わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

小話集

1 おやつの じかん

 よにんの しまいが いました。アヤコ,カナコ,サワコ,タダコ という なまえです。
 あるひ,おとうさんが よにんの こどもに いいました。
「おやつの じかんだね。みんなで おいしいのを たべるか」
 こどもたちは よろこびました。
「ちょうど,『ひとくち みかん ゼリー』を もらった ところで,ほとけさまに おそなえして いるから,とって こよう」
「いくつ?」
「そうだなあ。ひとり,6こで どうだ」
 こどもたちは またも よろこびました。
「ちょうど いい,かけざんの もんだいだぞ。6こずつ 4にんで,ぜんぶで いくつだ?」
 こどもたちは,こえを そろえて いいました。
「ろくし,にじゅうし!」
「その とおりだ。だから 24こ もって くるよ」
 おとうさんが,ゼリーを もって,おかあさんと いっしょに,4にんの ところに もどりました。
「ほら,やるぞ」
 こどもたちは ますます よろこびました。
「そら。1こめは,アヤコ,カナコ,サワコ,タダコ,おかあさん,おとうさん。2こめは,アヤコ,カナコ,サワコ,タダコ,おかあさん,おとうさん。3こめは,アヤコ,カナコ,サワコ,タダコ,おかあさん,おとうさん。そして 4こめは,アヤコ,カナコ,サワコ,タダコ,おかあさん,おとうさん」
「あれっ?」
「みんな,4こずつ あるよな」
「おとうさん,おかしいよ」
「どうした?」
「さっき,ひとり 6こって いった じゃない!」
「いって ないよ」
「いったよ!」
「そうか? かけざんの もんだいだぞ。6にん いて,4こ ずつで,ぜんぶで いくつだ?」
 こどもたちは,こえを そろえて いいました。
「ろくし,にじゅうし! あれ?」

「いいよな。わがやは 6にん かぞく なんだから,6にんに 4こずつで,ゼリーは ちょうど 24こだ。めでたし,めでたし。はい,おとうさんの ぶんは,ごちそうさま。おまえたちも,はやく たべるんだよ」

「おとうさん,ぜったい おかしいよ!」

2 りんご 15こ

 ここは ホテルです。しはいにんが,じゅうぎょういんを つかまえて,いいました。
「わかって いるよな。きょうの ひろうえんは,だいじな おきゃくさまだ」
「はい」
「しんろうの かぞくは,この あたりで ゆうめいな りんごのうかでも ある」
「はあ」
「それで,りんごを あずかって いて,いくらかは りょうりに つかって もらう。その まえに,かたちが よくて,きず ひとつ ない りんごだけを よりすぐって,わが ホテルで とびっきりの おさらに もって,ひろうえんの テーブルに おいて ほしい。あちらさんの ねがいでも ある」
 じゅうぎょういんは,きく ばかりです。
「それで,その かずだが」
 しはいにんは,かみと ペンを とりだして,5×3と かきました。
「15こだ」
「すみません,この 5×3は?」
「5まいの さらに,3こずつ,だ」
「わかりました。ほかの ものと てわけして やります。その かみを もらっても よろしい でしょうか?」
「おまえは まったく けいごが できとらんな。ほら,やるよ。まちがえるな」
 じゅうぎょういんは,うけとって,いいました。
「すみません。いわれて みれば,5まいの さらに 3こずつか,5こずつ 3まいの さらに なのか,まちがえそうです。なんとか なりませんか?」
「ふむ,そうだなあ」
 しはいにんは かみを とって かきたし,「さら 5まい×3こ りんご」と しました。
「これで,まちがえる ことは ないだろう」
 じゅうぎょういんは,うけとりました。
「かしこまりました」
「さいしょから,そういえってんだ!」
 ひろうえんが はじまる 15ふん まえ,しはいにんが,じぶんの へやで そわそわ している ところに,だれかが ドアを ノックします。
「なんだ? はいれ」
「しつれいします」
 がらがらと,だいしゃに のって,はこびこまれたのは,3つの はこです。
「なんだ,これは。もって こいとは いってないぞ」
「あの,せんぱいから いわれまして,ホテルで とびっきりの おさらを 15まい えらんで,5まいずつ,3つの はこに いれなさい,と」
 その じゅうぎょういんは,しはいにんに,「さら 5まい×3こ りんご」と かかれた かみを わたしました。
「これは,わたしが かいた ものだ。だが,よういしろと いったのは,15まいの さらでは ない! 15この りんごだ」
「りんご ですか? りんごは ありません でしたが」
「なぜ ないのだ?」
「わかりません。ちゅうぼうに,りんごを いれていた はこが ちょうど 3つ ありましたので,これに おさらを いれて,しはいにんの ところに おもちすれば いいんだと おもいまして」
「いらんよ,こんなもん!」

第3話 複素数の計算

 私は大学生です。アルバイトで塾の講師をしています。
 この間,机間巡視をしていて,
(3+2i)(5−4i)={5・3−2(−4)}+{3(−4)+2・5}i
    =15+8+(−12+10)i
    =23−2i
と書いている生徒がいたのでびっくりしました。
「なあ,ちょっといいか」
「先生どしたの?」
「そこの計算,最初,5かける3じゃなくて,3かける5じゃないのか?」
「あれ,先生に言ってなかったっけ? ボクが小学校2年のとき,これで騒動になったんだよ。『お皿が5枚あります。お皿にりんごを3個ずつ乗せます。りんごはいくつでしょう?』ってのでね…」
話は延々と続きます。そばの生徒が耳打ちしてくれました。
「騒動のあとね,3×5=5×3だからって言って,普通なら3×5と書くところ,あいつ,いつも『5×3』と書くようにしてるんだって」

第4話 的当てゲーム

 私は大学生です。前のお話の「私」です。
 小学生のころ,入っていた子ども会が,催しをするというので,久しぶりに小学校の体育館を訪れました。
 部屋の半分はバザーで,残り半分では,子どもたちが,昔懐かしいゲームを取り仕切っていました。
 その中に,的当てゲームがありました。ダーツみたいなのですが,針ではなく,マジックテープになっています。点数は中心部が5点で,外に行くにつれて1点ずつ下がっていき,的に当たらなかったら0点です。
 じいっと見ていたら,やってみてよと,誘われました。10個の羽(はね)をもらい,投げました。「兄ちゃん,上手いね」なんて,ひとまわり年下の子どもに言われ,むずがゆくなりました。
 あっというまに終了。別の子どもが,得点計算を紙に書いてくれていまして,受け取りました。

  • ×=15
  • ×= 0
  • ×=15
  • ×= 2
  • ×= 0
  • ×= 0
  • ごうけい32てん

 塾の高校生だけでなく,ここの小学生も,3×5を5×3と書くのかな…?
 書いた子が,胸を張って言いました。
「お兄ちゃん,分かる? 赤い数字が,的の点数で,青い数字が,当たった回数だよ!」
 お礼を言い,体育館をあとにしました。

第5話 3+2×3=?

 こんにちは,私です。大学生やっています。アルバイトで塾の講師もしています。
 いつもは高校生を指導しているのですが,塾長先生から,小学生の面倒を見る人が足りないと言われまして,手伝ってきました。
 4年生の算数だったと思うのですが,計算問題がありました。
  3+2×3=
 これ,かけ算のほうをたし算より先にするという問題ですね。
 なのですが,ある子が「15」と書いていました。
「そこはね…」
「先生,僕,電卓で計算したんだよ! 間違っているって言うの?」
 凄い剣幕です。電卓の数字は,15になっていました。
 先生用の座席に戻って息をつき,手の届く距離にある電卓を引き寄せ,3,+,2,×,3,=,と押すと…15が表示されました。

第6話 九イズタイムショッ九

「現代は,かけ算との戦いです」
 途中は省略しまして
「参ります…タ〜イムショッ九!!」
(ぽーっ,ちちちち…)
「9個入りのチョコレート,4箱でいくつ?」
  「九四,36個」
    ぴぽん♪
「2人ずつ座っているベンチ,3つで何人?」
  「二三が6人」
    ぴぽん♪
「9人,2チームで野球の試合,全部で何人?」
  「九二,18人」
    ぴぽん♪
「つのつの一本 赤鬼どん♪ 8人で,つの何本?」
  「一八が8本」
    ぴぽん♪
「7グループのネコ,それぞれ4匹で何匹いる?」
  「四七,28匹」
    ぴぽん♪
「5人乗りの車,4台あったら何人まで…」
  「五四,20人」
    ぴぽん♪
(とたったらったー♪)
「5枚のお皿にみかんが3つずつ,お皿は何枚?」
  「一五が5枚」
    ぴぽん♪
「ではさっきの問題,みかんは何個?」
  「五三,じゅ…三五,15個!!」
    …………
「この問題が終わったら,開始から何秒経過?」
  「五九,45秒」
    ぴぽん♪
「毎月のおこづかいは2千円,半年でいくら?」
  「二六…1万2千円」
    ぴぽん♪
(…じゃらじゃらじゃらじゃら)
「高さ7センチのブロック,8個積んだら高さは?」
  「七八,56センチ」
    ぴぽん♪
「三輪車三輪車三輪車。ひらがなにすると全部で何文字?」
  「六三,18文字」
    ぴぽん♪


「素晴らしい! 11問正解でした」
「いや,全問正解,したかったんですけど」
「それにしても,何秒経過の問題は,即答でしたね」
「あれは出ると思っていました。8問目か9問目で」
「最後に,一言どうぞ」
「どんな問題も解けるように,準備していたんですが…誤算でした」

第7話 小学校では\sqrt{2}を教えないの?

「もしもし,お電話かわりました」
「あのさあ,小学校では\sqrt{2}を教えないの?」
「はい,どういうことでしょうか?」
「2の平方根のうち,正のほうの数のことですよ」
「はあ」
「だから,\sqrt{2}平方根も,教えないの?」
「それは中学校で学ぶことに…」
「何言ってるの!」
「はあ」
「1辺が1cmの正方形があるでしょ」
「は,はあ」
「その対角線の長さは?」
\sqrt{2},センチメートル,ですか」
「そうでしょ」
「それと小学校とでどういった関係が…」
「小学校の算数の中でも,\sqrt{2}になる数は現れるでしょ」
「えっと,まあ,そういうふうにすれば,出てきますね」
「だからこの数について教えるべきなのです」
「は? そうは言われましても」
「三角定規あるでしょ。直角二等辺三角形のほうの」
「ええ,まあ」
「あれの斜辺は?」
「……」
「分からないの? 底辺の長さの\sqrt{2}倍ですよ。あなた本当に算数・数学指導できるの」
「いやそうおっしゃられましても」
「変な敬語ですね。あと,A3はA4の何倍ですか?」
「A3? A4?」
「紙の寸法ですよ」
「ああ,そういうことですか。えっと…」
「知らないの? 面積ではA3はA4の2倍。だから相似比は\sqrt{2}:1になるんですよ」
「……」
「もう,ここまでルートのことを知らない人が,教育に携わっているなんて。腹立つなあ!」

第8話 子ども手当バツからマルへ

◆2011年6月,とある土曜日…

 田植えが無事に終わり,シャワーを浴びてほっとしているところに,テーブルの上に,市からのハガキがあるのに気づきました。
 文面は保護されていて,ぺらぺらっとはがすと,「子ども手当支払い通知書」でした。
 なのですが,対象となる期間が,今年の2月から5月までで,支払金額が…1人分,長女ひとりの4か月分だけです。
 あれ,これ世帯ごとだっけと思ったら,横の注意書きにちゃんと「所得に関係なく1人あたり1万3千円(月額)が支給されます」とあります。
 2月に生まれた双子の姉妹,次女・三女の分を,申請していなかったってこと?
 妻ともども,びっくりしました。
 今あれこれ考えても仕方ないので,週明けに,市役所に電話することにしましょう。

◆つぎの火曜日の昼間…

 本当は「つぎの月曜日」に電話すべきだったのですが,大学の業務に時間をとられてしまいました。
 ハガキに記載のナントカ課の番号に,かけました。
 やはり,子ども手当増額の手続きが必要で,それをしていないためとのことです。
 そして,今月中に手続きをすれば,来月分から支給の対象となるのですが,これまでの分は支払えません,ともおっしゃっていました。
 電話を切って,自宅へ。妻に経過を報告したのですが,怒りは収まらないようでして,自分から電話すると言い出すので,番号を伝えました。
 子ども手当増額の手続き,するに決まっているのに,なぜしなかったんだろう…記憶をふりしぼってみると,公務員扱いされた可能性が思い浮かびました。
 そこで部局の事務の方に,この件はやっぱり自分と市との間で解決しないといけないのか,勤務先は関係ないのかを確認するメールを送り,あとは自分の仕事,具体的にはその週の金曜日の授業準備を進めました。

◆その日の晩…

 帰宅して,妻が「おかえり」のあとに言うのはやはり,ナントカ課との電話のことです。ある職員さんではラチがあかないので,上司さんに替わってもらい,さらにその上司さんとも話をしたとのこと。相当強い調子で言っても,ダメでしたか。ただ,不服申し立ての制度があり,県のカントカ課に対して行えることを,引き出しています。
 夕食をとって次女三女にすまんのおと言いながらあやし,それから2階でパソコンに向かうと,大学の事務の,馴染みでないお名前の方から,昼間の件で返事が来ていました。送った事務の方から,本部のある部門に,転送されていたようです。
 やっぱり大学はノータッチとのことでした。かつて児童手当という制度で,しかも大学が国立大学,教職員は国家公務員だったときには,勤務先での手続きとなっていましたが,いまは公務員ではありませんものね。市の職員によっては,国立大学に勤めているといえば,イコール公務員と勘違いされたのかも,ともありました。
 丁重に返信をしたあと,出生届を出したときにもらった書類を探しました。1分もせずに見つかりました。
 1枚1枚,読み直していく中で,「お知らせ」というA4判の紙を発見しました。「出生届を提出された後」のあとに,3項目,記されています。
 まず「出産・育児一時金」は,国民健康保険ではないため,手続き不要のバツ印が,鉛筆書きで,ついています。次の「乳幼児医療費助成制度」についてはマルが添えられています。そこに書かれている,ドーノコーノ課へ行った記憶があります。
 そして最後,「子ども手当制度」のところに,バツ印がつけられています。これが,子ども手当の手続きをしないよう,市役所の人が誘導した根拠になりそうです。
 具体的にいうと,こうです。まず出生届の手続きにおいて,本人確認で保険証を提示しました。私の場合,文部科学省の共済組合員証です。職員さんがこれを見て,公務員だからということで,子ども手当の手続きは不要と判断し,説明された,という流れです。
 もう一度,相談するとしましょう。妻も同意しました。翌日は仕事が立て込んでいるので,時間に余裕のある,あさって木曜日に,市役所へ行くことにしました。

◆2日後の木曜日…

 書類を渡すことになるかもしれないので,「お知らせ」ほかは,出発前に,コピーをとっておきました。
 9時過ぎに,妻と市役所に入りました。子ども手当のナントカ課ではなく,出生届に関係する,ナンダカンダ課へ行きました。窓口の職員さんに,「子ども手当通知書」と「お知らせ」を見せ,事情を説明したところ,課長さんという方がお越しになり,課内の打ち合わせスペースに案内されました。
 事情説明をやり直ししました。ですが基本的には,なごやかな空気でした。ナンダカンダ課とナントカ課とで,協議することになりました。「お知らせ」の紙を渡しました。その裏面に,連絡先の電話番号を書いてほしいと言われ,自宅の番号を書きました。
 ではよろしくお願いしますということで立ち上がり,課長さんが「お知らせ」をクリアファイルに入れる際に,ちらっと別の用紙が見えたのですが,こちらの氏名や家族構成など,個人情報が書かれていたっぽいです。打ち合わせスペースに着くまで,こちらの個人情報を明かさなかったので,火曜日に妻が強く抗議したナントカ課から,このナンダカンダ課に連絡が回っていたのかもしれません。
 市役所の中で妻に,じゃあ行ってくるねと言い,いつもより1時間半遅れで,大学の門をくぐりました。この日は6時まで授業があり,残務処理をしていると,帰るのも定時の1時間半遅れです。
 そうしてただいまをすると,妻から,朗報を得ました。電話がありまして,協議の結果,確かにナンダカンダ課の落ち度なので,郵送する書類に書き込めば,遡って支給するよう対応する,となりました。ただし,妻からの伝聞ですので,実際に「落ち度」だとか「遡って」だとか,電話越しで言われたかどうかは,分かりません。

◆その次の月曜日…

 市から封書が来ていました。中には,白紙の「子ども手当 額改定届」。何か所か,鉛筆でマル囲みがあり,付箋で記入の注意事項が貼り付けられていて,まあこれに書けばいいってことですね。
 それと別に,記入済みの額改定届がありました。上に書いた「次の火曜日の昼間」,したがって前の週の火曜日のうちに,妻が市役所ではなく出張所にて,この申請をしてくれていまして,受理日のスタンプが押されています。
 出生届を出した日付の「子ども手当請求書等受理票」と,切手付きの返信用封筒も,同封されていました。
 付箋の指示のとおり記入し,ハンコを押しました。「次の火曜日」の申請で受け取り,その日付のスタンプがある「子ども手当請求書等受理票」が必要ということで,妻からもらって,返信用封筒に入れました。出生届を出した日付のほうは,手元に置いておきました。
 翌火曜日に,投函しました。

◆それでも引っかかるのは…

 こちらからすることは,上でおしまいです。市役所の方々のご英断に感謝します。そして私の住む市では今後,このようなトラブルは起こらないでしょう。といっても,市民でありかつ国立大学法人の教職員が,出生届を出すケースがどれだけあるのか,分かりませんが。
 それはそれとして,心の中で引っかかるものがあります。
 今回の出来事を一言であらわすと,「バツとされたことが,抗議によってマルに変わった」のです。
 そこで連想するのは,「かけ算の順序」をめぐる論争です。『さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。』という出題に対して,5×3=15という式がバツというのはおかしい,マルにすべきだ…という話です。
 まず思うのは,不条理に思えたとき,直接抗議をしたり,そこまで行かなくても事情を説明して相手さんの考えを引き出したり,さらにそれより外の活動として,Web上などで書いて情報交換するのは,極めてまっとうな活動である,ということです。
 また,今回の件であれば市役所内,かけ算に関しては(とりあえず)小学校が,抗議を受け入れ,主張を認めるか否かを,最終的に判断するということになる,という共通性も,見ることができます。
 そしてある意味で共通点であり,にもかかわらず結果が分かれてしまうのが,「根拠」の存在とその活用です。実際のところ,バツ印つきの「お知らせ」という物的証拠がなかったら,ここまでの行動はできませんでした。
 かけ算の件はどうでしょうか。数学者の著書を中心として,マルにすべき根拠が知れ渡ることとなりましたが,その一方で,大きめの書店に行くか,教育学部のある大学であればその蔵書から,りんごのかけ算の出題意図を知ることができます。それらでもいいですし,ブロガーなどの紹介文・批評文も読み比べた上で,あとは初等教育に直接関与しない者として,どちらの主張が教育にかなっているかを判断すればいいのです。

◆今回のドタバタで…

 手元に残った書類は,スクラップブックにでも入れ,大事に保管するとします。次女・三女が成長し,生まれたときのことを知りたくなったときに,家の写真,乳児としての双子の写真とともに,取り出して,解説をしてやろうと思います。
 そのときには,子育てを支援する給付制度は,残っているでしょうか。家ではまだ,田植え・稲刈り・畑仕事をしているでしょうか。そして私自身,笑い話にできるでしょうか。

編集後記

 2011年にとりまとめた「小話集」を一本化して,ブログの記事にしました.
 8つの話のうち,最初だけ,2012年に書いた,子ども4人と大人2人で配るものに変更しました.他は,表記を統一させ*1,本文は,わずかな変更にとどめました.
 中心となるかけ算の式を「6×4」に差し替えようか,とも思ったのですが,「的当てゲーム」では6点という,やや中途半端な的が必要になること,「九イズタイムショッ九」の最後を変えるのが困難だったことから,「5×3」のままにしました.
 一口みかんゼリーを「配る」ことによって,“6個ずつ4人”と言っていたのが“6人に4個ずつ”に変わったのは,2つの意図があります.一つは,トランプ配りが数の構成を多様にすることの確認です.もう一つは,「おとうさん」のように場を支配する人に対して,弱い「こども」の立場でどんな行動をとれるかを,考えるべきではないかという提案です(朝四暮三もご覧ください).
 「1 おやつの じかん」「2 りんご 15こ」の中心的なところは,『板書で見る全単元・全時間の授業のすべて 小学校算数2年〈下〉』p.47の絵が示しています.そのほか,「3人の子どもが4つずつキャンディを持っている状況」と「4人の子どもが3つずつキャンディを持っている状況」とを比較して,キャンディの総数は同じだけど前者のほうが子どもたちは"luckier"であると記した洋書もあります(Anghileri & Johnson (1988)).
 これからも,思いつきを形にしてから,あとで本を読んで「昔の人も同じように考えていたのね」と理解していくとします.

(リリース:2013-02-09 早朝)

(最終更新:2013-05-12 夕方.チョコレート→ゼリー)

*1:句読点については,関数一発です.