久しぶりに雑報です.項目数は多くありません.
1. 逆の立場で推奨本を探す
「かけ算の式の順序にこだわってバツを付ける教え方は止めるべきである」に代表される,順序否定派(非順序派)が,推奨できる指導方法や書籍は,あるのだろうか…
と考えまして,大阪へ行く用事があったときに,紀伊國屋書店で調べました.
2. 数研出版の検定外教科書とワーク
有望そうな本を1冊,見つけました.
- 作者: 埼玉大学教授 岡部恒治,京都大学名誉教授 西村和雄
- 出版社/メーカー: 数研出版
- 発売日: 2011/02/14
- メディア: 単行本
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とはいうものの,買いませんでした.文章題は見たところ《AB型》ばかりで,《BA型》《複数解》が見当たりませんでした.あとは,時間とお金の都合です.
次の2冊は購入しました.
- 作者: 埼玉大学教授 岡部恒治,京都大学名誉教授 西村和雄
- 出版社/メーカー: 数研出版
- 発売日: 2011/02/14
- メディア: 単行本
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- 作者: 埼玉大学教授 岡部恒治,京都大学名誉教授 西村和雄
- 出版社/メーカー: 数研出版
- 発売日: 2011/02/14
- メディア: 単行本
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具体的な問題を,見ていきましょう.まずは低学年用下です.
問題はp.46,答え(別冊子)はp.12です.《複数解》です.同じページの上には,「一つ分の大きさ」が容易に発見できるよう,図で囲い込みがなされており,それを被乗数とした式にする出題があります.
2年のかけ算で,《複数解》なのに,解答欄に書ける式が一つだけというのは,これまで読んだ何冊かと照合すると,特異なようにも見えます.この種の出題は,p.44,p.57にもありました.
つまり,数研出版のこれらの書籍---買わなかった本,買ったワーク---では,2年でかけ算を学習する際,式の意味として,例えば「3×4」と「4×3」のどちらが正しいか(どちらが,場面を表す式として適切か.もしくは両方か)を問うものは見られなかったのです.
文章題は見る限りすべて《AB型》.解答で,式はいずれも1種類だけ.その被乗数と乗数を逆にしたものを,正解とはしていませんでした.別の例として,アレイ図*2と式を,線で結ぶ問題は,p.58などにありますが,それぞれの式は,その積が異なるものばかりとなっています*3.
「中学年 上」に目を移します.最初がかけ算で,0を含んだり,桁数が多くなったりします.何の前触れもなく,《BA型》に出くわしました.
問題はp.11,答え(別冊子)はp.3です.「34×15=510」でもよいといった記述も,「34×15=510」ではなぜダメなのかの理由も,ありません.
この段階で《BA型》が出てくるのは,《算数解説》の第3学年の中に「ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった。はじめのひもの長さは何cmか。」があることから,理解はできます.
推奨学年3年の教科書(『考える力がどんどん身につく学ぼう!算数中学年用 上 改訂版』と思われます)に当たりたいところです.いつになるか分かりませんが….
3. セミロング休憩・大阪で何をしたか
某年月日の夕方6時半に,夕食を兼ねた打ち合わせをすることになりました.
和歌山バス,南海の特急サザン,地下鉄御堂筋線を乗り継いで,到着したのは6時ごろ.
それで,阪急梅田駅の下の,紀伊國屋書店に立ち寄って,本を調べました.『かけ算には順序があるのか』を手に取って見ると,第1刷でした.
打ち合わせを終え,店を出ると,9時半.ふだんなら帰路につくところですが,せっかくこっちに来たのだからと,梅田ロフトの筋向かい,アミュージアム茶屋町店に足を運びました.
DDRの台には,プレイヤーがいませんでした.ほろ酔い気分で,1回プレイしました.かつては100円2曲だったと記憶しているのですが,PASELI 100PでDOUBLEも3曲でした.もちろん激しいのはするつもりがなく,最後はMake A Differenceです.
朝,突然腰に痛みが走り,不自然な体勢を余儀なくされていましたが,パネルを踏んでいるときは,そのことを忘れていました.
時刻は10時.MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店を見かけましたが,次回にチャレンジということにします.リュックを背負って少しでも腰を前にし,JR大阪駅まで歩き,新大阪へいったん上がってから,22:45発の御坊行き*4快速に乗って,帰りました.
府県境を越えたあたりで,電話が鳴りました.妻からです.
4. トランプ配りを日常生活に
トランプ配りとは何か,またそれに対する所感は,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20110429/1304030056に書いているとおりです.このうち,
- トランプ配りと明示していませんが,それを適用するのがひどく不自然になるかけ算の出題というのは,把握しています.
について,出題例をもとに検討してみます.具体的には,「けんじさんのクラスは,全員で34人います。1人に15まいずつ半紙を配るとすると,全部で何まいいりますか。」*5です.
適用というだけなら,労せずできます.34人を並ばせるか,それが無理なら各児童の机の上に,まず「1枚目」と,配る人が言い,みなが目を光らせて,1人に1枚ずつ,配るのです.これが1回.そうそう,黒板か何かに,今何枚目かを表す数字を書くのも,いいでしょうね.
「15枚目」を配り終えると,配布終了です.このとき,一つ分の大きさは34枚,幾つ分は15回になりますので,あとは「34×15=510」でも,「34まい×15=510まい」でも,「34まい/かい×15かい=510まい」でも,学習内容に応じてお選びくださいといったところです.
で,この配り方には難点があります.
この方法では,クラスメートそれぞれが,本当に15枚の半紙を受け取ったのか,チェックしにくいのです.配るのを飛ばすという可能性は低いにしても,1回で1人に2枚を同時に渡すという可能性は,あります.これは,34人・15枚・半紙という,それなりの数と紛らわしいアイテムであるために考慮すべきことであり,5枚の皿に3つずつのりんごの出題では,おそらく検討するまでもないでしょう.そしてこれは,かけ算の指導を考える際には,2年生の内容だけでは不十分ではないかといったことを示唆しています.
さて出題に戻りましょう.チェックするには,それぞれの児童が,過不足なく15枚を持っているかを数えさせるしかありません.全数調査ですね.もっと人数や枚数が多くなってきたら,抜き取り調査(標本調査)のほうが,より信頼が置けるのかもしれません.
「みなさん,15枚を持っていますか〜」
「は〜い」
「そうすると,一つ分の大きさは15で,幾つ分になるのは34ですね.(中略)だからかけ算にすることができて,15×34です.あとは,これまで習ったことを使って,計算してみましょう」
という会話が想像でき,トランプ配りがどこかへ行ってしまいました.「どこかへ行ってしまいました」は恣意的であり,中立を装うなら,上のトランプ配りを考えていれば,そしてそれが解答者から採点者に伝われば,「34×15=510」もマルです.
そうすると次に検討するのは,「上のような配り方を本当に考えたのか? バツになってからの後知恵ではないのか?」や「15×34=510という式と比べて,34×15=510という解答が,その考え方を誤解なく伝えることができるか」です.少々毒を込めて言うと,トランプ配りの適用が良くない例として,授業で出すことができるのかもしれません.
トランプ配りを適用すると,実生活において不自然になる事例・問題は,他にもあります.
ボートを3そう用意しておき,1人ずつ2回乗せていくという,トランプ配りに基づくと,「3×2=6」とする余地はあります.しかし現実のボートで,そういう乗り方は,考えにくいですね.1人がボートに乗った状態で2人目を待つ,そんなボートが何そうもあるというのは,運営上,ずいぶん危険です.
俺教材研究
本当にそんな貸しボートがないのかを探し,規模(同時に乗船可能なボート数)や,転覆しない運営の方法にも注意しながら,取りまとめるというのは,ひょっとしたら夏休みの自由研究になるのかもしれません.
ボートを日常見かけない,というのなら,タクシー乗り場はいかがでしょうか.
大きめの駅前*6で,タクシーが何台も縦に並んで乗客を待っている乗り場で,トランプ配りに基づく乗り方をしていいかどうかです.「いいかどうか」というと運転手さん方次第ですが,実際にそれをやると,しかも日常やっていると,これは珍百景候補でしょう.
現実には,ボートやタクシーに乗せる(乗せ方=配り方を決めることができる)人は,その総人数が分かっているわけですから,あらかじめ,誰はどこ(何台目など)に乗るといった計画を立て,乗る人の重複や漏れ,そしてかけ算の計算ミスなどがないことを確かめてから,配車・乗車としたいところです.