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全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(第4回)の資料を読む

開催案内と委員名簿だけで,議事録を待っていてもなかなか出そうにありません.
なのですが昨日,専門家会議の配付資料が載っているページを知りました.

先週金曜日実施の,全国的な学力調査の在り方等の検討に関する専門家会議(第4回)について,資料がPDF化されています.中間まとめ案も,全文を読むことができました.
読み進める前に,議事録について確認しておきます.「議事録」という文書はないのですが,専門家会議の第3回と第4回で共通して,「全国的な学力調査の在り方等に関する各委員の意見等(案)」という文書があります.ざっと見たところ,両者に共通する記述が相当数あります*1.会議で出た発言のうち,重要なものをここに残そうという意図がうかがえます.
中間まとめ案で,気になったところを書き残しておきます.「1. 調査目的」に関しては,今年度のものを維持するようです.調査目的の文言が毎年多かれ少なかれ変わっており,平成22年度(今年度)分については,主語が不明確になっていること*2については,残念ながら,何の意見もありませんでした.
なお,『3年間の悉皆調査の結果,信頼性の高いデータが蓄積され,教育に関する検証改善サイクルの構築も着実に進んできており』(p.2)に関しては,現状そんなようには思えないことと,直後の説明に結びつかないことの2点で,疑問が残ります.また,『「新成長戦略」について(平成22年6月18日閣議決定)』の教育に関する内容が,pp.2-3に列挙されているものの,現在の調査目的のまま実施していって,どのように達成できるのか,全く想像ができません.
「3. 対象教科」で,箱囲みのまとめについて異論はありません.加えてこれも異論ではないのですが,『その場合,追加すべき具体の教科については,学力などの測定方法が,全国的な学力調査になじむものを対象とすべきである』(pp.4-5),『なお,実験・観察などに関し,通常と異なる方法により学力等を測定する場合には,サンプル数を限定する等,詳細な検討が必要である』(p.6)には引っかかりを覚えました.これは,『理科では,知識だけでなく実験,観察が必要である.NAEPでは,実験セットを配ってパフォーマンス・アセスメントを行っている.特定の課題に関する調査においても同様の調査を実施したとのことだが,そこまで踏み込むべきかは論点となる』(各委員の意見等(第4回),p.7)が背景になっているのですね.
「4. 調査方式」に関しては,抽出+希望の今年度方式を継続とのこと.中身に関しては,『市町村や学校によっては,過去3年間の調査に引き続き,児童生徒の学力等をより詳細に把握,検証したいとの声があった』(p.7およびp.9)は抜き出す価値がありそうです.そういう声をあげた,市町村や学校の検証結果が,これからあちこちで公表されることを,期待したいのです.
「6. 教育課程実施状況調査との関係等」を読む前に,文部科学省ではこの調査をどう位置づけているかについて調査…http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/17/04/05042302.htmですかね.最初のPDFファイル,「平成15年度 小・中学校教育課程実施状況調査分析結果のポイント」で,概要を理解できました.
教育課程実施状況調査については,目的も実施方法も,得られた結果の使われ方も違いますので,『意義・目的を明確にすることにより,全国学力・学習状況調査との役割分担を図る』(p.10)という方針で,良いように思います.
教育課程実施状況調査は,学習指導要領といういわば日本の教育における設計図をおろそかにすることはできず,これまで4年間実施されてきた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)では,そういう設計図よりは,現場の状況を重視して何かしらの検証を行いたい,という棲み分けがあるのかなと感じました.前者はロケテ*3,後者は市場規模調査,のような.うーん,かなり違うなあ.
「7. 経年変化の分析等を重視した新しいタイプの調査方式の開発や,地方独自の調査との役割分担について」からは,「問題を非公開にはしない」「全国学力テストと地方独自の調査の両立については,今後も検討する」が分かりました.
各委員の意見を深く読み込むことができませんでしたが,『一つの調査で達成しようとすると矛盾が生じる』(各委員の意見等(第4回),p.10)と指摘されている点は,この専門家会議の意義の一つとして,明示しておきたいと思います.
さて…このような資料を読むことができるとはいえ,全国学力テストに影響を与えることができない者(当然,私自身を含みます)にとっては,何が制約であって変更はできず,どの部分が変わり得るのかについて,よく注意した上で,読み,情報発信をしていきたいものです.

*1:一例を挙げると,『全国や都道府県の状況把握は抽出調査で足りるが,悉皆調査では,健康診断に例えると,個人レベルで子供の症状を把握することができる.医者であれば目前に症状を持った患者がいればなんとかする.この患者は高血圧であると…,同様にこの子は分数が理解できていないと,そういう時に,指導方法はもっと切実になる.悉皆調査では,このような使命感・義務感的な雰囲気が醸成されてくることが貴重である』.

*2:図解のすすめ,全国学力テストへの批判 - わさっき全国学力テストを前に - わさっき

*3:wikipedia:ロケーションテスト