わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

愕然

琉球大学医学部が6年前から、助産師の卵たちに民間療法「ホメオパシー」を必修授業の中で教えていた。日本ホメオパシー医学協会認定の療法家(49)が講師だった。ホメオパシーに傾倒する助産師が通常医療を拒否するトラブルも起きており、同大は来年度から取りやめることを決めた。今後は学生に「リスクがある」と伝えていくという。
(略)
日本助産師会が8月下旬、ホメオパシーを使用したり、勧めたりしないよう会員に求めたのを受け、担当教員らが「適切ではない」と判断。来年度以降は中止することを、医学部教授会などを通じて決めることにした。
(略)
担当の教授(母性看護・助産学)は「お母さん方から質問された時に、説明できるように取り入れた。今後はホメオパシーはリスクがあるものと伝えていく」と話している。(岡崎明子、長野剛)

http://www.asahi.com/national/update/0916/TKY201009160388.html

感想は,「うん,まあ,改めますわな.ご担当の先生も,学部学科も,大変ですねえ」といったところです.別の言い方をすると,wikipedia:学問の自由,そしてそれに対する責任を,知ることができた,良記事だと判断しています.これまでのその科目を受けた,在校生や卒業生向けの声明も,準備しているのではないかと想像します*1
それにしても,この記事のはてブがすごい.

「必修科目にホメオパシー」を「ホメオパシーの科目(必修)」と勘違いしているとしか思えないコメントが多数.それと,担当教員や教授会が自主的に見直したことを踏まえず,「ホメオパシー教育=悪」とする意見.
その趣旨のはてブをつけた人で,脚光を浴びるようになる前から,ホメオパシーの問題を知っていた人がどれだけいたでしょうか.「尻馬に乗って,自分が入らなかった大学学部を叩いてんじゃねーよ」と言いたくなります.
改めて,このはてブを見直すと,暗澹としてきます.医学や保健といった,人の生死に直接関わるものではありませんが,私は学科の3年生を対象に,情報セキュリティという科目を受け持っています.2年前から必修科目となりました(入学年度の都合で実質的には今年度から).さしあたり事実が変わることがないと思われる「コアな話」だけでなく,新しい話も積極的に取り入れています*2.考案時には安全であると思われていたけれど,後に安全でなくなったという方式というのもあります.授業資料は,Webで公表しています.もしある授業に,単純ミスではない,世の趨勢に反する―それが言い過ぎであれば,情報セキュリティに関して持つべき素養に反する―ようなことを資料に載せ,授業で発言していて,何らかのきっかけで大量のネガティブコメントがやって来たときに,ふさぎ込まず,あるいは逆にキレることなく,誠実に間違いを直した上で,内外に向けて正しいのはコレですと言えるのだろうか,言わせてもらえるのだろうか….
自分もしくは家族が病院へ行き,治療の方針に納得をして実際に治療を受け,良くなるか悪くなるかは別にして,後に,その方針は身を悪くするだけと吹き込まれたときに,正気を保っていられるだろうか,今回の典型的なはてブのように,叩くことにエネルギーをつぎ込む人になってしまわないだろうか….
報道やネットで知る限りのホメオパシーは,決して科学的ではないし,病院などで勧められても今なら拒否することができます.幸か不幸かホメオパシーに接することがなかったからこそ,この件は,ホメオパシー教育ではなく*3,学問の自由とそれに伴う責任の問題と,とらえています.

*1:手放しで喜べるわけでは当然なく,これからは反省に基づいた授業・教育が必要ですね.あと,記事内容に関して,『今夏、山口市ホメオパシーを実践する助産師が(略)学内で授業内容に異論は出なかったという。』は,大学の対応の遅さを暗に示すことを意図した,記者のでっちあげではないかと推測しています.本当に取材して聞いたのなら,「異論は出なかった」のところでカギカッコ付きになるのが自然だからです.

*2:今年度だと,例えば,SSLへのヌルターミネーション攻撃を説明しましたが,ほぼ対応済みのようなので,来年度は外す予定です.余談として(十分に準備をした上で),librahackについてもしゃべりました.

*3:なお,ホメオパシーそのものに対する態度は,すでにhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20100902/1283377105で表明しています.