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段の数×3のGIFアニメーション

 いきなりですが問題です.一辺が1cmの棒を使って正三角形をピラミッドのように並べていきます.以下は5段のときの並びです.

 段の数を○,周りの長さを□としたとき,○と□の関係を,式に表しましょう.
 元ネタは,以下の本のpp.148-153です.

 最初のページには,「1だん」「2だん」「3だん」の並びの板書写真と,「だんの数(○)」と「まわりの長さ(□)」の関係表を載せています.表の下には,児童の「きまりが見えました!」のセリフです.これに対し,教師が「すごいね!どんなきまりか教えてくれますか?」(pp.149-150)と言うのは悪手*1で,他の2つの言い方を推奨する展開となっています.
 結論として(p.153),式は「○(段の数)×3=□(周りの長さ)」で,このようにすると20段のときの周りの数は,「20×3=60で求めることができるのです」.5段なら,5×3=15です.
 この6ページを読み終えて,おーいおいおいと思いました.これ,『小学校学習指導要領算数編』の第4学年のところに例示されている,「段数と周りの長さの関係」の三角形バージョンです(本文では特に言及されていません).元となるのは正方形の並びで,「算数授業研究」でも筑波の算数の先生方が授業を報告していました.サブブログ(かけ算の順序の昔話)で整理しています.

 その知見に基づくと,今回の三角形の段と周りの長さについて,「○(段の数)×3=□(周りの長さ)」のほか,「3×○(段の数)=□(周りの長さ)」も(交換法則を使用せずに)説明ができるはずです(このことも,本文では特に言及されていません).
 ○=5の場合で,5×3,3×5となる考え方を図にします.まずは「周り」を構成する棒に,赤・緑・青の色を塗ります.

 本数としては,赤は5本,緑も5本,青も5本です.トータルでは5+5+5=15,ですが左辺はかけ算にすることができて,5×3=15と式に表します.「1辺の長さが5cmの正三角形の周りの長さ」は,(5×3=)15cmということです.
 この色塗りについて,緑の色はそのままにして,赤と青を,以下の図のように移動させます.

 そして,色のついた三角形の周りの長さの和を求めます.1個の三角形の周りの長さは,3cmです.それが5個あるので,全部で3×5=15です.「1辺の長さが1cmの正三角形5個分の周りの長さと等しい」と考えて,(3×5=)15cmを得るわけです*2
 5段に限定することなく,1段以上の任意の段数について,かけ算の式は「○×3」でも「3×○」でもよいと言えます.ただし,『小学校学習指導要領算数編』や,出版物などでは,説明変数(段の数に当たる○)を乗算記号の左に置く式を推奨しているように見えます.
 GIFアニメーションを作ってみました.まずは5段の場合です.

 自作のRubyスクリプトで,段数を指定すれば,赤緑青の色無しのピラミッド,外周を色分けしたピラミッド,下段の三角形に着色したピラミッドの各静止画像と合わせて,このアニメーションGIFファイルを生成するようにしました.スクリプトの公開は差し控えます.アニメーションは,シーンごとの画像を生成して最後にImageMagickのconvertコマンドで作っており,6段以上はうまく作れていません.また1段のときは,赤と青の移動が発生しません.以下に,4段,3段,2段のアニメーションを示します.



 各画像の三角形の1辺の長さは40ピクセルですが,1本の棒の長さを描くにあたり両端5%ずつ減らしています.また棒の太さは,40ピクセルの5%にしています.ピラミッドの内部で,6つの棒の端点となるところ(5段なら6箇所)が,正六角形に見えるのは,この長さ設定のためです.

*1:「自分が絶対に言わないであろう言葉」とも書かれています.本書の21個の授業例(2章 算数授業での教師の判断力)の多くで,3つの「判断」の1番目には,「自分が絶対に言わないであろう言葉」が付いていました.

*2:https://takexikom.hatenadiary.jp/entry/2022/05/29/074041の求め方①を,本問に置き換えると,「1段増えると3cm長くなり,1段のときは3cmだから,○段だと○×3」となります.『算数授業を左右する 教師の判断力』p.153の板書写真を通じて,この考え方を読み取ることができます.