わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

唐突な1

いきなりですが問題です.

しずかさんは,長さ30cmのリボンのうち,20%を使いました.
残りのリボンは何cmでしょうか.
式と答えを書きなさい.

元ネタは"謎"シリーズ 2 算数編 プラス 余談 - 学友舎Labホームページです.
さっそくですが,「模範解答」を引用します(空白を変更し,いくつか記号などを置き換えています).

模範解答はこうです。
「使う前の全体の長さを1とすると、使った長さは0.2なので、残りの長さは(1−0.2)=0.8にあたります。
式 30×(1−0.2)=30×0.8=24
答 24cm」

続いて「教える側も習う側も、この1が何を意味しているのか、それが難しい。」とあるのですが,もとの問題で,この1を書かずに式を立てることができる点について,指摘がなかったのは残念に思いました.
例えばこうです.
「しずかさんが使った長さは,30cmのうち0.2の大きさなので,30×0.2=6で,6cmです.
残りの長さを求めるには,30cmから,この6cmを取りのぞけばよく,30−6=24で,24cmです.
式 30×0.2=6 30−6=24
答 24cm」
書き方は,上記の「模範解答」に合わせました.「しずかさんが〜24cmです.」の部分(導出過程)は,テストでは書かなくてもよいところです.その一方で,図を描けば,数量の関係が容易に確認できます.件のページにならって,当記事でも面倒くさがる(要は描かない)こととします.ところで,「わさっき」として二重数直線,比例数直線,数直線にリンクされていますが,その後,「×」から学んだこと 14.02 二重数直線というのを作っています.いろいろな絵(PowerPointファイルからGIFアニメーション生成)をつくったのは2014年1月ごろです.
問題文の「20%」を,「0.2の大きさ」に置き換えたのは,暗算です.20\times\frac{1}{100}といった計算式は,今回の対象となっている5年の段階で,実例が思い浮かびません.
その上で,なぜ30×0.2という計算をするのかというと,百分率を離れ,小数の乗法で学んだことが,根拠となります.「30cmの2倍」は30×2=60(cm)で求められるように,「30cmの0.2」は,30×0.2=6(cm)となる,というのが一つの考え方です*1.いずれもかけ算になるのを突き詰めていくと,比例関係*2や,30cmを「1」と見るという考え方も必要となりますが,「しずかさんは」の問題でもそれらを内包しているのであって,だけれども式を立てて答えを求めるには,必須ではない,と言うことができます.
上に引用した模範解答は,5年生がみな,その考え方で式を立てられることよりも,こういうやり方があるよという紹介にするのが,より教育的ではないかとも思っています*3.なぜ「1」が出現するのかは,2重数直線またはテープ図を描かせ,発見させるのはどうでしょうか.


百分率を割合に換算する式,「20\times\frac{1}{100}」について掘り下げます."謎"シリーズ 2 算数編 プラス 余談のはじめのほうで,以下のページをリンクしています.

この途中に,「\frac{300\times5}{100}300\times\frac{5}{100}=300×0.05=15」として,分数がかける数になるものが含まれています.
ただ,ここでは対象学年が明示されていませんので,6年の分数のかけ算まで学習した上で,立ち返って百分率を扱った事例(式の中では小数・分数が出ても,計算結果や答えには出て来ないケース)に適用した,と見ることもできます.

またこのページには「2002.02.19」という日付もあります.一つ前の学習指導要領に基づいているわけで,当時の解説,具体的には『[isbn:9784491015507:title]』と,現行の解説(PDF)とを,読み比べてみました.以下それぞれを「旧解説」「現解説」と略記します.

「20%=0.2は暗算」と書いてみたとき,そういった等式や換算の方法は,いずれにも見当たりませんでしたが,旧解説p.130には以下のとおり,少々関連する事例が載っています.

例えば,28を100倍すると,2800になる(二つの0が付く。小数点が右に二つ移動する)。1200の\frac1{10}は,120になる(一つの0が取れる。小数点が左に一つ移動する)。

第5学年のA(数と計算)です.現解説ではp.165が対応します.5年で学習することや,10倍,100倍,\frac1{10}\frac1{100}などの大きさの数をつくることとその注意点(小数点の移動など)までは共通ですが,「28を100倍」や「1200の\frac1{10}」といった,数値を使った例は,現解説の該当ページには見当たりません.
「百分率」も,読み比べました,旧解説ではp.144,現解説ではp.189です.内容としては大きな違いがなく,「なお,」から始まる最後の段落は,現解説の方が字数が多いのとはいえ,旧解説の「その際,必要に応じて電卓等を用いて,適切に処理できる」は,現解説にない情報でした.
現解説のPDFファイルに対し,「電卓」「計算機」で検索したものの,2分割されたいずれにもヒットしませんでした.「コンピュータ」だと見つかりました.旧解説のp.178のほうが,現解説のp.161よりも,少し字数が多く,いずれにも「数理的な実験をしたりするなど」はありますが,単なる計算でコンピュータを用いることは,意図されていませんでした.
いわゆる「ゆとりの揺り戻し」で,2008年度告示,算数は2009年度より先行実施のほうが,学習内容が充実していると思いきや,省略あるいは除去されたものもあるってことなんですね.

*1:ただし安易に「形式不易の原理」を持ち出すべきではないことも,自戒としてここに記しておきます.

*2:ところで,現行の学習指導要領では「比例」の用語を第5学年で学習することとなっています.この学年で扱うのは,「簡単な場合」ですが,解説には「小数の乗法及び除法」が例示されていて,30×0.8や30×0.2も,5年(で学習する「比例」)の範囲内で理解ができることを意味します.

*3:国学力テストの算数では,式を答える場合には解答類型でさまざまな式が考慮されていますし,問題文(一つの場面)の中に,求めるための式が出現していることもあります.平成28年度実施の算数B大問3(1)では,3人が異なる式をもとに,「リボンは足ります」という共通した結論を導いており,式とその根拠とを対応づけるという出題が見られます.選択肢となる根拠の中にも,「1」が含まれているもの,含まれていないものがあります.