わさっきhb

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トランプ配りの別展開

遠山啓は

  • 6人のこどもに,1人4こずつみかんをあたえたい.みかんはいくつあればよいでしょうか

という出題に対して,

  • ミカンを配るのに,トランプを配るときのやり方で配ると,1回分が6こ,これを4回くばる

という別解を提案しました[1].現在,この方法を支持しているのは,どうやらWeb上に限られます.教育現場において,支持や授業例が見られないのは,いろいろな本や論説などに目を通した上での結論なのですが,状況証拠を一つ挙げてみるなら,2009年に7巻に分かれて刊行された『遠山啓エッセンス』に,その主張を含む記事が掲載されていません.
トランプ配りは,3年の等分除で使用されています.そこで,学年が上がればそういう操作が許されるのなら,2年のかけ算のときに考える子がいても不思議ではない,と考えてみます.
そのロジックを用いると,

  • あかいいろのおはじきが7こあります.あおいいろのおはじきが9こあります.なにいろのおはじきが,なんこおおいでしょう.

という出題[2]に対して,

  • 7−9=−2 答え あおいいろのおはじきが2こおおい

も別解となります.負の数は温度計など,日常生活でも目にしたり,教わったりすることができます.本か,年上の人から,負の数の意味や演算を学んでいる可能性だってあります.
まあ現実として,出てきそうな答えは

  • 9−7=2 答え あかいいろのおはじきが2こおおい
  • 7−9=2 答え あかいいろのおはじきが2こおおい
  • 7−9=2 答え あおいいろのおはじきが2こおおい

といったところでしょうか.
トランプ配りに話を戻すと,まず,そのような考えで式を立てる子がどのくらいいるかどうかについての聞き取り調査などが,あってもいいようなものですが,あいにく見当たりません.バイアスなしで調査するのは,難しそうです.
トランプ配りを乗法に適用すると「あれっ」となるような出題の例としては,

  • ボートが 3そう あります。1そうに 2人ずつ のって います。ぜんぶで 何人 のって いますか。

  • つぎの 2人の つくった もんだいは,2×6と 6×2の どちらの しきで もとめれば いいでしょう。
    • 2つの ふでばこに えんぴつが 6本ずつ 入って います。えんぴつは 何本 あるでしょう。
    • えんぴつを 1人に 2本ずつ,6人に くばります。えんぴつは 何本 いるでしょう。

が興味深いです.前者[3]は,ボートを運営する者になって考えます.後者[4]は,書き分けが期待されており,式を介したコミュニケーションの問題となります.
そしてそうなると,「トランプ配り」だけでなく,乗法の交換法則や,当雑記でかつて「積の乗法」と書いたこと,また先日記した数量の関係に基づくものについても,それらの適用が妥当なのかを見ていく意義があるように思えます.

参考にした情報

さらに言うと

トランプ配りをさらに一般化すると,

  • Xを用いることによって,Yも正解となる

ということです.そこにクリティカルシンキングを適用させると,

  • その状況で「Xを用いる」としていいのか?

と言えます.
その種のクリティカルシンキングを行うのが適切ではない,となると,トランプ配りもまた,適切ではないのではないか,となります.
というのは論理を使った言葉遊びですが,教育的な観点での,トランプ配りの有用性や適用範囲についての調査・検討は,あってよさそうなものですが.
(最終更新日時:Tue Jun 5 07:04:51 2012ごろ)