どうすれば子どもたちのいのちは守れるのか:事件・災害の教訓に学ぶ学校安全と安全教育
- 作者: 松井典夫
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 2017/02/28
- メディア: 単行本
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とある書店で,教育書のところに平積みされていました.手に取り,奥付・著者紹介の「大阪教育大学附属池田小学校に2015年から2014年まで勤務。同小の学校安全主任」の文字を見て,購入しました.『教育という病』*1での,この小学校の取り上げ方を心にとどめながら,ぱらぱら読んだ限りでは,組体操への言及は,見当たりませんでした.
全体をきちんと読んでから,そこから,安全に組体操をするためにどのようにしていけばいいか考えてみるかなという,悠長な心の中は,第1章でぶちこわされました.「その卒業式は、この世から完全に、事件で亡くなった子どもたちの「籍」が無くなる瞬間だった。」(pp.25-26)を含む段落は,その場にいなくても情景が想像できます.…
さて第III部の中で,気になる図を見かけました.「図6-8 安全安心様相図」(p.161)です.「危険」と「安全」を左右に,「安心」と「不安」を上下に配置し,それぞれ両方向の矢印で挟んで対置させ,安心かつ安全となる象限にA,そして同様にB・C・D*2を割り当てています.図6-8と同じページに書かれたラベリングは次のとおりです.
- A『安全で安心』
- B『安全だけど不安』
- C『危険で不安』
- D『危険だけど安心』
少し検索してみると,本人による,同様の図が入った論文を見つけました.
- 松井典夫, 淺田正志, 佐々木靖, 藤田大輔: 安全科の授業における児童の「安全・安心」の様相の変容に関する研究, 日本セーフティプロモーション学会誌, Vol.3, No.1, pp.62-66 (2010). http://plaza.umin.ac.jp/~safeprom/pdf/Vol3Matsui.pdf
- 松井典夫 他: 事件・事故・災害時における学校対応と児童の安全・安心に関する研究, 人間教育研究, 奈良学園大学人間教育学研究会, Vol.1, pp.55-71 (2017). http://id.nii.ac.jp/1413/00002815/
松井氏と異なるところでも,見かけました.
- (035)不安だが安全、安心だが危険|コラム|JAcom 農業協同組合新聞
- 第2回有識者コラム「安全と安心を考える」内田勝也(情報セキュリティ大学院大学 教授) - 平成21年版情報通信白書有識者コラム
そういった2×2の空間分割をもとに,対象あるいは状況が,4つのどこに位置付けられるかを,考えることができます.いわば静的な見方です.
それに対し,日本セーフティプロモーション学会誌の件は,「変容」がタイトルに含まれていること,そして最後のページ(p.66)の下段の図から,同一対象の位置付けが変化していくことが分かります.動的な見方です.そしてそれを,「学習」に結びつけていました.
この記事を書いている途中で,8時30分になり,子らがテレビを見に来ました.「スター☆トゥインクルプリキュア」です.自分も観ました.序盤にフワが「ブルーキャットはこわくないフワ~」と言っていて,展開するにつれてフワの反応が変化していくのが,興味深いところの一つでした*3.
*1:isbn:9784334038632.大阪教育大学附属池田小学校のことは,「日本を代表する学校安全のモデル校」「巨大組体操を推奨していたことは驚きに値する」などを含め,p.63で詳しく書かれていました.
*2:数学の,二次元座標平面における「象限」では,第2象限は視覚的に右上(x<0かつy>0)となりますが,この図のBは右下,安全かつ不安のほうになります.Cは第3象限と同じ,Dは左上です.
*3:キュアコスモは予告されていたし,ブルーキャットがキュアスターに変装するシーンがあるのも,ある予告ページを見て知っていましたが,キュアスターの格好でブルーキャットの声優がしゃべるシーンには,心を揺さぶられました.