わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

テレビゲームの周辺にあるものを気づかせてくれる2冊(1)

どちらも興味深く読みました.前者はプレイヤー(保護者を含む)に,後者はゲームデザイナー(志す人を含む)に対して,遊ぶこと,学ぶこと,デザインすることの面白さや注意点を,分かりやすく解説しています.
私自身を振り返ってみると,小学生の一時期にゲームセンター通いをしていました.大学生のときにはテーブルトークRPGをモチーフにした小さなパソコンゲームを創って,雑誌に載りました.大学院生のときは2人対戦型テレビゲーム*1をたくさんやって,勝つために一人で時間をかけて練習をしました.働き出してからはテレビゲームをする時間がうんと減りましたが,うまくいったら喜び,失敗したら,対策を立ててやり直すか「自分の能力を超えているbeyond me」と理解するようになりました.
なお,前者の本については,テレビゲームを遊ぶことの素晴らしさを強調する一方で,コスト意識や,軍隊への利用の影響についての言及がほとんどないことには,注意しないといけません.
以下,本文をつまみ食い.

訳注――原著でビデオゲーム,コンピュータゲームと表記してあるところは,テレビゲーム,あるいは単にゲームと表記しています.
(テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ勉強してるんだから, p.vii)

この断りがあるので特に引っかかりなく読みましたが,テレビゲームのみを指して「ゲーム」というのには自分として抵抗があります.「ゲーム機」については,「機」の文字がある分だけまだましかなとも思います.

  • 子どもたちにとってのゲームとは,ほとんどの場合において複雑なゲームを指す
  • 大人たちにとってのゲームとは,ほとんどの場合においてミニゲームのことを指す

(前掲書,p.77)

ゲームから離れますが,この世代間ギャップにもまた注意をしないとと考えています.知識の伝達方法として,「見せる(読ませる)」と「口頭でのコミュニケーション」の2種類だけでなく,そのいずれでもない(例えばテレパシーのような)方法が台頭するかもしれません.そのときに,旧来のやり方しかしない人,テレパシー害悪論を主張する人,テレパシーでも何でもその特性を理解して活用する人に分かれることになります.当然私は,特性を理解して活用する人*2になりたいのですが.

最近の複雑なゲームは,長くて,深くて,難しい.その根幹にある活動は意思決定であり,子どもたちはその後に影響を与えるような意思決定をするのが大好きだ.何よりもそれが子どもたちに力を持った気にさせる.子どもたちは複雑なゲームをする時,目まぐるしく次々に判断を下す.最近,私の友人のエンジニアが,小学生の息子たちにゲーム中にどれくらい頻繁に意思決定しているかと尋ねたところ,0.5秒に1回は何らかの意思決定をしているというのが彼らの答えだったそうだ.
(前掲書,p.83)

そんなにしているとは.
…と思ったけど,これはテレビゲームに限りませんね.例えば将棋で「手を読む」作業は,小学生のときの私で(もちろんおぼろげな記憶で),毎秒1〜2手,調子のいいときはもっと,考えていたと思います.
補足ですが,将棋の意思決定というのは,指し手を決めること(大きな意味での意思決定,と言えますが)ではなく,「次にどんな手がありそうか」を一つ出すことと考えています.テレビゲームをしているときの意思決定も,同様でしょう.

あなたが今すぐ始めるべき「七つの長期的戦略」
ステップ1――自分自身を教育する
ステップ2――子どもたちに適切な質問を投げかける
ステップ3――記事や引用を使って,あなたの家族を教育する
ステップ4――子どもたちがゲームで遊ぶ様子を後ろから観察する (きちんと許可をとって)
ステップ5――子どもと一緒にゲームを買いに行く
ステップ6――ゲームをいくつかプレイしてみる
ステップ7――LANパーティの開催を手伝い,ゲームクラブを開設する
(前掲書,pp.195-207の小見出しのみ,一部割愛)

上の引用に補足すると,あなたは子を持つ親というのが前提となっています.ステップ4と5が逆のように思えますが,ステップ4では無料のオンラインゲーム*3を想定しているようです.
典型的な親は,子どもの遊び道具という理由で買って,どんな遊び方をするのか気に留めない,というのが背景にあると想像します.
本文中に「急進的」という表現をしていますが,ステップ7をやったら,自分の子どもからは尊敬され,参加した子どもたちからは理解者(神?)とみなされ,そしてブログに書けば数百のはてブがつきそうですね….

ただ,金を賭けている場合は,ギャンブルに手を染めているということであり,事実を突き止めなければならない.オンラインギャンブルは子どもには不適切な習慣だ.いかに私がゲーム擁護論者だとしても,これだけは,どんな子どもにも強く「ノー」という.
(前掲書,p.248)

これは「譲れない線」ですね.同意します.そして,オンラインゲームに限らずとも,Webにアクセスしていると,大儲けのチャンスといった触れ込みで,ギャンブルサイトへ誘導されかねないので,読者(=親)への注意喚起も兼ねているのでしょう.
もう一冊については,明日に.

*1:現時点では名前を伏せますが,そのうちこの日記で取り上げます.…いや,遊びとしても,人間関係でも,大きく影響を受けたのは4人対戦型だったなあ.

*2:パソコンもケータイも使いこなす,柳沢教授のように.

*3:さらに,この本では,子供がネットを自由に利用できる環境があるというのが前提のようです.ゲーム不可な親は少なからず,自宅でネットを使わせないか,接続環境を持っていないんじゃないかとも思うのですが.