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学校の外で「×」

日常生活で目にする「×」の使用例を,分類・整理し直してみます.

(1) 寸法

2次元や3次元の寸法を表すときに,「×」で区切られることがよくあります.とはいえ,面積や体積を求めようという意図ではなさそうです.
3次元のものだと,「幅×奥行き×高さ 単位」として,単位は最後にだけ書き,それぞれの数の直後には付けない書き方を見かけます.
写真のサイズの表記は,「縦×横」のほうが,「横×縦」よりもやや優位でしょうか.
それから,常に*1「幅×高さ」で表される,画面解像度や画像のサイズも,ここに入れておかないといけませんね.
関連:歩数計ふせん2国際宇宙ステーションの全長デジタル名刺ホルダー「どちらでもいい」は書く人ではなく書いてもらう人が言うこと(本棚),パスポート申請用写真の規格(平成28年4月20日更新) | 外務省写真サイズ一覧表 - 用紙サイズ一覧.comiPhone 5,カメラの解像度は3264×2448〈同月13日追加〉

(2) もの×もの

日常生活の“「×」探し”をしていくと,いやでも目につくのが,数量ではないもの,典型的には人名や製品名などどうしを,「×」で挟む表記です.
単体では得られない何かを,意図しているのでしょう.言ってみれば「相乗効果」です.
相乗効果とまでいかなくても,並列のよりスマートな表記として,採用されているように感じます.「AとB」「A,B」「A・B」と,「A×B」とを比較して,かけ算を使用するわけです.
「A対B」と読むことのできる,「A×B」もあります.よく見ると,「対」という漢字の中に,「×」があります*2.対戦,対決あるいは対話といったところでしょうか.なお,「阪神×巨人」と「巨人×阪神」とでは少し意味が異なるようで,「×」の左がホームチーム,右がビジターです.
2種類の性質を,「×」でつなぐ例もあります.「AかつB」の論理積となります.個人的に論理積はlogical ANDと理解していたのですが,英辞郎を引くと,logical multiply/multiplication/productも論理積の意味として載っています.
「A×B×C」として,三つを「かける」事例も見かけます.
関連:JR×AR可憐×轟音鰹・昆布×野菜の旨み口パク×生歌渡邊公夫×両角達男橋爪大三郎×大澤真幸阪神×巨人ビッグバンスマッシュ純水使用×保存料不使用よく見えるx魅せるhttp://kakijun.main.jp/page/0773200.html

(3) もの×数

「何がいくつ」を簡潔にした表記です.「もの」には物品(製品名など)が書かれます.
コンピュータ関連が,顕著なように思います.マザーボードのスペックに「USB 3.0×8」とあれば,「USB 3のポートが8つある」と判断できます.
この表記について,注意したいことが2つあります.「数」には単位が添えられません.そして,海外では「数×もの」として書かれます.もちろんいずれも,傾向であり,そうでない事例もそこそこ目にします.
関連:マザボ海外の「×」(2 x Jacob's Cream Crackers,11.00xTEM,Croissant×3),リバーフロント開放区×全528邸支柱(150cm×6本)愛媛みかん特大2L赤秀×4箱

(4) 数量×数量

これも,「何がいくつ」を簡潔にした表記です.
そして日本と海外とで,異なる特徴が見られます.まず日本式では,「×」の左右それぞれに単位が添えられます.ただし,右に来るもの(乗数)には,単位が付かないこともあります.
「=積」は必ずしも書かれませんが,積を求めることができ,その単位は,「×」のすぐ左の単位になります.かけられる数と積の単位が同じで,かける数のそれは無視される…「サンドイッチ」の考え方が通用します.
海外はというと,何倍のほうが先に来るわけで,「いくつ×一つ分の量」のほうが多いと言って,差し支えありません.
もう一つ分かりやすい特徴があって,海外で見かけた表記では,「いくつ×一つ分の量」にせよ「一つ分の量×いくつ」にせよ,「一つ分の量」には単位が添えられるのに対し,「いくつ」のほうには単位が付いていませんでした.これは先月のギリシャ行きで得たものであり,どのくらいワールドワイドに通用するのかを確かめるには,もっと多くの事例が必要です.
関連:二千五百円×二十日=五万円110円×8m^3=880円30分×10人=300分20g×2袋3×80g75g×5,2枚×2袋ヤマザキナビスコ【リッツ】(25枚×3パック),サンドイッチはくだらない・2012年8月バージョン

(5) 非サンドイッチ

とはいえ,日本国内の話でも,数量どうしのかけ算で,「いくつ×一つ分の量」になっているケースを見ることができます.頻度は,上の「ともに単位を付け,積の単位は被乗数と同じ」よりもずっと小さいのですが,確かにあります.「例外的」と切り捨てないことによって,当ブログの5×3カテゴリーが成立しているように感じます.
パターンは主に2種類あります.一つは,単位の変換です.
3インチは何センチメートルかというのを,式にすると,3×2.54=7.62となって,答えは7.62cmです.
この式に単位を添えるなら,3[in]×2.54[cm/in]=7.62[cm]となります.そして2.54[cm/in]は,「1インチは2.54センチメートル」という情報を一つの因数として表したもので,一つ分の量に相当します.
もう一つは,比例関係の中にあります.2つの値を取り出し,一方が他方の何倍になっているかを表す際に,

と横方向に見るのではなく,

と縦方向に見ます.一般に,比例関係の表は,行どうしでそれぞれ同じ単位にします.縦方向に見るというのは,2つの行そして2つの異なる量の間で,かけ算を行うということです.
Vergnaud(『算数・数学科重要用語300の基礎知識』p.187)は,この「×30」を含む縦方向の見方を「関数関係に基づく乗法」とし,横方向は「スカラー関係に基づく乗法」として区別しています.
分離量を対象とした,計算の事例もあります.『いかにして問題をとくか・実践活用編』p.151には,「テーブルの数を数えて、それに4を掛けて、その結果に7を足す」という計算方法が書かれています.「4を掛け」ることによって,テーブルの数を人数へ変換しているわけです.
関連:10cm×7000kcal=70000kcal0.5h×180日/3h15ピース×600円テーブルの数に4をかける2×30gかける数が1あたりGreerによる,乗法・除法が用いられる場合サンドイッチはくだらない・2012年8月バージョン(8. 非サンドイッチ)

Q: 他のブログへのリンクが,多すぎません?

そうですね.このエントリは,日常生活での「×」の使われ方海外の「×」を統合・整理したものです.思うところあって,このブログ上でリリースしました.

Q: 本日の内容をもとに,「かけ算の順序」をどう理解すればいいのでしょうか?

そうですね,かけ算の表記を見かけたら,「左右を逆にして書くことができるか,同じ意味として通じるか」を意識してみるのは,いかがでしょうか.
直接取り上げた中では「阪神×巨人」の件,あとリンクのみとしましたが「15ピース×600円」の件は,私自身,びっくりさせられました.
学校教育との関連でいうと,小学校の算数では,式で表す際に単位を付けない点も,無視するわけにいかないと思っています.現行の学習指導要領に基づいた検討は,式に単位を書かせるべきか(1)で行っています.また別のトピックとして「被乗数先唱」があり,筆算の順序の後半で,緑表紙教科書の考え方を取り上げています.

Q: 最初が「寸法」なのはどうして?

構想というか分類の手違いです.
「もの×数」「数量×数量」「非サンドイッチ」「もの×もの」「寸法」の順にすればよかったと,反省しています.

Q: 「×」は,何と読めばいいのでしょうか?

  • 「で」
  • 「が」
  • 「の」
  • 「かける」
  • 何も読まない(区切り記号扱い)

から,状況に応じて選ぶ,というのはいかがでしょうか.

Q: 「数量×単価」は,非サンドイッチですか?

すっかり忘れていました.非サンドイッチでいいと思いますが,「数量・単価」で1項目を設けるのも,よさそうです.
ここ数日,レシート集めをしてみましたが, 「単価×数量」も「数量×単価」も発見でき,前者のほうが多く見つかりました.単価を表す数には,前または後ろに「@」が付いていて,そのおかげで単価(被乗数)と数量(乗数)の区別ができます.
それと,5×3カテゴリーの初期に,科研申請の乗算を取り上げたことがあります.

(最終更新日時:Wed Sep 19 06:43:12 2012ごろ)

*1:iPhoneでは「高さ×幅」で記載されていました.

*2:書き順も,右上から左下が先,左上から右下があとになるという共通点を持ちます.「×」は2年(の算数),「対」は3年(の算数)で学習するのですが,「対」の字から「×」を連想する子どもがいれば,ほめてあげたいものです.