わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

がある~TECUM Letterより

 TECUMのトップページにリンクされていました.「2018年12月号 創刊第6号(通巻7号、NPO法人成立第1号)」であり,「NPO法人認証記念号として公開します」とのことです.
 ツッコミどころ満載だったのは,最後の「4 連載論考:スクリプトの開く世界―スクリプトと正反対の世界」です.情報処理の話かと思いながら読み進め,「ユビキタス コンピュータubiquitous computer」「因みに[ジー・ユー・アイ]はわが国で普及した誤読ではないかと思います」「PCでは幾つかの「ワードプロセッサ」を自称するソフトウエアが覇権を競ってversion upを繰り返していた時代です」あたりを読んでおいマジかよとなりました.ジー・ユー・アイは,少し調べたところ奥深い話だったので後述します.ユビキタスに続くのは「コンピューティング」が自然ですし,これはIoT(モノのインターネット)に取って代わりました."version up"は和製英語であり,英語ではupgradeとなることは,2年ほど前から,学部1年生向けの情報処理科目の授業スライドに入れています.
 そのあとの「罫線だらけの行政用の文書」の件は,申請に必要な「内容」と「形式」に分け,形式のところを面倒に思うのなら,「できる人」に頼めばいいだけの話です*1.Spreadsheet*2csvに変換して処理するよりも,xlsxを読み出したりxslxを生成したりするスクリプトづくりのほうが楽しかったりします.Dockerコンテナをもとに,バイナリファイルを処理して別のバイナリファイルを生成すればなおよしです.
 話を戻して,「3 連載論考:近頃の「数学」「教育」いくらなんでもこれは!――“不可解有理!”」に書かれたいくつかの話が,気になりました.
 【演習例題N】と【演習例題N+1】が,連続して並び,それぞれ,TeXの\ovalboxで囲まれています.

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 どちらの例題も,第1文は,2つの関数f(x)とg(x)を定めて,「がある。」で終わっています.そのあとの(なぜか引用になっている中の)「“A=Bがある”という表現は,そもそも文法的にあり得ないからです。」に同意しつつも,代わりの表現を考えてみました.
 まず思い浮かぶのは「f(x)=..., g(x)=...とする.」です.英語では"Imagine f(x) = ... and g(x) = ...."となります.いや,imagineではなくassumeでしょうか.どっちも練習問題っぽくないなあと思ったところに,"Let"を想起しました.
 "Let f(x) = ... and g(x) = ...."と表記して,話すとなると,"Let f of x be ... and g of x be ...."とします.「f(x) = ...」と「g(x) = ...」を文(あるいは節:clause)とみなさないのは,動詞letを使用して,文を構成しているからです.高校英語の言葉を使うと,f(x)やg(x)が目的語,イコール以降が目的格補語の,第5文型となります*3
 このように思案してから,Googleで「let f(x)」を検索してみると,練習問題に,"Let f(x) = ...."の記載を見つけることができました.例えばhttps://www.handakafunda.com/cat-2017/quantitative-aptitude-algebra-functions-let-fx-x2-and-gx-2x/には,"Let f(x) = x^2 and g(x) = 2^x, for all real x. Then the value of f( f(g(x)) + g(f(x)) ) at x = 1 is"として,4つの値から正解を選ぶ問題が書かれています.次に,アルクでletを引くと,「仮に~としよう」という訳語と,「Let x = 5, y = 7. : 《数学》xを5、yを7としましょう。」という例文が載っていました.なおMerriam-Websterでは,これに対応する意味や例文は見当たりませんでした.
 なのですが,"Let f(x) = ...."はラフな表現と思うのが良さそうです.より丁寧な書き方は,"Let f(x) be the function defined by f(x) = ...."です.http://www.math.ubc.ca/~sjer/math100sec101/Review/samplequiz1.pdfのQuestion 1で,使用されています.このPDFファイルではほかに,"Let f(x) be any function such that ...."や"Let f(x) and g(x) be two functions satisfying ...."といった表記で,関数を与えています.
 https://www.teachoo.com/5092/674/Misc-1---Let-f(x)--10x--7.-Find-g-such-that-gof--fog--IR/category/Miscellaneous/は,"Let f : R → R be defined as f(x) = 10x+ 7."で文章が始まっています.何行かあとには,"Let f(x) = y"ともありますが,日本語にするなら「f(x)をyとおく」であり,f(x)ではなくyの定義ですので,これまたラフな表現です.
 【演習例題N+1】の(1)も(2)も,「0≦x≦4」と書いていますが,そのあとに出てくる変数はx_1, x_2です.ここは「(1) 0\le x_1\le 4を満たすすべてのx_1と、0\le x_2\le 4を満たすすべてのx_2に対して」*4と書き換えるのが,もっとも紛れが少ないように感じます.
 「(1) 0≦x≦4を満たすすべてのx_1, x_2」と「(1) 区間0≦x≦4内の、すべてのx_1, x_2」の対比について,"x_1, x_2"を"x"に置き換えた上で,どちらもアリかなという認識を持っています.自分が学生に指導するのだと,「被験者」は「参加者」に書き換えるよう指示していますが,大学院のゼミ発表で,他の研究室の学生が「被験者」と書いているとき,そこに目くじらを立ててもしょうがないのです.
 「0≦x_1, x_2≦4」や,「0≦x_*≦4」と書くのは,どうでしょうか...高校までの数学(大学受験の数学を含む)で見かけた覚えはなく,知ったのは大学に入ってからです.


 「因みに[ジー・ユー・アイ]はわが国で普及した誤読ではないかと思います」について,反証となるものを,以下より知ることができます.2番目のリンクの「initialismは文字をそのまま言い,acronymは単語として言う」が分かりやすいと思います(そしてGUIはinitialismだということです).

 その一方で「グーイ」の発音も,見つかりました.

 個人的には「グーイ」の読みがあることを把握の上で,授業などでは「ジー・ユー・アイ」を使っています.それに相対するCLI (Command Line Interface)のことを,「クリ」または「クライ」と言うわけにいかず,「ジーユーアイ」そして「シーエルアイ」と読むのが合理的なのです.
 対称暗号のDESについて,日本は「デス」なのに対し,海外では「ディー・イー・エス」と呼ぶことが多いと,どこかの本で読んだ気がするのですが本が思い出せません.AESは「エー(より正確にはエイ)・イー・エス」と言わざるを得ないのですが.

*1:ここのサイトのページやファイルを見ていると,執筆者以外による事前の内容チェックをしたほうがいいのになと思うことがよくあります.

*2:原文は"Spread Sheet"と,空白が入っていますが,まるでデータベースのことを"Data Base"と表記するかのようです.

*3:主語がないのは命令文だからです.

*4:「すべてのx_2」の直後に「と」を書く気持ちは分かるけれど,英語に置き換えても日本語のままでも,その「と」は削除の対象となります.