ふと思い立ち,いくつかの表をGoogleのスプレッドシートで作成しました.Googleドライブの機能で,PDFファイルも作ってみました.
スプレッドシートとPDFは共有設定を行っており,それぞれ以下のリンクから,ログイン不要で参照できます.
順列については,「次にかける数」に着目し,その数列*1を作成することで,インクリメント・デクリメントとかけ算で実現できています.
田中さんと鈴木さんの関係表については,オリジナルの図にある矢印が,スプレッドシートでは表現できないため,ちょっと悩みましたが,「x4」と「x3」を箱で囲んで,解決を図りました.
もとの本と,作成した表とをじっくりと眺めていると,新たな気づきを得ることができました.
2013年はトランプ配り,1988年はアレイ算数・数学の問題解決を乗法構造という立場から特徴づけて捉えるベルニョの見解によれば,鈴木さんの立式からは,友達1人と3人の間と,みかん4こと□この間に同じ関係を認めており,いわゆる倍操作を行っています。これに対して,田中さんの立式からは,友達1人とみかん4この間,友達3人とみかん□この間に同じ関係を認めており,いわゆる関数的な操作を行っています。もし田中さんが「3人の友達にみかんを1つずつあげれば,みかんは3ついる。これを4回繰り返せばいい」と関数的に考えていた場合,式は3×4となり,正しい立式として評価することができます。
何に気づいたのかというと,説明と表(視覚的表示)との対応,より正確にはそれらのミスマッチです.「3人の友達にみかんを1つずつあげれば,みかんは3ついる」を,田中さんの関係表から得ることができません.
式から,違いを探ることにします.Vergnuadの関数的な操作は,
3人×4こ/人=12こ ...(1)
という式で表すことができます(関連:かける数が1あたり).それに対し,「3人の友達にみかんを1つずつあげれば,みかんは3ついる。これを4回繰り返せばいい」という田中さんの考えは,例えば*2
3人×1こ/人×4=12こ ...(2)
になります.
このとき,1こ/人×4=4こ/人 により*3,(2)から(1)を得ることができます.あるいは,先に 3人×1こ/人=3こ と計算するのなら,これが「3人の友達にみかんを1つずつあげれば,みかんは3ついる」を表しており,残りの ×4 は,「これを4回繰り返せばいい」に対応づけられます.
以上の検討から,(2)の式をもとに得られる情報は,(1)の式よりも多いと言えます.これもまた,「田中さんが…関数的に考えていた場合」と,Vergnaudが提案したスキーマとの差違となっています.
いいオチも思い浮かばないので,昨年末に書いたものを切り出して,終えることにします.
かけ算の順序論争に関わるということは,この種の泥臭い話にどこまで関わり,新たな情報をどう取り入れ,知識として蓄積していくかということだと,思っています.
式から児童の思考を正しく読み取れるのかどうか・・・