わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

文字式,続きも読む

昨日にもブログ主さんのコメントが入っていました.記事とコメントを読み直して,思ったのは,「a÷bcは,a÷b×cではなく,a÷b÷cのことなんだよ」に対して「どうして? a÷b×cじゃダメなの?」と学習者が疑問を持ったとき,教科書はこうなっているよ,100年以上前のスミス代数学もだよ,というのは理由にならない---取り決めによりa÷bc=a÷b÷cとなることを実用的・歴史的観点から補強するものではあるけれども---ということです.
スミス代数学あるいは「Smithの本」については,コメントで

を挙げました.式には,a^5b^2\div a^2ba^5\times b^2\div a^2\div ba^5\div a^2\times b^2\div ba^3bなどがあります*1.もう少し進んで

にも,(a^2x-3ax)\div axa^2x\div ax-3ax\div axa-3がありました.ここもA÷axは,A÷a÷xあるいはA÷(a×x)のことであって,A÷a×xではないのですが,それよりも,Aを単項式から多項式に拡張*2した場合にも,割る方が単項式であれば,これまでの計算の規則を使って計算できるのが,その式から読み取るべきことと思われます.
以下は,別の情報源に焦点を当てています.文字式の議論で,「操作の方法」だとか「操作捜査の結果」だとかいった主張を,目にしました.最近だと

939で読めます.そこでオリジナルの

を見ると,「文字を用いて数量の関係や法則などを式に表現するとき,乗法の記号×は,文字と文字の間や,数と文字の間では普通は省略し,除法の記号÷は,特に必要な場合のほかは,それを用いないで分数の形で表すことを学習する。」から始まり,式の例やそのように書くことの意義を示したのち,次のように注意事項を記しています.

なお,abや\frac{a}b,さらに,a+b ,a−bという表現は,操作の方法を表しているとともに,操作の結果も表しているという見方は大切である。

2chで引用されているのと同じです.「操作の方法を表しているとともに,操作の結果も表している」は,小学校の算数,中学校の数学の,“式の表現と読み,形式的処理”に関係する話だなと,ひとまず思ったのですが,この文の続きを読んで,意識が変わりました.

特に学習の初期においては,例えば,3a+2や5x−5のように演算記号が残ったままにしておくことに違和感をもつことがあるので十分に配慮する必要がある。

この文を読んでから,さかのぼって「操作の結果も表している」は何なのかというと,3a+2も5x−5も,abも\frac{a}bもa+bもa−bも,文字式としてはこれ以上,簡単にできない式であると言えます*3
「学習の初期においては」で思い浮かぶのが2つあります.一つは学習者(中学生)の認識に関してで,計算問題などに慣れれば,テストの解答欄に「3a+2」などと書くことに抵抗がなくなるだろうというものです.もう一つありまして,分数を含む文字式で,分母を払って良い場合と,良くない場合の違いです.
例えば,\frac{3x+1}2-\frac{2x-1}3\frac{3x+1}2=\frac{2x-1}3を考えてみます.マイナスで結ばれた前者の式で,分母を払ってはいけません.1次方程式の後者は大丈夫です.
ただこの方程式について,移項してから(分母を払わず)計算し,\frac{5x+5}{6}=0と書いてから,両辺を6倍して5x+5=0とし,x=-1を得ることも,手続きとして可能です.とはいえ,とっとと分母を払って(両辺を6倍して),3(3x+1)=2(2x−1)2(3x+1)=2(2x−1)として計算するほうが,分数の計算がないぶん,計算ミスを少なくできます.
ここまで書いて,自分は物知りなのだ,丹念に情報を読み込んで,今の文脈に適用できる能力があるのだ,なんて言うわけにはいきませんが,公開されている情報に対し,読む我々は何ができるだろうかという思いもあります.算数・数学教育の過去,現在,そして未来を知ろうというのは道半ばです.

(最終更新:2015-03-20 晩)

*1:このページに,いまの中学数学と異なる式表記も見られました.p.21中央部の-a^5bc^7\div -3a^4bc^2\frac23ac^5です.この左辺は,中学の数学では(-ab^5bc^7)\div(-3a^4bc^2)あるいは-ab^5bc^7\div(-3a^4bc^2)と書くべきところです.

*2:(文字式ではないけれども乗法の意味の)拡張について:http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120301/1330547942

*3:例えばabは,aとbを掛けるという操作の方法を表すとともに,操作の結果と見ることができますが,a×bでは,この解説に基づく限り,操作の方法を表してはいるけれど,結果ではないとなります.\frac{a}bとa÷bも,同様です.