今期の講義科目のレポート課題(暗号解読)は,いつものように単一換字暗号でした.
本日の授業前に答案を回収し,昼過ぎに解読結果と解説を,受講生向けに公開しました.
といったところで暗号文です.
GIVPRGTWIWVWMTJLLNVGRVDTGLVTZLGLYIGIRFTI GIMIJLBIWIDRWIVWLCRZLWCLWLDHLZLTBICLTMLV GTMLWLHLTWVWLWNVDVGLPVGIGIWLPVVZVNTWWVWI DRWIVJIGIPVBIIWYLTJLIFTZIGGRVGIWLCIGGIPH TKKIGTWLPIVPBTFVWZIDIGHTTVPIDRGIZLGLNIYI MVMVWLPLZLWVWLZLGGRVGRBIWIDRWIVIWYLTBIIW IGIWLVWLGVHLDVGIVPRGTCIGLLMLJIWIZRDRNIVZ RWIVGLDIWZTMLZVZRWHLPTGTZRPTBIWILPIDICIB ICIMVWVGTZRGRVDIPPHIVPLWLGLLDVBICIMVWVGT ZRGRVDTLPLDIZTZLDRHLDVIWFRWWIBLTBLTBIIDT MIVPVZIPVJIGIPVYIZLWLGIVPRGTWIIWYLTJLMLG GRVDTZLGLJLCIDRMLPVGGRVDTBIFTBIWIVWLCIZI DIFVNTWPIRHLTFVWPVGRVDRNICIVFHLTNTCIDLTI MIDVPLWWIZLGLNIZIDVZIWYIRGRVDTGLPVWZRVPT VFHIZTWVWIGGRPVMITZIDIWIGLWVZIZTVMIPTZLP VBLYIDIZIWVHIDTZLGLCIGLZLWWIZLGLJLZIWYIR WIYIDIPHLZTCLTBRBIVGGRVGGI
原文は,Web上で公開されている,日本語で書かれた文章の一部です.そこから記号類を取り除き,後述する1点を別にして,ローマ字で表記したものが平文です.
平文(解読結果)は割愛します.原文は大倉燁子の妖影の,以下のところです.
大切な任務を帯びているということが絶えず頭を離れないので、今度の旅行はどうもいつものようにのんびりとした楽しい気分になれない。私は暗号を預っていたのだった。
出発の際、S夫人から注意された言葉が耳の底に残っていて離れない。「暗号はあなたの生命より大切だと思わなければいけない。トランクも危険よ。スーツケースはなお更だ。肌身につけていらっしゃい」――その通り肌身につけている。恐らくこれより安全な方法はあるまい。しかし私がこの大切な暗号を持っている事を誰も知っているはずはないのだから、自分さえ用心していれば大丈夫だろう。余りそんな事ばかり考えていると神経衰弱になってしまうからな。とにかくいま少し朗らかにやることだ。――と、こんなことを考えながら食堂へ入って行った。
ここで,「暗号」は,暗号文ではなく,肌身につけることや初出の年代を考慮すると,「機密文書」と思われます.終盤で,盗まれています.「隠すことによるセキュリティ(安全性は機能しない)」の典型例と思っていいでしょう.
上記を採用したのには,また別の理由があります.「S夫人」です.発音は「えすふじん」なので,平文にするなら"esuhuzin"です.しかし今回の課題では"shuzin"を平文とし,課題ページで「原文には英大文字が1文字だけ含まれており,小文字にして平文の文字にしています」と補足していました.解読して得られた"shuzin"を,「しゅじん(主人)」と読んではいけません---訓令式をベースとしたワープロ式*1なので,"shu"は「しゅ」にならず,結局のところ,"shuzin"は「Sふじん」なのです.
- 昨年度の暗号解読は…あれ,記事にしていないや.
- 一昨年度の暗号解読は:https://takehikom.hateblo.jp/entry/2021/08/10/054445
- 今年度の暗号解読のやり方は:https://takehikom.hateblo.jp/entry/2023/06/23/213423; 解読対象の文字列を差し替えてから,「str.maketrans('ABCDFGHIJKLMNPRTVWYZ', 'jhdrztyawpombseuingk')」の変換を行うことで,平文を得ることができます.