わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

切片とか順序和とか

 Amazonの検索で見かけて,購入しました.しかしリュックサックに入れているだけでは,スマホアプリを優先してしまい,なかなか読み進められません.
 先週,学内のある部屋でまとまった時間,待機する用務がありました.事前の指示には持ち込み物の制限がなかったので,ノートPCを使って仕事をしてもよいところ,本書を持参し,学部教育やプログラミングに活用できる題材がないか,先頭から読んでいきました.
 はじめに気になったのは,ブラケット([ と ])を使用するもので異なる定義があることです.まずp.19の[x]はxの同値類で,同値関係が与えられているときに定義され,脚注で他にも様々な記号で書かれることが書かれています.次にp.30の定義3.6の[a]はaによる切片で,整列順序集合とその元aによって定まる集合です.切片に関しては他の表記は見当たりません.また中高の数学で見かけるガウス記号を連想しましたが,定義されている切片は整列順序集合の部分集合となるのに対し,ガウス記号を写像とみなしたとき定義域は実数,値域は整数となり,関連はなさそうと理解しました.
 ところで「切片」は中学2年の一次関数のグラフで学習しました*1wikipedia:切片_(数学)で詳しく書かれています.「整列集合の (initial) segmentについては「始切片(英語版)」をご覧ください。」ともあり,リンク先のwikipedia:en:Upper_setのうち"lower set (also called a downward closed set, down set, decreasing set, initial segment, or semi-ideal)"は,不等号に等号を含むかそうでないかを除き,『算数科のための基礎代数』で定義されている切片と,同等であるように見えます.
 先頭から読んで気になったもう一つは,\coprodという記号です.集合A,Bの和集合・共通部分・差集合,そして互いに素を定義したあと,A\coprod Bを直和集合(集合AとBが互いに素のときの和集合)と定めています(p.16).
 互いに素なときの和集合なら,A+Bと書いてしまえばいいじゃないかと思いつつ,この本の流儀*2に従って読んでいくと,p.56で解決しました.定義9.1ではXとYを互いに素な集合とし,それぞれの整列順序集合が定められているとき,X\coprod Y上の二項関係を定義し,ただちにそれが整列順序関係であることを示しています.その整列順序関係から導かれる整列順序集合を,順序和と呼び,X+Yとあらわす,というわけです.なお,X\coprod Y=Y\coprod XだけれどX+Y≠X+Yであることは,同ページ下部の補足22で明記されていました.
 今後も時間をとって読んでいくことにします.

*1:https://erid.nier.go.jp/files/COFS/h19j/chap2-3.htmによると,「変化の割合」「傾き」は,第2学年の関数の〔用語・記号〕にありますが,「切片」はページ全体で見つかりませんでした.

*2:直積集合の直後に定義された「グラフ」(p.18)と,2つの集合の冪で表記された「配置集合」(p.22)には,なるほどと思いました.