「さきの子よ…」
「なに,パパ?」
「お前,スイカを口に入れる前に,指で種を取っとるが…」
「あかんの?」
「指な,スイカの汁まみれになって,拭かなあかんやろ?」
「うーん,まあそうやなあ」
「指をほとんど汚さんとな,種を取る方法があんねん」
「おハシで取るの?」
「ちゃうちゃう…種も含めて,実ぃを口に入れて,そいでから種だけ出すんや」
「よし,じゃ,やってみる!」
「(思い切りの良さがこの子の取り柄やなあ)おう,やってみな」
「えっと…んん…んん…あっ」
「おいおい,種,出て来てへんぞ」
「ちゃうねん.タネ,出せやんかってん」
「ほいで飲み込んだんか」
「そうやなあ…」
「ま,口の中で,スイカの実ぃと種を選別するのは,慣れやな.今度またスイカ食べるときにやってみな」
「ところでパパは,タネ,なかったの?」
「ん? パパのお皿に,スイカを食べたあとの皮はあっても,種がないっちゅうことか?」
「じつはな,パパの家では,スイカはみぃんな,種も食ててん.あっちのおばあちゃんも,あっちのおっちゃんもな」
「へえ,そうなん!」
「そんなんに憧れんでよろしい」