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式に単位を書かせるべきか(3)

いきなりですが問題です.式と答えを書きましょう.

  1. さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。
  2. さらが 15まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。
  3. ふくろが 5つ あります。1ふくろに りんごが 30こずつ はいって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。
  4. 50cmの紐の長さは,20cmの紐の長さの何倍ですか.
  5. 50cmの紐を切って,20cmの紐をできるだけたくさん作りたい.何本作れますか.
  6. △ABCがあります.ABとACの長さはともに5cmで,Bの角の大きさは40°です.Aの角の大きさを求めなさい.
  7. 最初の問題を50人が解いたところ,正解したのは30人でした.正解率は何%ですか.
  8. 次の図で,「●」はいくつありますか.
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さっそくですが解答です.《厳密派》に,なりきってみます.

  1. 3こ/まい×5まい=15こ.「/」を使わないなら,3こ+3こ+3こ+3こ+3こ=15こ.
  2. 3こ/まい×15まい=45こ.「/」を使わないなら,3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ+3こ=45こ.トランプ配りだと,15こ+15こ+15こ=45こ.
  3. 30こ/ふくろ×5ふくろ=150こ.「/」を使わないなら,30こ+30こ+30こ+30こ+30こ=15こ.トランプ配りの足し算で式を書きたくない.
  4. 50cm÷20cm/倍=2.5倍.問題文から,割る数の単位を「cm/倍」とした.
  5. 50cm÷20cm/本=2本あまり10cm.2本作れる.問題文から,割る数の単位を「cm/本」とした.商の単位が「本」で,あまりの単位が「cm」なのは,20cm/本×2本+10cm=50cmだから.*1
  6. △ABCはAB=ACの二等辺三角形で,Cの角の大きさはBの角の大きさと同じ.だから,180°−40°×2=100°.あれっ,2に単位をつけなくていいのか? 2倍だから,180°−40°/倍×2倍=180°−80°=100°とする? それなら,180°−40°−40°=180°−80°=100°のほうが楽だ.
  7. 30人÷50人×100%=60%.「100%を掛ける」で良かったっけ? 「100%に掛ける」として,100%×30人÷50人=60%のほうがいい?
  8. 縦に3個,横に5個あるので,3個×5個=15個^2と書きたいけれど,「個^2」という単位はないので,考え直す.一つの行に5個あって,それが3行あるのだから,5個/行×3行=15個.あるいは,一つの列に3個あって,それが5列あるとしたら,3個/列×5列=15個.足し算なら,5個+5個+5個=15個または3個+3個+3個+3個+3個=15個.

補足

本日のエントリを書く気になったのは,式に単位を書かせるべきか(1)を書いた次の日に,小学校学習指導要領解説 算数編(2)を読み直していたときのことでした.p.185では,角の大きさを求める式でも,「180×2」「180×4-360」と,度(°)を付けていないのです.
そのほか,書店で,小学生向けの算数指導や,中学入試対策の書籍を,何冊か手に取りました.角度計算に「°」付きのものを見つけました.また,長さ・面積・体積の変換で,「10000cm^2=1m^2」のように等号を使っているものがありました.それを除けば,式にはどれも単位がありませんでした.
角度の解答で書いたとおり,無単位の扱いもややこしいものです.「倍」という単位を導入しましたが,問題文にはありません*2.式というよりは求め方を児童に書かせたとき,問題文にない単位を用いているのを見て,「創意工夫をしているな」と感じる先生もいれば,「何か複雑なことをしているな」と否定的にとらえる先生も,いるかもしれません.
「倍」も「回」も,英語だとtime(s)です.ここで,例の問い(本日のエントリの最初の設問)が関わってきます.すなわち,『さらが 5まい あります。1さらに りんごが 3こずつ のって います。りんごは ぜんぶで 何こ あるでしょう。』をトランプ配りで立式する際,「5個/回×3回=15個」と書けるわけですが,「回」という単位もまた問題文に明記されていないのです.また問題文にある「まい」もしくは「さら*3」という単位が式に入っていない点も,気になります.
無単位になり得るケースとして,比例定数が思い浮かびます.ただし比例定数は,対象に即した単位を付けることも,無単位となることもあります.問題にしにくかったのでここで書きますが,「ある店は,パンを1個50円で売っている.パンの売り上げ個数をx個,パンの売上額をy円としたとき,xとyの関係を式にしなさい」だとy円=50円/個×x個,「兄弟のうち,兄は弟よりも長く勉強している.弟が勉強しているときは,必ず兄も勉強している.弟が勉強していないときに,弟の1日の勉強時間の半分,兄は勉強している.1日の弟の勉強時間をx分,兄の勉強時間をy分としたとき,xとyの関係を式にしなさい」ならy分=1.5×x分が,答えとして考えられます.
なお,本日のエントリの主な目的は,《厳密派》の否定ではなく,《厳密派》を小学校教育の場で浸透させるとしたとき,対処すべき要注意問題にはどのようなものがあるのかを洗い出すことです.「『5まい×3こ/まい=15こ』も正しい式じゃないか」という主張への補強にも否定にも,まだまだ行き着いていません.

*1:問題文にも,あとの補足にも書きにくいので,ここに書きますが,「長さの方向に切ったら,50cmの紐が何本でも作れる」と言う子には「くくりつけるのに使いたいんやが,その方向に裂いたら,弱くて簡単に切れてしまう」というツッコミを用意しています.

*2:小学校学習指導要領解説 算数編(2)にも,整数なら「2倍,3倍,4倍」と書くのに対し,分数だと「倍」の文字が落ちていることが,比例を扱っているpp.206-207で見られます.

*3:物品の名称が単位の名称にもなるものって,何だ? 思い浮かぶのは,「さら」のほか,「さじ」「カップ」と,料理関係ばかり.他にないか….