わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

4 + 2 = 6, and 2 + 4 = 6

コメントをすると,「被乗数・乗数の区別などそもそも必要がない。」と返ってきました.なかなか,強烈です.被乗数・乗数がどんな文脈で出現するかは,学習指導要領やその解説や,Greer (1992)をはじめとする海外状況が明瞭ですが,コメントすればするほど,もとのまとめの真意から離れていきそうだと思い,書かないことにしました.
少し手を広げて,読み直すと,思わぬところに「たし算の順序」の話が入っていました.

Mathematical Solution Strategies
(略) The strategy of counting on from larger is easier if the bigger number is represented first (Wilkins et al., 2001). Even for adults: 4 + 2 = 6, and 2 + 4 = 6, which are mathematically equivalent, may psychologically imply different meanings (Kaput, 1979). The sequence of the numbers, e.g., whether a problem starts with the smaller or with the larger number (Verschaffel and De Corte, 1990), the position of the numbers and particular words (Schumacher and Fuchs, 2012) influence children's solution of elementary addition and subtraction problems. (略)

"4 + 2 = 6, and 2 + 4 = 6"を含む文を訳してみるなら,「大人にとってみれば,数学的に等価な4+2=6と2+4=6という式は,心理的には異なる意味となることもある」でしょうか.助動詞のmayが入っているのは,4+2=6と2+4=6が心理的に同じ意味になる場合も考えられるので,断定を避けるためと思われます.
具体的にどんなふうに異なるのかは,字数の都合か明記されていませんが,あとで"in change problems"という表記も出てきますし,増加の場面ではプラスの左が基準量,右が変化量となるのは国内外を問いません.「昨日は4度.今日は2度上がって6度」と「昨日は2度.今日は4度上がって6度」は,体感的に違うというわけです.
慣れない英文の中で数式があると,そこに目が行ってしまうのも事実ですが,実は"4 + 2 = 6, and 2 + 4 = 6"を含む文の1つ前は,何を言いたいのか,2〜3度読んでも,想像できなかったのでした.これも訳してみると,「大きな数から始めて数え足すという戦略は,大きな数が先に出現するならより簡単である」となります.largerとbiggerという,単語の使い分けにも,悩みました.前者は具体物の数で,後者はnumberが続くし純粋な数なのか,と思ったのですが…
「4+2」と「2+4」でそれぞれ,数え足し*2をしてみれば,いいのでした.4+2は,4から始めて,5,6と数を2つ言い,答えは6です.2+4は,2から始めて,3,4,5,6と数を4つ言い,答えは6です.
「大きな数から始めて数え足すという戦略」をとる場合,4+2は,変わりません.2+4については,4から始めて,5,6と数を2つ言い,答えは6です*3
その戦略でたし算をするときにも,「4+2」という計算と,「2+4」という計算で,同じにできるじゃないかというのが,"Even for adults: 4 + 2 = 6, and 2 + 4 = 6, which are mathematically equivalent"に込められているように感じました.
でもストーリーとしては,1970年代の文献を引用して「心理的には」違うよと主張し,より新しい事例も入れながら,大きく言えば数学教育では,焦点を絞ると文章題指導の中で,いくつも検討や調査がなされてきたというわけなのですね.

*1:ページの末尾には「Accepted: 11 March 2015」とあります.当ブログで最初に取り上げたのはhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20150412/1428781927でして,論文としての採録決定よりも前に,オンライン上で先行公開されていたのですね.

*2:「数え足し=count on」については,例えば,https://www.splashmath.com/math-vocabulary/counting-and-comparison/count-on

*3:といったところで,「largerとbiggerという,単語の使い分け」の件は,合理的な説明ができるまでには至りませんでした.自分が英文を書いたら,どちらも同じ単語にしていたと思います.