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かけ算の順序について(2016.05)

これまで当ブログで書いてきた「かけ算の順序」関連記事を,振り返ってみることにします.記事数・画像数は,2016年5月30日までの状況です.

記事数

2010年10月から2013年2月までの間に,「5×3」のカテゴリで,302件の記事を作成しました.総文字数は,はてなダイアリー記法で1,931,720字です.
2013年3月より「OoM」(Order of Multiplication)のカテゴリに変更して,2015年10月までの間に,224件の記事を作成しました.総文字数は,1,198,372字です.
その後は「math」のカテゴリを開設し,かけ算の順序と関係のない算数・数学の記事も含めて,このカテゴリで記事を作成しています.記事数は48件,総文字数は225,970字です.

画像数

記事にはよく,画像を貼りつけています.自作画像のほか,書籍などの1ページや図ということもあります.takehikom's fotolifeにアップロードした,「かけ算の順序」関連の画像の数を手作業で数えてみると,以下のとおりとなりました.

2010年 26枚
2011年 88枚
2012年 142枚
2013年 162枚
2014年 152枚
2015年 107枚
2016年 27枚
合計 704枚

例えば,http://f.hatena.ne.jp/takehikom/20140111/には,48枚の画像を(2014年1月11日)にアップロードしており,小数のかけ算の文章題(割合の第2用法)を二重数直線で解くほかで参照しています.

「かけ算の順序」とは何か? そこから何を得たか?

wikipedia:かけ算の順序問題をご覧ください…では無責任なので,自分なりに少し.
「かけ算では,順序を変えてかけても,答えは同じ」は,算数の教科書や指導では,(a×b)×c=a×(b×c)のようなかけ算,すなわち,結合法則を説明するのに使用されてきました.それに対して交換法則は,「かけられる数とかける数を入れかえて計算しても,答えは同じ」と表記され,「順序」が陽に現れません.両方を合わせて「計算の順序を変えてよい」というのは,中学1年の数学で学習します*1
次に,「6人のこどもに、1人4こずつみかんをあたえたい。みかんはいくつあればよいでしょうか。」のような,かけ算の順序論争で取り扱われてきた文章題には,ある本で「基準量が後に示された問題」というネーミングがなされていました.そしてその種の出題は,平成27年度から4年間,使用される2年の算数の6社いずれの教科書にも複数が掲載されていますし,調査結果が紀要で報告されているほか,戦前の出題もあります.見つけた主要なものをかけ算の順序を問う問題で読めるようにしました*2
海外の「順序」の扱いについて,a+bとb+a,a×bとb×aの対比が試みられており,意味は違うことを重視しているものを,いくつか見つけています.それに対し,“まっとうな*3”国内外の文献で,算数の指導において,a+bとb+a,a×bとb×aはそれぞれ同じなんだよと主張しているものは,思い浮かびません.
ここまでは,既存の文献の整理により知り得たことです.そこから自分なりに学び,文章にしてきたことの一つは,「倍の乗法」と「積の乗法」の違いです.数学教育の現代化運動を通過した現在の視点として,アレイ図は,積の乗法に関連するとともに,かけ算で総数を求めることのできる“対象”であり,論争のような文章題(倍の乗法*4)に対して適用するようなモデルあるいは“手段”としては,適切でない,と言えます.
もう一つは,海外文献で,交換法則がどのように使われているかを検証したときに得た知見です.簡潔に表すと,「交換法則から6×4=4×6となるが,6×4と4×6とで表すものが異なるよ」となります.交換法則を認めた上で,それらのかけ算の式は違うという,イエスバットの構文になっていて,交換法則はバットより前です.それに対し,先述のみかんの文章題で,6×4でも4×6でもいいという根拠に,交換法則を使うなら,例えば「4×6が正解だというが,交換法則があるから6×4も正解だよ」と表すことができます.そこでは,交換法則はバットのあとで用いられます.イエスバットの構文では,バットより前はいわば従で,後が主となりますので,ここに,“まっとうな論証”と“ネットde真実”との違いを見ることができたわけです.


ここまでご覧になって,さらに,当ブログの内容に関心を持たれた方は,以下もどうぞ.

今後ともご愛顧のほどよろしくお願い申し上げます.

*1:先人はというと,高木貞治isbn:9784480091468がお勧めです.「因数の順序は積に影響することなきこと」はp.27に出現します.

*2:かけ算以外については,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20141217/1418766506で整理しています.

*3:例えば,必要条件(十分条件ではなく)として,(1)Google ScholarまたはCiNiiでヒットすること,(2)他の文献で引用されていること,(3)適切な参考文献リストがついていること,が挙げられます.http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20150511/1431286280で取り上げた,いまの数学者による書籍や解説で,(2)と(3)を満足するものは見当たりません.

*4:「6人のこどもに、1人4こずつみかんをあたえたい。みかんはいくつあればよいでしょうか。」がなぜ,倍の乗法に位置づけられるかというと,そこからかけられる数とかける数が一意に定まるからです.これは日本ローカルではなく,例えばhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20130216/1360948813#greer1992でも同様の問題を,「子どもが最初にかけ算を用いる場面」と記しています.