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平成24年10月のかけ算の授業

1. 乗法の式が1つつくれる,複数つくれる,つくれない

群馬県中之条町立沢田小学校で昨年10月17日に実施された授業の学習指導案です.写真やイラストのカラーが印象的でした.
ともあれ,かけ算の指導として,見ておきたいのは,板書計画(2年-4)です.
指導上の要点は,「1つ分の数」と「いくつ分」のペアを見つけて,かけ算の式にしたり,式をもとに理由(「1つ分の数」と「いくつ分」は何なのか)を説明したりする,ということになります.
そしてこの板書計画によって,当ブログでこれまで書いてきた「倍の乗法」「積の乗法」が,授業でどのように扱われているかを,一覧することもできます.長方形配列になっているものは,複数の(かけられる数とかける数を交換した)式が認められる---積の乗法---のに対し,赤いブロックで構成した3×4の場面や,8色のペン3セットで8×3としているところについては,式が1種類---倍の乗法---です.
もう一つ,興味深い点があります.「どんな式でも答えは同じ」という考えでいると,板書計画の最後*1の図のところで,戸惑います.式は「2×9」「6×3」「3×6」「3×3」の4つです.このうち「6×3」「3×6」については,机が長方形の配置になっていることから,理解するのは難しくありません.
4つの式のうち,「3×3」だけが答えは9,あとはいずれも18です.なぜでしょう…
「3×3」というのは,くっついている2つの机を一つ(のシマ)と見なしたときに,それが3×3あると思えばよさそうです.3×3=9で9つのシマです.そして,一つのシマは2つの座席からなり,シマは9つあるわけですから,座席の総数は「2×9」で表すこともできます.
2年ということもあり,a×bの形(simple operation)で表せばそれでおしまいとなっていますが,2×9=2×(3×3)=(2×3)×3として*2,それぞれのかけ算が何を表すのかを見ると,結合法則の理解にまでつながるように感じました.

2. 12cmのテープ

荒川区立汐入東小学校で昨年10月19日に実施された授業(研究発表会)の学習指導案です.「第三分科会」は第3学年に対応するようで,各学年の内容のリンク集はここにあります.
本時案(p.10)で提示されている問題は,「テープがあります。そのテープを同じ長さの4本のテープに分けました。分けたテープ1本の長さは12cmずつです。はじめのテープの長さは何cmでしょうか。」です.
これは,小学校学習指導要領解説 算数編の第3学年のところに載っている,「ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった。はじめのひもの長さは何cmか。」の改題と思われます.“分けました”や“等分”だからといって,わり算ではないよという意図です.
9cmではなく12cmを使っているのは,式として12÷4と12×4があり得ることを狙ってそうです.
授業案としては,問題場面を図にし,数量の関係を正しくとらえることで,式は12×4となるよう展開しています.
わり算ではないのを確認した上で,式は,「12×4」「12+12+12+12」「4×12」の3種類が出てきます(p.11).いずれも(それぞれ異なる)児童の発言かと思いきや,右の欄に留意点として「・4×12は教師が提示する。」とあります.読み進めると,

T 4×12という式もあります。これを説明してください。
C 12×4をひっくり返しただけだから,答えは同じ。
C 4×12だと,4cmが12本分という意味になってしまう。答えはあっているけど,式の意味が違うからダメ。

という会話になっています.そこまでの記載内容,そして2年でa×bとb×aの違いを学習していることを踏まえると,言いたいのは「4×12だと…式の意味が違うからダメ」のほうなのでしょう.

(リリース:2013-08-15)

*1:授業としては最初に掲示するのですが.

*2:小学校の授業では,2×9=18,2×(3×3)=18,(2×3)×3=18と分けるべきかもしれませんが.