わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

自己中に陥らない災害対策・トリアージ

集団災害で利用する通信手段や調整は,普段使用している方法を活用することが,災害での指揮の原則です.普段使ったこともない通信手段は,それが使える人がいなければ役に立ちません.使い方が分からないからです.時には,鍵がかかっていたりします.
(とっさの時に人を救えるか―災害救急最前線 (中災防新書 (015)), p.64)

日頃の訓練と,どこに何があるかの把握が,重要ですね.p.69には,『通常の手法を少しアレンジすることにより集団災害に応用できる柔軟性が必要です』とも書かれています.

また,特に,緊急時に人の調整を図ることはさらに困難です.お互い顔を知っていて,冗談が言えるくらいの関係になっていなければ,無理な頼みを,全く面識のない人に言っても,誰も聞き入れてくれません.必ず,「上司と相談してからお返事します」というお役所的な返事が日本での決まり文句です.
日本の社会は,個人では,誰も責任をとれない仕組みになっています.日常の生活の中で,一人でも多くの方と,日頃から顔見知りになっておくことは,まさかの時に役に立つことが多いのです.訓練もこのような意味で,日頃は全く関係のない人と知り合いになることができ,顔見知りになる絶好のチャンスなのです.
(前掲書, pp.64-65)

人間関係についてです.
事なかれ主義,先送り主義に,緊急時にはならないようにしないと.

トリアージの実施者(略)は,そこに居合わせた救急隊員,医師,看護師などです.しかし,年長者や有資格者が行うものでなく,その場で,最も経験のあるものが行うべきです.従って,災害直後の現場では,救急隊員(救急救命士)が行います.トリアージ実施者は,重症度や緊急度を短時間で判断できるようトレーニングを積んだ人が適任です.トリアージに要する時間は,一人当たり数十秒から一分以内でなければなりません.トリアージを行う場所は,災害現場や,医療救護所,後方病院などで行います.トリアージは,一回だけで終わるものでなく,傷病者の状態に応じて災害現場から病院到着後までのさまざまな場面に応じて,繰り返し実施されなければなりません.
(前掲書, pp.87-88)

トリアージは何度も行われるものであることは,報道でなされているでしょうか.とはいえ,最初にトリアージタグをつける方,とりわけ黒タッグをつける際には,それ以後のトリアージ判定で変わる可能性が低いと考えられ,心中は大変なものだと想像します.

一般市民と自治体とのトリアージの訓練が日頃から大切です!
目の前で助けを求める傷病者に対して,治療の必要性,緊急性を決めるトリアージは,大変勇気と決断力のいる仕事です.トリアージエリア内には,傷病者以外の家族や,報道関係者などは原則的に入れないようにします.このような災害時には,最大多数の命を救うことが使命であり,私見を挟まないようにします.もし,トリアージ結果に関して家族や傷病者と問題が生じた場合には,災害の規模や状況について十分に説明を行い,理解していただきます.
(前掲書, pp.90-91)

最後の文,だれがするか,その説明で納得してもらえるか(納得してもらうために,どれだけのリソースを費やすべきか)という問題があります.しかしこれは必ずしも医療者がする必要がなく,つまり私にも協力できそうなところです.

トリアージによって,最優先治療群,準優先治療群の患者を搬送します.原則として,災害現場では,必要最小限の応急処置のみを行って,必要があれば傷病者を後方病院へ送ります.
災害が,震災,火災,化学物質の暴露,交通災害などで重症な被災者が数十名を超える時は,大きな医療機関でもすべての患者の収容は困難です.日本の現状では,重症者の根治的治療は,一施設当たり最大五名,通常二〜三人です.(略)日本の重症熱傷の対応能力は一〇〇人程度で,各都道府県でも,二〇人以上の熱傷が出たらその地域でカバーすることは極めて難しいと考えられています.
(前掲書, pp.91-92)

「はよ病院へ連れてっていけ! 治してくれ!」と言ってはいけない
もしくはフィクションでこのフレーズが現れたら,反面教師ととらえればいいのかな.

血圧が高くて毎日降圧剤を服用している方,心筋梗塞で血が固まらないような薬を服用している方,ペースメーカーを体に埋め込んでおられる方,透析を受けないと命が危ない方,糖尿病で厳重な血糖値のコントロールが必要な方など,本人に直接聞かないと分からないことがたくさんあります.本人に聞けたとしても,詳しい日常診療の内容や,服用している薬の名前を言える人はほんのわずかしかいません.このような時のために,日頃から,服用している薬の名前などを書いた紙を持参しておくことも必要です.かろうじて命を取り留めたとしても,このような情報がなければ,多くの負傷者が発生した災害時などでは,一般の患者と同じように取り扱われ,その患者さんに医師の目が向けられるのはずっと後になってしまいます.高齢者や,本来持病を有している弱者ほど,その後の注意深い治療が必要であるのに,トリアージの名の下に忘れ去られてしまいかねない事情があることをわれわれは肝に銘じておかなくてはなりません.
(前掲書, p.95)

災害弱者,CWAP(Child, Women, Aged people, Patient/Poor people)のことと,そういう人々を優先することは,昨日取り上げた『トリアージその意義と実際』のp.10にも書かれていますが,そこはむしろ医療者側の心構えでした.上記は非医療者向けのアドバイスを含んでいます.