わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

ファンタジーの法則,1982年だと

筆者が個人的に、ファンタジーの法則と呼んでいる問題解決法についてお話しましょう。ファンタジーというのは別世界と行き来する物語のことで、ファンタジーの法則とは、別世界と行き来することで問題をうまく解くという法則です。
【ファンタジーの法則】
「こちらの世界」で解けない問題があったら…
(1) 問題を「こちらの世界」から「別世界」に持っていきます。
(2) そして、問題を「別世界」で解きます。
(3) 最後に、得られた答えを「こちらの世界」に持って帰ります。

(『プログラマの数学』pp.238-239)*1

算数教育の洋書を読んでいると,非常に似通った図を見かけました.

書誌情報(少し端折っています)は次のとおり.

  • Riley, M. S., Greeno, J. G., and Heller, J. I.: Development of Children's Problem-Solving Ability in Arithmetic, isbn:0122847806, pp.153-196 (1982).

なのですが,章全体をPDFで読めます.図については,以下のURLでアクセスできます.

似てはいるものの,よく見ると,違いもあります.Rileyらの図では,流れは逆Uの字型で,出発点となる"Problem Text"は左下です.それに対し結城本の図では,流れはコの字型で,出発点の「問題」は左上です.
そして,2×2のグルーピングが異なります.『プログラマの数学』の図では,「こちらの世界」と「別世界」による分割によって,4つの情報のうち1番目(問題)と4番目(解答)で1つのグループ,2番目(問題)と3番目(解答)*2でまた1つのグループとなっていますが,Rileyらでは1番目の"Probelm Text"と2番目の"Schematized Problem Representation"の上に,[Problem Schemata]が,また3番目の"Schematized Action Representation"と4番目の"Solution"の上に,[Action Schemata]が,それぞれ書かれています.
共通点もあります.問題="Problem Text"から,ただちに解答="Solution"を得るのが困難なときに,別="Schematized"の表現形態に移し,そこでよく知られた方法*3でもって式にし,答えを求めよう,という流れを,見ることができます.
グルーピングが異なると書いたものの,Rileyらの図の2番目と3番目において,"Schematized"と"Representation"でサンドイッチしているのは,結城本の図の「別世界」と同等のことをしていると解釈できます.
この事例でもって,ファンタジーの法則には元ネタがあるだとか,ましてや結城浩氏がパクったと主張したいわけでもありません.経験的に得たことを,形にすると,類似したものになる,という事例がまた一つ増えたといったところでしょうか.


ついでに,図の配置に関する国内外の違いと言えば:

*1:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20070730/1185745357 http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20101125/1290632358

*2:原図ではそれらの箱は網掛けされています.

*3:小学校の算数では「これまで学んだこと」,教師向けには「既習事項」でしょうか.

*4:関連:「その後(略)を見る限り,二重数直線として活用する場合には,そのような矢印の書き方は採用されていないようです.」http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20140228/1393537997