「水を飲みに来たんやが…」
「今おるのは,さきの子とあとの子か」
「なんか用?」
「いやお前らには用事がないねん.しっかり勉強しいや.えっと,コップを取って,次は冷凍庫から氷を…んん」
「パパ,氷,ある?」
「それがなあ,ないねん」
「あたしらパクパク食べてるから!」
「うーん,なかったらしゃあないんで,生ぬるい水でも飲んどくか」
「あのさあ,パパ,冷ぞう庫に,こんなんあるんやで…(冷蔵庫へ行き,下段を開ける)これ!」
「(一口で食べられるゼリー,か)」
「でりーな!」
「待て待てあとの子よ,今,『ゼリー』ってちゃんと言えてなかったぞ」
「え? ゼリーって,言ったつもりやけど」
「ああ,今度は『ゼリー』や」
「うちもちょうだいよぉ」
「さきの子よ,お前,ちゃんと『ゼリー』って言えるか?」
「ゼリー」
「ふむ,問題ないな」
「ゼリー,いる?」
「はいはいありがとさん.もぐもぐ…そういえば,こんなんあったなあ」
「なに?」
「なになに?」
「トランプのゲームでな,『ざぶとん』って言うねん.知ってるか?」
「知らん」
「なにそれ?」
「…4~5人程度と,トランプ1セット,それと座布団を用意してやな」
「ざぶとん,いるの?」
「いや,座布団はなくてもええよ.『場』にすんねん.まずはトランプをよく切って,参加者に配ってやな…」
「最初の人は『1』って言いながら,トランプで1いうたらA(エース)のことやな,このカードを,裏向けて,座布団の真ん中に出すねん」
「それで?」
「次の人は『2』って言うて,2のカードやな」
「ふーん」
「けどやなあ.みんながみんな,Aやら2やらの札,持ってるとは限らんやろ?」
「…」
「…」
「で,そうやなあ,『3』,『4』,『5』まで行ったところで,『5』って言うたけど,伏せて出したカードが5とちゃうんやないかと,他の人が思ったら,そこで『ざぶとん』って言うんや」
「そしたらどうなるの?」
「伏せて出した人が,出したカードをめくって…」
「言うた数とおんなじやったら,『ざぶとん』って言うた人の間違いやから,その人が,座布団の上のカード,全部取って,自分の手札になんねん」
「へえ」
「ほなさきの子よ,『5』って出して『ざぶとん』言うて,めくってみたら5とちゃうかったら,どうなると思う?」
「えっと…」
「『5』って出した人が,もらうの?」
「せやな.座布団の上のカードは,全部,言うたんと出したんが違うかった人のもんや」
「そないして手持ちのカードがなくなったらおしまい,な」
「せやけど最近,トランプしてないよなあ」
「あっちのおばあちゃんのおうちでやったなあ.七ならべとか」
「そうそう」
「あ,ママが戻ってきた.またしっかり勉強しいや」
上のやりとりで,肝心の「なぜ『ざぶとん』と呼ぶか」を入れることができなかったので,wikipedia:ダウトより:
(略)日本語のゲーム名「ダウト」は、英語でのゲームの別名 "I Doubt It" のDoubt(ダウト)の単語に由来する。大阪、兵庫などの関西圏ではダウトが訛った座布団の名称で呼ばれる。その名前から由来して座布団の上にカードを出す遊び方をする。