句を言うべきではないでしょうか。

東海林さだおがいいなぁ 掛け算の順序の話 7/17/09追記あり

数どうしのかけ算と,文字式におけるかけ算は,区別して取り扱うべきでしょう.
「文字式におけるかけ算」は,今月,本から抜き書きしました.

長さAの2倍というのは,
A+A
のことである.この長さを2AまたはA×2で表す.
同じようにして,
A+A+A
をAの3倍といい,3AまたはA×3で表す.
数1を例外としないために,Aの1倍はAであると決めておく:
1A=A×1=A
一般に,任意の自然数nに対して,長さAのn倍が定められる;それは‘n個のAの和’
A+A+……+A
であり,nAまたはA×nで表される.

(略)

ここでわれわれは,倍変換の表し方を‘中学校式’に切り替えよう.
Uを一つのユークリッド式量とし,nを自然数とするとき,いままでは‘Uのn倍’を一般にU×nと書いてきたけれども,今後はこれを
nU
と書き(略)
Uの分数倍についても同様である.たとえば,a,bを分数とするとき,Uのa倍をaUと書き,aUのb倍をb(aU)と書く.
このとき,変換
U→b(aU
は,変換aと変換bの合成であり,従来はこれをa×bで表してきた.今後はこの変換を‘bとaの積’といい,baと書くことにしよう.
ba=a×b
となるのは不本意であるが,これは
(ba)U=b(aU
であることによって償われるのであろう.

不本意というのは,「a×b=abじゃないのか」と言い換えられます.これについては,有理数を対象とした乗法の交換法則を,別のところで証明しておけばいいのでしょう.(略)

数学者による「かけ算の順序」

文字ではなく2つの数を使って書くかけ算を対象とし,かつ,被乗数と乗数になる2つの要素が明確に区別されるとき*1,どちらを「×」の左に書くかについて,「乗数先書」「被乗数先書」という名称があります.具体的なことは,tから学んだこと2(00.はてブ)のところをご覧ください.被乗数先書すなわち日本式の優位性が記されたものを紹介しておきます.

(略)この,4×6とか6×4とかいった順序は,日本とヨーロッパでは違う.日本は「4の6倍」式に4×6と書くが,ヨーロッパでは「6倍の4」式に6×4と書く.これは左側通行か右側通行かみたいなもので,言語習慣から来ている.ただし,日本式の方が合理的というのが世界の相場だが,一方ではヨーロッパ式の方がすでに流通してしまっている.まあ,これはヤクソクには違いない.足すを+と書き,掛けるを×と書くようなのもヤクソクで,これを勝手に変えたら混乱してしまう.
(『数の現象学 (ちくま学芸文庫)』p.67)

  • 中島健三: 乗法の意味についての論争と問題点についての考察, 日本数学教育会誌, Vol.50, No.6, pp.74-77 (1968).*2

(略)

4) 4×2は,英語ではfour times twoまたはfour twosなどという関係で,乗数と被乗数がわが国の場合と反対になっている.
8) 以下では,乗数,被乗数の順については,わが国の表記による.
9) (略)なお,註4)で,アメリカでは,乗数を先にかくとのべたが,最近では,わが国の場合のように,乗数をあとにかく方法(乗数をoperatorとしてみる場合に統一的にでき便利である)をかなり取り入れるくふうがされている.この場合,3×4は3 multiplied by 4などと呼んでいる.
(p.77)

1968年の「被乗数×乗数」

優位性までは述べていませんが,wikipedia:en:multiplicationでリンクされているhttp://www.globaledresources.com/resources/assets/042309_Multiplication_v2.pdfもまた,日本式のかけ算や算数教育を英語で紹介しているものとして,おすすめです.
被乗数と乗数になる2つの要素が,必ずしも明確に区別されないものの代表例は,面積だと思います.これについても最近,論文を読み,エントリを作りましたのでどうぞ.
「文句を言うべきではないでしょうか」に対する,私なりの答えは,こうです:「何を対象とした演算か」「数学者や,数学教育に携わってきた人は,どのように表記してきたか」に着目して,整理をすると,文句を言う必要はなさそうです.
(最終更新日時:Tue Feb 28 22:14:20 2012ごろ)