昨日,気になるツイートを見かけました.
体育が受験科目になり、トップ校に入るためには50m7秒で走らないといけないと。そして、親や先生が血眼で子供たちに7秒で走らせるように練習させまくる。絶対体育嫌いになる子多くなるのはわかるよね?
— 前田 健太@算数の先生(牛乳パック🐮の授業がニュースに!) (@mathmathsan) March 25, 2020
でも、それを算数でやってないかということ。
気になったのは,「走る」ことを教育上,どのように位置付けるかです.
個人的な所感は,10年以上前に記事にしています.リンク以外の本文を載せます.
私を含め大学教員というのは,
「今から100mを全力疾走してもらうぞ.20秒以内で走れよ.よーい,どん! ほら,何をぼやぼやしとんねん.ぼおっとしとる間も,時間が過ぎんねんぞ.考えるな,走れ! …みんな,20秒オーバーか.まったく,基礎体力がないのお」
という意識で学生を指導し,期待する能力や意欲のなさに,嘆くものなのでしょうか.
対案となるような,学生への働きかけを,考えてみました.
「みなさんの基礎体力を確認したいと思います.10分後に,ここで,100mを全力疾走してもらいます.時間としては,20秒以内というを目安を設けることにします.ただし,20秒で走れたらいいというのではなく,ゴールに向かって全力疾走できるかどうかを見たいと考えています.10分間でウォーミングアップしてください.時計を使って,走ってみて計るのもいいでしょう.心臓発作には注意してください.注意のしようもないのですが」
ポイントは:
- 準備時間をとります.準備の際に,何をすればいいかを1,2例,挙げます.プログラミングの基礎能力の確認であれば,本などをチェックする時間,一度書いてみて動作確認をする時間に相当します.
- 目的を明確にします.数値(上の例では100mや20秒)は,行動する学生への目安であり,「100mを20秒以内で走れること」が達成させるべき目標ではないように留意します.
- 緊張よりも弛緩,北風よりも太陽です.
あとは,20秒も全力疾走できないことがあらかじめ分かっている学生や,走らせてみて100mを20秒以内で走れなかった学生へのケアについても,考えておかないといけませんね.
100mを20秒で走れるかテスト
ツイートについて,教育というよりは使用する言葉で気になったのは,「走らないといけない」です.個人的に読んできた算数の本で「~しなければならない」という表現はあまり見かけず,それに対し「~することができる」が好まれるという印象を持っています*1.英語で言うと"must"と"can"の対比であり,You must / You canという記事にしたこともあります.
助動詞を使わず,「~することができる」を表す英語表現に,"learn to"があります.アルクの英辞郎 on the WEBで引くと,「~する方法を習得する、努力して~できるようになる」という訳語が載っています."learn to add and subtract"に対しては「足し算と引き算を習う」ですが,「足し算と引き算をする方法を習得する」や「努力して足し算と引き算ができるようになる」と訳しても,よいように思います.
体育と,自分の経験と,「~しなければならない」で連想するのは,水泳です.どんな泳法でもよいから50mを泳ぐことが,中学,高校,大学のそれぞれの体育(の水泳の授業)で要請されたのでした.
*1:このことに関心を向けるようになったのは,http://www.globaledresources.com/resources/assets/042309_Multiplication_v2.pdf#page=17に書かれた「If a tape is as long as two 3 cm tapes put together, we can say the tape is "2 times" as long as a 3 cm tape.」と「You can use the multiplication math sentence 3×2 to find the length that is two times as long as 3 cm.」に出現する"can"です.