わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

手ぶくろを買いに

 某年月日,いつもの時間に帰宅すると,すえの子が寄ってきました.
 パパから声をかけました.
  「ただいま.駐車場に車がなかったが,ママ,出かけてんのか?」
 「そうやねん.買いものやって」
  「ふむ.おばあちゃんは田んぼで作業してはったし,晩ごはんはすぐやなさそうやな…」
 「あのねえパパ,明日ねえ,トウモロコシのなえをうえるの!」
  「そっか,ええなあ」
 「それでねえ,手ぶくろ,もってかなあかんのよお」
  「手袋か,ええなあ…とちゃうやん.手袋,あるんか!?」
 「子ども用の手ぶくろって,うち,もってないんやけど…買えやんの?」
  「いるんやったら,買わなあかんが…さて,どこで売ってんのや」
 隣の部屋でテレビを観ていたおじいちゃんから,アドバイスをもらい,作業服の店,そして百均ショップを訪れることにしました.自転車で,出かけました.
 まずは作業服の店です.自動ドアが開いて,正面に見えるのは,山積みになった軍手です.しかしすえの子の手には大きすぎます.
 店員さんにおそるおそる,この子に合う手袋はないか尋ねると,子ども用というのは扱っていなくて,Sサイズはこれなんですがと,差し出しました.すえの子が右手に通すと,大きすぎました.指先は何センチも余っています.Sサイズの手袋を,店員さんに返し,頭を下げて店を出ました.
 次は百均ショップです.カー用品の棚に,何種類かありました.手を通すのではなく,手袋とすえの子の手のひらを合わせただけで,これもぶかぶかなのが,すぐに分かりました.よく見ると,上品な作りで,頑丈そうには見えません.作業用の手袋ではなく,運転手がはめるものでした.
 カー用品の一つ隣の筋に,軍手が揃っていました.上から下まで,棚を眺めると…
 最下段が,子ども用の軍手でした.
 S・M・Lとある中,手袋と手を当てることで,「これがいい!」と,すえの子は,Mサイズでイボ付きの軍手を,高く差し出しました.
 レジで消費税を加えて110円を払い,購入しました.
 自転車置き場に戻り,手袋持って先に家に入っときなあ,パパは自転車のタイヤに空気を入れるからと,ここですえの子と別行動にしました.後輪に空気を入れてから,自宅でただいまをすると,ママが帰っていました.さきの子ちゃんはあれで,すえの子ちゃんはこれでと,一人ひとりに対してお叱りでした.
 「ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやけたらよかったのですがパパにはそこまでの文才がありませんでした.