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機能別分化について

先月末,学内で,国立大学法人の第2期中期目標の策定に関連して,「機能別分化」という言葉を知りました.
各大学の位置づけを語ったり知ったりする際のキーワードと言えそうです.
Googleで,少し調べてみました.

〔3−3〕  高等教育の多様な機能と高等教育機関の機能別分化
(1)  高等教育が果たすべき多様な機能

  • 近年、教育内容の改善や充実を図って高等教育機関の個性や特色を明確化する改革が続いている。この結果、多様化が進む中で大学とは何かといった本質や、高等教育機関間の個性・特色の違いが不明確になってきているとの指摘がある。ユニバーサル段階の高等教育は学習者の多様な需要に対応するため、各学校種ごとの個性・特色を一層明確にしなければならない。
  • 高等教育機関のうち大学は、全体として
    1. 世界的研究・教育拠点
    2. 高度専門職業人養成
    3. 幅広い職業人養成
    4. 総合的教養教育
    5. 特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育研究
    6. 地域の生涯学習機会の拠点
    7. 社会貢献機能(地域貢献、産官学連携等)

等の各種の機能を併有するが、各大学ごとに比重の置き方は異なる。その比重の置き方が各大学の個性・特色となり、各大学は緩やかに機能別に分化していくものと考えられる。

中央教育審議会大学分科会(第36回)議事次第 資料7(2004/08/06)

A. (永山賀久氏)

  • 機能別分化は、社会の変化に応じて大学も変化すべきという観点から必然である。
  • 機能別分化は、中央教育審議会(H17年)で提示した7つの機能と捉える。ポイントは、その機能へと緩やかに自主的に分化をしていくということである。
  • 機能別分化が必然であるのは、大学が、大衆化・巨大化し、知的独占を行っていた時代と比べて、さまざまな機能が求められているからである。
RIETI制作シンポジウム 経済社会の将来展望を踏まえた大学のあり方(2008/05/30)

現在の弘前大学の特徴を述べるならば,第1に,明治9年創立の青森県師範学校を原点とする133年の歴史と伝統があり,そして,昭和24年新制大学として創立以来の60年の実績があり,第2に,文系・理系のすべての学問の基礎をカバーする人文学部教育学部,保健学科を含む医学部,理工学部及び農学生命科学部の5学部から成る中規模総合大学であり,第3に,全学部が大学院博士課程に直結する完成度の高い大学であり,第4に,歴史・文化の城下町で,そして学園都市である弘前市と,共に歩む地元密着型の大学であると,標榜することができます。しかも,この大学の姿に,平成21年度の概算要求事項や平成20年の第1次・第2次補正予算事項を加えると,本学は小さいながらも旧帝大の縮小版とも言うべき設備・施設も持った完成度の高い,自立可能な,そして地域に根ざした大学へと変貌しつつあります。
こうして見ると,第2期中期目標・中期計画に求められている「機能別分化」としての本学の姿をはっきりと見て取ることができると思います。
これから本学の柱は,大学の教育目的としての一般的な人材養成に留まるのではなく,特に地元の求める,そして地元の発展に寄与する人材養成を担うことができます。(略)
このようにして,第1期中期目標・中期計画の柱の一つ,教育・研究と並ぶ社会貢献は,地域の求める人材養成,地域医療,地域文化の継承,産業活性化,そして地域の活性化というはっきりとした具体的な方策を表すことになります。その結果は,地方大学として「機能別分化」を明確にし,地域に密着し,地域に貢献する第1級の地方大学としての新しい道が開かれてきたものと確信します。

弘前大学長による平成21年年頭挨拶(2009/01/05)

中教審の動向で最も気になるのは,「人口減少期における我が国の大学の全体像」に関する議論だ。「大学教育の量的規模」,「大学全体の健全な発展のための収容定員の取り扱いの適正化」,「大学の経営に関する情報公開の促進」,「大学の機能別分化」,「大学間ネットワークの構築」がその検討事項だ。
荒っぽい言い方をすれば,大学の機能別分化を推進し,収容定員を適正化(減員)し,大学間の連携を深め,相互補完の機能を強化する...という流れを作ろうとしているのだろう。ボクはこの強引な流れを作ることに懐疑的だ。平成20年度に新設された「戦略的大学連携事業」に積極的に取り組むことにもあまり賛同しない。注意深く様子を見守った方がいい。

国立大学の次期中期目標期間の過ごし方(2009/02/05)

《グランドデザインの中心は何か》
ユニバーサル・アクセスが格下げされたとすれば、次のグランドデザインの中心はなんだろうか。さしづめ「大学の機能別分化」かもしれない。答申のこれについての説明は大変にトゲが少なく、それだけにかなり評価する向きがあるようだ。しかしこれが高等教育の「構造化」の戦略だとすれば、余りにも弱々し過ぎないだろうか。臨教審以来、大学の自主的選択による個性化・多様化によって、自ずと高等教育に多元的な構造が形成されることが期待されてきたが、このような戦略で構造化が生まれる萌しはまだない。効果的な財政誘導が不可欠だと思うが、答申には明確な戦略はない。
いま「大学」という制度は余りに過大な多様性を抱え込んでおり、どんな改革の議論もその全体に通用することはない。今後評価システムの進展と連動して設置認可の意味・役割をどのように考えるかが大きな課題になってくると思われるが、共同体的性格の強い学術的大学と企業的性格の強いサービス産業化した大学とに同じ認可制度の考え方を適用することはできるだろうか。新制大学の発足以来連綿として続いている構造化の課題は依然として回答のないままに、問題の難しさは増していくばかりのように思われる。

アルカディア学報No.199 グランドデザインとユニバーサルアクセス―第22回公開研究会の議論から(2005/04/20)

(略)だからソフト面の改革論と平行して、大学の制度的多様化、種別化というハードな議論が長く繰り返されてきた。この議論は、臨教審時代の「自由化、個性化」を改革のキーワードとした時代を経て、今は中教審の「高等教育の将来像」答申(17.1.28)が提起した「機能別分化」に辿りついている。
この「機能別分化」という考え方は、大学の自主性による改革という発想の穏当さと、個別大学のソフト面の改革だけでは学生の多様化に対応しきれないというほぼ共通化した認識を背景として、大学人にも社会にもおおむね受け入れられているように思われる。そうであれば、これを大学政策に具体化していかなければならないはずだが、現在は専ら大学院でその具体的な政策化が進んでいるようである。まず、COE予算「グローバルCOEプログラム」は「世界的研究・教育拠点」の形成を目指し、専門職大学院制度の創設は「高度専門職業人養成」に特化した大学院の育成を狙いとしている。このほか多様なGP予算が、人材養成目標の明確化を通じて、大学院の機能別分化への誘導に繋がっているように思われる。大学院改革の一般問題としては「課程制の実質化」という基本問題があるが、専門職大学院の進展はこの問題の切り口として大きな波及効果があるに違いない。大学院改革は少なくとも動き出しているという実感がある。

アルカディア学報No.301 学士課程教育の再構築−制度・教育部会小委の経過報告を読んで−(2007/10/17)

これだけ読んで,さて自分はというと…
機能別分化の中で例示された7つの機能,すなわち「世界的研究・教育拠点」「高度専門職業人養成」「幅広い職業人養成」「総合的教養教育」「特定の専門的分野の教育研究」「地域の生涯学習機会の拠点」「社会貢献機能」について,どれ一つとっても,自分が学内において十分に貢献していると認めるものはありません.
とりあえず,自分の実績と関心をもとに,学生と教職員のみならず,関わる人のつながりをこれまで以上に意識して,研究・教育・その他のことを行っていくとします.
そういえば,機能別分化が大学単位で考えるべき論調に感じたのですが,教員の流動性についてどのように考えればいいんでしょうか? 大学教員は個人商店みたいなものと言われたりしたものですが,各大学の機能別分化が明確になったら,教員が大学を移ることで,学内における行動方針ががらりと変わる*1ことにもなるのでしょうかね.

*1:移るよりも,採用前の段階で,大学の方針をよく分析するようになるとか,抱負などを書くときにはその方針にある程度合わせるとか.