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大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

暗号解読

 オンライン型で実施している今年度の科目(ネットワークセキュリティ)の,単一換字暗号の解読問題について,受講者向けの解答・解説の公開も,採点も終わったので,かいつまんで紹介します.
 まずは暗号文です.

NTAEBINPWVWENVWCLMLMWCCWELVNELWENKNNBXNNTWHNBBCBINLQBPNEONVA
BQBXNQLVWELNPBNCLFLMBLCLPBCNCLBWVNBPONVWQLVWINCNCLAKNQOWWTWB
CLVNCOLWTWBCLVNELNPBNCLFLCWVACAFNTAFNTAELMAFLXBMNEPWTWVLCLXN
HAVBTWVNTNEAHNBEBINVLTAINPWVLPBCLZZBENPLWQLWVNMLPBTAENBXNQLV
WXNENEBVNEBKWTNPNXNTWVNPLTACLMLCWENFNCNTBHAMLPWTWVNCLEBVNVWN
PBNCLELCWVNEWILWILWHAXAEKNIAONCCAVBCNCLBWVNBPONVWHNBPNEINLQB
PNEVNMNVBCNVNXNQLVWELNPBNCLFLIWMBVAPBCAPBMNCCNCLBWVNBPONVWHN
BOLEINXWWQAEQLVWELINVBMLELCLLQBPNEMNCNINMNVBCNELINVBMLELCLLE
NQBHNCCNCLBWVNBPONVWVLELOLCCWINXAEKNFLMAEMBCWEBPBTNKACAMBCNT
NFNVNTWVLCLXNTNHNPLTAVNTNHNBXLINQLVWXNXAEKNIAVLENVNCCNCWMNTB
LQBPNEXNENEBVNELIBCWOLWVNTNIBCLTBPBKNBFLAEQBCNELHNCLBWVNBPON
VWHNBTLVWINMNVBCNCLQLVWCLXNHLWBCWQBEKWCWHNCCNCLBWVNBPONVWVLE
LMWCCWHN

 平文(解読結果)は割愛します.原文は江戸川乱歩黒手組青空文庫)の,以下のところです.

「あれには少くとも六つの可能な場合がある。第一は伯父さんや刑事が賊の足跡を見落したという解釈、賊は例えば獣類とか鳥類とかの足跡をつけて我々の目を欺瞞することが出来るからね。第二は、これは少し突飛な想像かも知れないが、賊が何かにぶら下るか、それとも綱渡りでもするか、兎に角足跡のつかぬ方法で現場へやって来たという解釈、第三は伯父さんか牧田かが賊の足跡を踏み消して了ったという解釈、第四は偶然賊の履物と伯父さん又は牧田の履物と同じだったという解釈、この四つは現場を綿密に検べて見たら分る事柄だ。それから第五は、賊が現場へ来なかった、つまり伯父さんが何かの必要から独芝居を演じたのだという解釈、第六は牧田と賊とが同一人物だったという解釈、この六つだ。

 出だしに暗号文,そして終わりに近いところ(上記の引用箇所より後ろ)に,表を用いた解読方法が書かれていますが,これまでの,青空文庫の文章を出典とするレポート課題と同じく,それらは,暗号解読の平文に採用しませんでした.
 原文について,興味深かったのは2点あります.一つは,「解釈」が6回出現することです.課題においても,「原文には「解釈」が6回出現します」というヒントを与えました.このヒントと,ローマ字は訓令式に近い*1というのを組み合わせると,平文に"kaisyaku",暗号文では"●▲123▼●4"という並びが6回あることを意味し,それを見つければ,平文の文字k,a,i,s,y,uに対応する,暗号文の文字が分かるというわけです.
 もう一つは,解読して,検索して該当箇所を見つけたとして,「六つの可能な場合」のうちどれが正解だったかということです.
 青空文庫のページで,少し読めば,「つまりね。先き云った六つの解釈の内第三と第六とが当っているんだ」が見つかります.「あれには…」も「つまりね…」も,発言は明智小五郎です.

*1:https://takehikom.hateblo.jp/entry/20150813/1439477768で書いたとおりワープロ式です.今回の原文のうち「鳥類」について,ローマ字は"tyôrui"ではなく"tyourui"となります.