わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

算数教育に関わる各団体は,かけ算の順序についてどのような見解を出していますか?

Q: 算数教育に関わる各団体は,かけ算の順序についてどのような見解を出していますか?
A: 「かけ算の順序」という問題認識は,していないように思います.『算数授業研究 VOL.80』は,おそらく『かけ算には順序があるのか』の本に影響され,順序性について言及しています.
とはいえ,「順序」という言葉を使わないにしても,順序があることを暗黙の了解としているものばかりです.かけ算の式と,子どもが設定した場面(文章題,絵など)を子ども自身が照合し,式が合っていないと認識する話---そこから我々は,□×△と△×□は意味が違うことを読み取れます---が,向山型算数,筑波の算数,数教協&日教組と,まったく異なる算数教育の団体で活動する先生方の本に,それぞれ書かれています.

「×」から学んだこと・2012年秋冬モデル

過去にテキスト化したものを見直し,集約を図ってみました.
団体ごとに振り分けています.基準は,次のいずれかを満たすものとしています.(1)その団体が編集・発行に関わる出版物である.(2)著者が,その団体と関わって活動していることが読み取れる(例えば著者プロフィールに書いている).
どの記述も,団体の公式見解をあらわしたものではない点には,ご注意ください.

日本数学教育学会(日数教)

2年生の導入時では,被乗数と乗数を明確に区別して扱っているが,これもかけ算の意味の理解を確かにするためと考えられる.図1のみかん全部の個数を4×6=24と表すときに,被乗数4が一つ分の大きさ,乗数6が幾つ分を表していることを大切に扱う必要がある.ただしこの意味は世界共通でなく,例えば英語ではこれを6×4=24とするので,被乗数,乗数の意味は逆になる.なお昭和44年の「小学校指導書算数編」では,基準にする大きさのいくつ分かにあたる大きさを「表わす」ことに触れているが,表現という側面からは被乗数と乗数の意味が特に重要となる.またかけ算の学習は,例えば2の段では被乗数が2の場合に乗数を1から9まで系統的に変化させ(図2),8×2などはここで扱わないが,これもかけ算の意味を大切にしていることの一つの現れであろう.
(p.50)

  • Nunokawa, K. "Multiplication: introduction", 日本数学教育学会誌, No.92, Vol.11, pp.122-123 (2010).

Students are required to clearly distinguish between multiplicands and multipliers at this stage because this distinction helps them understand the meaning of multiplication. Teachers pay attention to whether their students understand that multiplicands express sizes of units and multipliers express numbers of groups. These meanings are reversed from the viewpoint of some educators elsewhere in the world. The amount of oranges in Figure 1 is expressed as 4×6=24 in Japan. The expression 6×4 is not usually allowed at the introductory stage. Learning starts with multiplications in the form of 2×□ and 5×□. While the multiplier varies from 1 to 9 (Figure 2), 2×□ and □×2 are not learned at the same time.
(p.122)

算数教育指導用語辞典

算数教育指導用語辞典

計算法則に関する注意事項
数の拡張では,三つの計算法則の確かめが必要であったが,これはあくまでも形式であって,これと離れた具体的な場面では注意すべきことがある。
例えば,交換法則に関しては,同じ加法でも合併なら交換が可能であるが,追加(増加)の場合では交換は不可能である。例えば,ミカンが5個あっても3個もらうと8個になるということから,3個もらって5個あってというのは意味が曖昧になってしまう。不用意に交換すると時間差を無視したりすることになる。
また,乗法で,被乗数と乗数を交換しているのは,2次元的な面積の場合が,縦横同じ種類のものが並んでいる人間とかおはじきなどの数を求める場合はわかりよい。
ただし,この場合でも,被乗数と乗数を交換したとき,その基準量をどうとらえたか,操作の観点をどこに置いたかをよく考え,その違いをはっきりとつかんでおかねばならない。同数累加や倍概念で操作する1次元的な乗法では,安易な交換は許されない。
例えば,三つの皿にみかんが2個ずつあるとき,みかん全部の個数は2×3で求められる。しかし,皿の数三つにみかんの数2個をかけて3×2というのは意味がなく,このような具体的な場面で2×3が3×2に等しくなることを理解させるのは,かなり無理があると考えられる。
(pp.18-19)

Twitter/Togetterなどからお越しの方へお願い:当記事の趣旨は,各団体の本を総合すると,(1)「かけ算の順序」という言葉の使用は非常に少ない,(2)□×△と△×□の違いは広く共有されている,の2点が確認できるということです.1冊の本にケチをつけたところで,教育は変わりません.ネット談義に終わるのではなく,もし本気で教育の変革を希望されるのでしたら,(a)「順序」に関する日本国外を含めた状況の整備,(b)「順序はどちらでもいい」という考えに基づく実践(授業や出題)の集積,を希望します.

筑波大学附属小学校算数部(筑波の算数)

今日の算数の時間に,21×3の計算の仕方を考えました。それで最初に,21×3でとける問題をつくってみました。ぼくはつくってもう1回読んだら,3×21になってしまっていたので,すぐ書き直しました。
(p.6)

算数授業研究 VOL.80

算数授業研究 VOL.80

乗法の式の数値に順序はあるかないかが議論されているが,2年生の初期に新しい式を定義する際には,当然,意味づけをしていかねばならないから,言語の指導と同じで,その際にはかけ算の式の数値に順序性を求めるのは当たり前だと私は考える。
(略)
割り算の初期指導までは等分除,包含除の理解の際にA×□となるか,□×Bとなるか*1と,これまでの乗法の場面の学習につないでいくことを考えさせていくほうが児童にもわかりやすいから,式の表す数の順序*2こだわった指導を展開していくことが必要になる。もちろん割り算の時と同様で操作の仕方次第ではどちらの式にもなるということを子どもが説明したら認めていくのは当然で,その場合にも実は一つ分をどのように見るかを議論しているのだから,これも式の順序を意識させているという意見と実は同じである。
(p.27.田中博史「かけ算の指導の系統について」)

「お皿が5枚あります。どのお皿にも,たこ焼きが3つずつのっています。たこ焼きは全部でいくつですか」。
この問題の答えを求めるだけなら,5×3でも3×5でもどちらでもいい。しかし,式には,その情景を表現するという機能がある。その機能を大切にするためには,3×5と書かなければならない。それはもう教えるしかない。
(p.52.正木孝昌「かけ算のイメージを育てたい」)

「1mが120円のりごん2.7mのねだんはいくらか」(略)
このかけ算を2.7×120と書く子どもがいたらどうしようか。「なぜ,そう書いたのか」と聞くことになるだろう。その子が「もし1mのねだんが1円なら,2.7mのねだんは2.7円でしょう。でも,1mが120円だから,その120倍になる」と答えたら,これは素晴らしい。幸か不幸かまだ,そういう子どもに出会ったことはない。大切なことは,その式を支えているイメージを伴っているかどうかである。
(p.53.著者などは同上)

田中博史の算数授業のつくり方 (プレミアム講座ライブ)

田中博史の算数授業のつくり方 (プレミアム講座ライブ)

例えば,次のような文章題を考えさせてみます。「船が5そうあります.1そうに4人ずつ乗ることにします。」このような問題文になっていると子どもは必ず式を間違えますよね。「5×4」と書きます。今まで文の中に出てきた順番に数を使って式を書くだけで,ずっと丸をもらえていた子たちは,必ずこういう問題で引っかかります。
ところが,この前2年生の子に聞いてびっくりしたことなのですが,「そろそろ式は反対に書かなきゃいけないころだ」と言うんです(笑)。「何で?」と聞くと,「プリント は,後の方になるとそういうふうにしないとバツになることが多い」と言うのです。そういえばそうですよね。まとめのテストの文章題の終わりは,必ず式が逆になる場合の問題が多いのです。まあ,統計的にみる力は素晴らしいものがあるかもしれませんが(笑),それではやはり意味がありません。
(pp.62-63)

坪田耕三の算数授業のつくり方 (プレミアム講座ライブ)

坪田耕三の算数授業のつくり方 (プレミアム講座ライブ)

ブラジルに行ったときに6の目のサイコロを見せて,「サイコロの目の数はいくつですか」と言うと,みんな「6」と言った。「どうして6と考えたの」と尋ねるとある子が出てきて,「3×2」と書いたんです。これを3×2と見たわけを聞きました。私がどうしてそんなことを聞いたかというと,式の後ろに潜んでいる感覚は,日本語圏以外では普通意味が逆です。3×2と言えば,日本では「3個のかたまりが2個ある」という意味ですが,英語圏も中国語圏もみんな「3個ありますよ,2つのものが」という意味です。
(略)だから,3×2とブラジルの子が書いたから,あえてちゃんと聞いてみたいと思ったんですね。そうしたら,はじめに出てきて説明した子は3個ずつのかたまりを作ってそれが2つ分と言いました。おやっ,これは日本と同じだぞと思っていると,他の仲間みんなが違う違うと言うのです。要するに間違っていたのです。どこの国も同じですね,間違える子がいるのは。本当は2個のかたまりが3個分だと別の子が説明してくれました。
(p.138)

TOSS(向山型算数)

算数の教え方には法則がある

算数の教え方には法則がある

(5) 自作文章題に取り組ませて
文章題をつくらせたり,解かせたりして気づいたことがある。
(略)
「ベンチが5こあります。そこに6人ずつすわっています。ベンチにすわっている人は何人でしょう」
問題をつくったA男は,数字の順序で5×6としてしまった。*3
そこで「絵」を描かせると,「ああそうか」とA男は6×5の式が立てられた。

(p.71)

「かけ算」という言葉を学習した後,絵を見て,かけ算の式をつくるという学習場面である。
(東京書籍2下p.7/啓林館2下p.20/学校図書2下p.10/教育出版2下p.6/大日本図書2下p.20/日本文教出版2下p.8)

上記のような絵をかけ算の式にするところで,つまずく子がいる。
2×5と式を書けなければならないのだが,5×2などとしてしまうのだ。
これは,「1つ分」「いくつ分」などの言葉が定着していないことが原因である。
(p.50)

他に本を2冊,読みました.「向山型算数」読み足しをご覧ください.

日本教職員組合日教組)と数学教育協議会(数教協)

③式を見て絵題づくり
「3×2になる問題を絵で書いてごらん」といってやらせてみると,子どもたちは喜んで絵をかきます。
(略)
ところが,2×3の絵題になっている子がいます.

そこで,Mくんにたずねてみました.
T「○○パンの車の絵ね」
M「そう」
T「うまいねえ.きみ,このトラックの問題は何×何の問題?」
M「3×2」
T「そうか……じゃあ,このトラックの絵の横に,3×2のタイル図をかいてごらん」
M(わらばん紙の余白にフリーハンドで右の図をすらすらかく.)(タイル図は省略)
T「よし,じゃあ……かけ算のことばでいうと,①は? きみのはトラックだから」
M「1だいに3人」
T「〓〓*4は?」
M「2だい.あれ?」(自分の絵は1台に2人になっています.)
M「……」
だまって自分の机についたMくんは,こんどはつぎの絵をかいて持ってきました.

こんどは3×2の問題になっています.このように,かけ算の図のかき方がわかり,すいすい作図ができるようになっている子でも,かけ算の意味や,1あたり量の意味がしっかり身についていないことがあります.
(pp.174-175)

学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(学力研)

どの子も伸びる算数力

どの子も伸びる算数力

「小さな子が、公園の砂場で遊んでいます。何人いるかなと数えてみると、6人いました。どの子も三輪車に乗ってきています。じゃあ、車輪の数は、みんなでいくつあるでしょう」
1回で文意が理解できない子には、2回でも3回でも、ゆっくりと語り聞かせるように繰り返し話してやります。問題の中身が分かったら、式を書かせてみてください。きっと、十中八九は失敗します。「ひっかかったわね。落とし穴にはまったわ」とおどけてやりますと、子どもはいぶかります。きょとんとしています。子どもはきっと「6×3=18」という式を書いています。
この式なら、言葉で言うと、6人ずつのかたまりが3つあるということになります。そして、答えが18人ということになってしまうのです。
この問題では、車輪の数はみんなで何個あるのかを問いかけているのです。三輪車に車輪が3個あります。その三輪車が6台あると、みんなで車輪の数はいくつかということを聞いているのです。1台ずつに3つのかたまりがあって、全部で6つある。じゃあ、車輪の数の合計はいくつになるのかというのが、求める答えです。
けっして6×3ではありません。3個が6つあるのですから、式は「3×6=18」と書かなければなりません。
(pp.172-173)

改訂版「まるわかり!」小学校の算数 (わかる!できる!のびる!ドラゼミ・ドラネットブックス―日本一の教え方名人ナマ授業シリーズ)

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もうひとつ大切なことは、かけ算の式は、
1あたりの数×いくつ分=ぜん体の数
というようにしなきゃいけないことだ。たとえば「1人に3こずつ、4人にくばるときのぜんぶの数は?」というとき、
3(こ)×4(人)=12(こ)
とするんだ。3×4も4×3も答えは同じだけど、式をたてるときはかならずこのじゅん番でたてようね! 4(人)×3(こ)=12(人)は、まちがいだよ。
(p.45)


(p.52)

北海道算数数学教育会(北数教)

③ STEP1 「あれ?」を生む問題

3まいのおさらにりんごが6こずつのっています。りんごはぜんぶで何こですか。

④ 意味が欠落した手続き

(最初に出てきた数)×(後から出てきた数)

「あれ? どっちの式でもいいのかな」
⑤ STEP2 「なるほど!」を引き出す手だて

  • 何のまとまりがいくつあるのかを明確にするために,文章に書かれている「りんごが6こずつ」と「3まいのおさら」と累加の式を板書で結び付ける。
  • もし3×6だったらどんな問題になるかを考えさせる。
  • 順序にこだわる子どもには,問題の「3まいのおさら」と「りんごが6こずつ」の言葉を入れ替えると式が変わってしまうことを確認する。

「なるほど! お話に出てくる数字の順番ではなく,お話と合った式をつくらないとだめなんだね」
(p.53)

2. どっちの式でもいいのかな - 北数教もご覧ください.

ベネッセ(進研ゼミ小学講座)

覚えにくい理由2 かけ算の意味の理解が足りていないから
かけ算の文章題を見たときに、多くのお子さまは意味を考えずにただ数字を見た順にかけてしまいがちです。かけ算の答えは合っていますが式がまちがっていることが少なくありません。

文章題のとき方1 かけ算の意味を理解すること!
「3×4」と「4×3」は答えが同じでも、かけ算の意味が異なります。文章題では「かける数」と「かけられる数」の意味を正しく理解することが大事です。

5人に飴を4個ずつ配ると飴はいくつ必要か 赤ペン先生回答│NEWSポストセブンもご覧ください.

小二教育技術・小学館


(p.55)


(p.59)

新発見がなくてももご覧ください.

学研

小学算数で頻繁にご質問をいただく内容に、『かけ算』があります。
『かけ算』は、小学校2年生で学習する内容で、一見簡単なように思えますが、編集部には、以下のようなかけ算の式のつくり方(かける数の順序)に関するご質問が多く寄せられます。

例えば、「皿が3皿あります。1皿には、あめが2個のっています。あめは全部で何個ありますか。という問題の答えに2×3=6とありましたが、3×2=6ではないのですか?」
というものです。

問題文のまま式をつくれば、3×2であっているように思いますし、交換法則のことを考えれば、2×3でも3×2でもどちらでもいいように思ってしまいます。

しかし、教科書の例では、かけ算の式は、【1つのまとまりが、いくつあるか】ということを表す形になっており、この考え方では、計算した結果が同じでも、式の表す意味はまったく違ってしまいます。

この考え方では、上の問題は、『1皿にあめが2個』のっている皿が『3皿分』あるのですから、2×3=6が正解となるのです。
交換法則を学習するまでは、実際に3×2=6と書いて、まちがいとされることもあるようです。

【連載コラム】『親子のギモンを解決! 編集部によくくる質問』第14回 「3×2」と「2×3」のちがいは? 【算数】|学研出版サイト

志算研

10の視点で授業が変わる! 算数教科書アレンジ事例30

10の視点で授業が変わる! 算数教科書アレンジ事例30

袋が5袋あります。
それぞれの袋に,あめが3個ずつ入っています。
さて,あめは全部でいくつあるでしょうか。
(絵:省略)
[アレンジポイント]
(いくつ分)の数が最初に出てくる問題文を考えることで,文章に出てくる順番に数をかければよいのではなく,かけ算は(1つ分の数)×(いくつ分)で表すものであることを理解する。
(p.32)

でも,5×3になると,(1つ分の数)が5で,(いくつ分)が3だから,こんな図になるよ
(図:省略)
(p.34)

これだとお話が違っちゃうわ!袋が3袋あって,それぞれあめが5個ずつ入っているというお話になっちゃう
(p.34)

かけ算は,(1つ分の数)と(いくつ分)をよく考えることが大切だね!
(p.35)

(1つ分の数)と(いくつ分)が逆に出てくる場合があるから,順番にかけてはだめなこともある!
(p.35)

優しい本―算数と数学もご覧ください.

Z会

 「1束に5本ずつ4束分」を表すのに、「4×5」としても、数学的な見地からいえば、誤りではありません。なぜなら、かけ算には、a×b=b×aという性質(交換法則)があるからです。内容を理解していれば、、a×bとb×aは本来どちらでもいいわけです。
 一方、かけ算の導入段階では、「1束に5本ずつ4束分」は「5×4」であって「4×5」ではない、と教えるのが一般的です。というのも、「a×b」を「1つ分の数×いくつ分」として定着させることが、かけ算の意味を理解するためには必要なことだからです。したがって、小学生コース2年生においても、かけ算に慣れるまでは、a×bとb×aの意味の違いを意識した指導を行っていきます。

http://www.insightnow.jp/article/6932/4

そして、実際の添削指導では、

  • 乗法の導入段階で(上記で言う)「5×4」を「4×5」と表記してあったら、「○」にした上で「乗法の意味を理解できていますか?“5×4”とすることが多いんだよ」などのコメントを入れる。
  • 3年生以降であれば順序の入れ替えはコメントもせず無問題とする

というスタンスです(Z会算数・数学担当より)。

記事の論調としては,「かけ算の順序」に否定的ですが,サポートブック(前者の引用)の記述は,布川による解説と同趣旨なので,「非順序派」ではなくここに配置しました.

数学教育協議会

数とは何か?―1、2、3から無限まで、数を考える13章 (BERET SCIENCE)

数とは何か?―1、2、3から無限まで、数を考える13章 (BERET SCIENCE)

どのお皿にもミカンが3個のっています。お皿は全部で4皿あります。ミカンを集めて大きな袋に入れると、全部でいくつになるか?

これを次のように表す。
3個/皿×4皿=12個
あるいは、
4皿×3個/皿=12個
(略)
少しやさしい言葉でいえば、
(1当たり量)×(いくつ分)=(全体量)
または、
(いくつ分)×(1当たり量)=(全体量)
となる。
(pp.42-44)

■ かけ算の順序
「どのお皿にもミカンが3個のっています。お皿は全部で4皿あります。ミカンを集めて大きな袋に入れると、全部でいくつになるか?」という問題の答えを
3個/皿×4皿=12個
という順序で表さなくてはいけない、と思い込んでいる人が多い。
4×3=12 だから、12個
とか、
4皿×3個/皿=12個
と書くと間違っていると思う人がいるというのだから困ったものである。
1皿当たり3個のミカンがのっていて、そのような皿が4皿あるのだから、4皿×3個/皿=12個と考えるのは自然な発想なのである。この自然な、ある意味では合理的な思考を無理にやめさせようという考えは無理が生じるのである。
「かけ算の順序」について、「(1当たり量)×(いくつ分)」にしなければならないかを、子どもたちにいかに教えたかという小学校教師の奮闘記が新聞で紹介されたことがあるが、そんな先生の苦労を解放してやらなければならない。
「意味のないこと」「無駄なこと」「間違ったこと」を一生懸命教える先生がいなくなることを願うばかりである。
(pp.46-47)

掛け算の順序について さきほど「4人に2つずつ,りんごを分けるときの,りんごの総数」を,
   2こ/人×4人=8こ*5
と計算しました。このように,掛け算を
   1あたり量×いくつ分
と書き表すのが,かけわり図を使うときの標準的な考え方です。では同じ問題の答えを
   4×2=8(こ)
のように計算するのは誤り? それともこれでよい?――という問題があって,一部で(先日はある新聞でも)大議論が行われています。
高校・大学の先生なら,答えは同じなので「4×2でもよい」と考える,と思いますが,「4×2ではよくない」場合もありえます。それは
① 掛け算の意味を「1あたり量×いくつ分」として,ていねいに説明していて,
② それがわかっていない子に,順序の混乱が現れている
と見られる場合です。
しかし「何を1あたり量と考えるか」は,実はひと通りとは限りません。その上,中学校で文字式を学ぶと,たとえば“3x”のように「既知数3を左,未知数xを右」に書く習慣を教えられ,そこでは「どちらが1あたり量か」は無視されます(“x”のほうが1あたり量であることも,ありうる)。ですから,せっかくの
  「意味を理解するための指導」
が,「こうでなければいけない」という暗記の強制になってはいけませんので,そのあたりは「柔軟性をもって,子どもの考えもよく聞いて,対処しなければならない」と私は思います。
(pp.49-50)

非順序派

団体による分類とは別で,かけ算の順序にこだわらない,または順序を考えさせる記述のない本のうち,印象に残っているものを,集めてみました.

ある大学の先生が、小学校の先生と共同で、子どもたちのかけ算の理解について調べた調査結果があるんです。三年生から六年生を対象にして、どれくらい九九を覚えているかとかね。その調査問題の中に、次のような問題があるんです。
4×8の計算で答えを出す問題(お話)を作って下さいっていう問題です。普通の問題とは逆なわけですね。問題を作るのが『問題』なんです。(略)
(p.29)

プリントの表を見てください。正しく問題を作れたのは、三年生から六年生まででほぼ同じ割合ですね。だいたい50%弱……(略)
ただし、式を逆にして問題を作った子どもが、どの学年でも15%くらいいるでしょ。かたいことを言わなければ、これもまあ正解だよね。そこまで正解とすると、三年生から六年生までどの学年でも、65%くらい。まあ大ざっぱに言って全体の三分の二といったところですね
(p.31)

誰もができる子どもに活用力をつけるワクワク授業づくり―第2回RISE授業実践セミナーの報告

誰もができる子どもに活用力をつけるワクワク授業づくり―第2回RISE授業実践セミナーの報告

┌─┐┌─┐┌─┐┌─┐
│□││□││□││□│
│△││△││△││△│
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「4×3にも見える」という声が出てくると予想される。それは、箱の枠を取り払い、新しいかたまりをつくることで見えてくるものである。
(p.69)

算数・数学教育つれづれ草

算数・数学教育つれづれ草

昭和40年(1965年)ごろ,「5円の品3個の代金の立式は,3×5ではダメなのか」の論争が大阪や神戸から湧き起こった。それは海外で教育を受けた子どもが日本に帰国して授業に臨むと,上記問題の正答は,5×3のみで,3×5はダメという指導に遭遇した。そこで,帰国した子どもの親たちから担任教師に対する反発が起こり,問題化していった。
さて,教育現場ではこれらの指導は文部省発行の学習指導要領に基づくので,もし上記の問題が設定されたとしたら,学習指導要領の立場からすれば,正答はこうなるのだということを見ていこう。
(p.46.佐藤俊太郎「5円の品3個の代金の立式は「3×5」ではダメなのか」)

8 『小学校学習指導要領解説 算数編』文部科学省 平成20年8月31日 東洋館出版社
正答 5×3,3×5
(p.47.著者などは同上)

考える力がどんどん身につく学ぼう!算数低学年用 下 改訂版

考える力がどんどん身につく学ぼう!算数低学年用 下 改訂版

本探し,出題探し,教え方探しをご覧ください

被乗数と乗数の区別が厳密でない問題集をご覧ください.

Help Your Kids With Maths

Help Your Kids With Maths


(p.19)

親子で学ぶ数学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド

親子で学ぶ数学図鑑:基礎からわかるビジュアルガイド


(p.19)

最古は?

  • 文部省. 小学校学習指導要領 算数科編(試案)(1951).

三年の乗法九々の学習で,三の段がひととおりすんで,こどもたちは三の段の九々がすらすら唱えられるようになった。そこで,教師は次のようなテストを行って,こどもがかけ算の意味を理解して,九々を適用する力が伸びたかどうかを調べてみた。

問題 3人のこどもに,えんぴつを2本ずつあげようと思います。えんぴつがなん本いるでしょう。どんな九々をつかえばわかりますか。

どんな九々をつかうかという問に対して,3×2=6と答えたものが予想以上に多いことがわかった。これによってこどもは問題に出てくる数を,その数の意味を深く考えもしないで,出てくる順に書き並べ,その間に,かけ算記号を書き入れることがわかった。問題に出てくる数を頭の中にいったん収めて,演算の決定に導くように問題の場を組織だてる力が欠けているらしいことがわかった。そこで,その欠けていることについての再指導に入るわけである。
3は人数を表わしている数である。それを2倍した答の6は何といったらよいか尋ねてみる。それで,6人となって問題の要求に合わないことを説明する。このようにして3×2=6とするのが誤であることを明らかにしたとする。
しかし,上のような指導だけでは,問題をすこし変えてテストしてみると,ほとんど進歩しないことがはっきりわかってきた。つまり,一方を否定するような消極的な指導だけでは,前に述べたような問題を組織だてる力を伸ばすのに,ほとんど役だたないことがわかった。これが再指導に対しての評価であって,指導の方法を修正する必要をつかんだわけである。そこで;問題解決を,同数累加の形にもどして,倍の概念をしっかり押えるように指導したのである。今度は成功した。この事実を教師が見届けたのもやはり評価である。

V. 算数についての評価

かけ算の順序問題がWikipediaにもご覧ください.

最新は?

(以下は,最新ではありません.把握している限りの最新は,野﨑昭弘: 掛け算・割り算の常識です.)

算数授業力アップ! つまずき指導のアイデア12か月 1~3年編

算数授業力アップ! つまずき指導のアイデア12か月 1~3年編

1 本時の問題(啓林館2年下p.17参照)

おかしの はこが 4つ あります。
1つの はこには,おかしが 5こずつ はいって います。
みんなで 何こに なりますか。
(図省略)

(p.65)*6

3 本時のつまずきとその指導
◆「何のいくつ分」は絵や図をかいて考えよう

かけ算は,かける数とかけられる数が入れ替わっても答えが同じであるため,問題文に出てくる数字を順にかけてかけ算の式に表してしまう子どもが少なくない。上のような問題文だと,意味を考えずに4×5と立式してしまう子どもがいる。

そこで,立式の前に,問題文のとおりの絵や図をかかせる習慣をつけるとよい。
(同)

*1:引用者注:等分除(に対応する乗法の式)はA×□,包含除は□×Bであるように読めるが,実際の対応づけは反対となるはず.小学校学習指導要領解説算数編p.110には「包含除は3×□=12の□を求める場合であり,等分除は,□×3=12の□を求める場合である。」とある.

*2:原文ママ

*3:引用者注:ここの引用の文章題・式・絵はいずれもA男がつくった.

*4:引用者注:タイル図における分量の部分

*5:引用注:「こ/人」「人」「こ」はそれぞれ上付きです.このページには,同様の上付きがいくつかあります.

*6:このページの執筆者は落合康子.