わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

川辺川ダム賛否問う設問

■出題された問題
 川辺川ダム建設計画は1966年に始まったものの、賛成・反対派双方の意見に決着がつかず、いまだに解決の見込みがありません。あなたは、この川辺川ダムの建設に賛成しますか、反対しますか。賛成・反対のいずれかに丸をつけて、その理由を書きなさい。

川辺川ダム賛否問う設問、中2テストに 熊本

川辺川ダムに関する知識は,asahi.comのこの記事と,wikipedia:川辺川ダムくらいしかありませんが,この設問は失敗でしょう.「配慮に欠けている」に同意します.
というのも,答案をその後どうするか,どうする人がいそうかの検討が抜けているから.
アンケートになってしまうんですよね.クラスあるいは学校で,賛否をカウントするのは,技術的に決して難しいことではないでしょう*1.統計処理だけでなく,各解答者と結びつけて,教師らの間で,もしくはそこを発生源として校外にも,“あの子は”といった陰口がはびこる可能性も考えられます.
結局のところ,リアルの事象を“問う”ことで「社会への関心を高めるのに役立つ」という考えには,同意できません.
専門家コメントの

社会問題など、正解が一つでない問題に対して自分なりに考えて意見を言う教育を、学校でもっとやってもいいと思う

についても,もっともらしく見えますが,児童生徒の発する意見を,教員が,親が周囲がどうするかについて,あらかじめ十分な配慮がなされているか,あるいは「何を言ってもいいよ,きちんと理由を言えるなら」という環境を作り,児童生徒もそれを理解しているかでないと,有効に働かないでしょう*2
んでなんで当日記で中学校のテストなんて記事を取り上げたかというと,試験問題は「ものづくり」であり,出題異図(デザインコンセプト*3)だけでなく,それが公開(リリース)されてから何が起こると想定でき,それに対してどう行動すればいいかを,プランニングの段階で十分に検討しておかないといけない,と常々考えているからです.

*1:答案は教室ですべて厳封し,採点機関かどこかに集約するというルールであったなら,よさそうに見えますが,実際にそういう対応をするほど秘匿性重視とは思えませんし,こんどは採点機関が賛否を集計する可能性を考えないといけません.

*2:なお,試験で問題として答案に残すのではなく,発言してそれが残らないようにする,というのは,配慮にならないと考えます.記録がない分,聞き手,要は担任の先生の記憶に…ときには実際の本人の発言と異なるものとして…残り,後の指導や評価に影響することが,十分に想像できるからです.

*3:それを明示するか否かは別問題として.あと,テストの中の1問だけの異図は,コンセプトというよりは,良いテストにするためのアイデアと見なすほうがいいかもしれません.