わさっきhb

大学(教育研究)とか ,親馬鹿とか,和歌山とか,とか,とか.

リンク感謝

雑報形式で,最近見かけた当雑記エントリへのリンクなどを取り上げたいと思います.

1. かける数?・かけ算の順序(続)

あるブログの2つの連続する日付で,リンクをいただいていました.

書かれたのは先月ですが,こちらのアクセスログで存在に気づいたのは,数日前のことです.

かけ算には順序がある派の「わだいのたけひこのざっき」
http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111219/1324225396
を斜め読みしていると、遠山氏が区別すべきだと言ってる中心人物のように感じた。もちろん斜め読みなのでtakehiko氏はそんなこと言ってないのかもしれない。とにかく、この人の文章は読みにくい。

かけ算の順序(続)

「かけ算の順序」のダブスタ考,ですね.[5×3]カテゴリーでは2番目に多くのはてブをいただいています.ありがたい話なのですが,何度か読み直すものの,内容はどうも好きになれません.
一つは,「学術」「工学」を含んだ書き方なのですが,しかしこの内容を発展させて,学会(日本数学教育学会だとか)に出すというのは到底できない,というのがあります.「工学」は明記しているので,省略するとして,「学術」とは何かというと,自分がなじんでいる論文執筆の作法を取り入れて,書いていました.具体的には「はじめに注意」のセクションで,これは,論文の「準備(Preliminaries)」に当たるところです.
もう一つの理由は,「この問題だったら2×5だけが正解っていうけど,こういう問題にしたら,5×2も正解になるだろ」といった種類のダブスタ批判には応えていない点ですね.まあ自分の頭の中では,それも,「分かるとは分ける」であり,「(かけ算の式で表せる)問題を適切に分類すれば,ダブスタではない」のですが.
読みやすさ・読みにくさは主観によるので,何とも改善しがたいのですが,思うところを書いておくと,こちらは一つのエントリ(雑報の場合は一つのトピック)で一つ,何か明らかにしようと試みています.これまでに書いた多数のエントリを整理して,新たなエントリを作ることもあります.そうして「全体像」に迫ろうとしています.
絵を描くのにたとえるなら,一つのエントリやトピックは,線画における1本の線みたいなもので,それを取り上げて「これがこの人の主張」と言われてもなあという思いはあります.
なお,縦3つ横5つの●の並びを使って,かけ算を理解することについては,アレイ図として整理を試みています.

2. いまさらだけど算数のかけ算には順番があるよ

記事の終わりのほうに,ダブスタ考がリンクされています.
コメントが伸びているなあという印象なのですが,今見ると,本文中に,ぎょっとする記述があります.「「文章問題」では単位を考えることが重要である。「4個×6」と「6×4個」では意味が違うのである。」のところでして,このうち「6×4個」が「6個×4」だったら違和感なく,これまで読んできた多くの算数教育の解説書などに合致します.
「物理学,工学における積の順番は「慣習」」というのは,まあそうだろうなと思います.先月,4マス関係表のはね上がりの計算で,mghとか\frac{1}{2}mv^2とかを手帳に書いたのを思い出しました.これらがなぜそういう表記なのか,重力加速度gは定数なんだから,gmhと書く方がいいんじゃないのかなんて思っても,誰も答えを教えてくれません.コメントを見ていっても,F=maからF−ma=0にする操作は出てきても,maをamと書くことで得られるメリットは,見えてきません.ベクトルや行列を駆使するようになったら使うのかって,そんなわけはないですし.
物理学的観点で「かけ算の順番」をどうとらえればよいかについては,「仕事量」,それと「延べ」が,接点になると考えています.かつて引用しましたが,「3日間働いた人が5人いれば,3×5=15で,のべ15日の仕事です。逆に,5×3=15のように,人数をもとにして考えると,のべ15人の仕事です。」(http://kids2.gakken.jp/box/sansu/06/pdf/B036413170.pdf)です.もちろん3日×5人=15人日とすることも可能ですが,そのようなかけ算や「人日」という単位は,過去を含めて小学校の学習範囲を超えているように見えます.

3. ガラパゴス蛙たち・コメント

「5)」として,http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111013/1318452890が記載されていました.Greerの件ですね.ちなみにVergnaudはhttp://d.hatena.ne.jp/takehikom/20111102/1320181102で取り上げています.
念のため書いておきますが,外国の研究,英語の文献をありがたがっているわけではなく,算数・数学教育の書籍や論文で,乗法の意味について追いかけていくと,複数の参考文献に記載されているのが,VergnaudのとGreerのだったという次第です.
ガラパゴスというと,世界から見た現地(今回の話では日本の算数教育)がどうかとなりますが,歴史から見ることも,可能だと思います.もちろんその観点でも,「かけ算の式の順序はどちらでもいい」という学習は無理筋に思えます.これまでいろいろな形で書いていますが,「問題→式→答え→正誤判定」という流れしか考えないのが,古くさいのです.

4. TETRA'S MATH + こどものちかく

教科書センターで気づいた、自分の時代遅れさ加減 | TETRA'S MATH経由で…

ところが、世の中には長ネギを題材にした例もあるもよう。
http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20110713/1310502167
世の中って、広いなぁ。

http://kodomo.artet.net/?eid=1228798

「これは,もう,勘弁してくださいよお」の心境です.完全に創作です.
なのですがのちに(「公表」という面では,自分が書いたのより先になりますが),「不備のある算数文章問題に対する小学生と高校生の解決方略」という学術文献が出ているのを知り,エントリにしました.


あとはつまみ食いです.

ところで、ある1種類の針金の1mあたりの重さは、
これはこれで割合の仲間といえる。
しかし、「g/m」という、単位のある割合であり、
シュートの命中率のような割合とは異なっている。


小学校の現在の教科書では、
この2つの割合を区別している。と思う。
というか、この2つの割合を区別する考え方がある。


前者が「単位量あたりの大きさ」、
後者が「割合」。

http://kodomo.artet.net/?eid=1228798

この件,私は次のように認識しています.まず小学校では「g/m」「個/皿」といった,パー書きの量については取り扱わないのが建前です.学習指導要領とその解説は,目を通しました.教科書も,いくつか目にしてきた情報に加え,銀林氏の1980年代に書かれた本からも,パー書きなしについてはそこそこの確信を持っています.ただし,先生方の創意工夫として,早ければかけ算の導入の2年,あるいは異種の2量の割合で表す量を学習する5年のときに,取り入れているところもあるのでしょう.
算数教育指導用語辞典』p.236によると,シュートの話は「同種の2量の割合で表す量(比または率)」であり,g/mのほうは,「異種の2量の割合で表す量」に位置づけられます.「異種の2量の割合で表す量」をいつ学習するのかというと,一つ前の学習指導要領では6年でしたが,現在は5年です.
「/」を使わずに,どのようにして量として表しているのかというと,小学校学習指導要領解説 算数編(《算数解説》)に書かれています.「二つの量がかかわっているので,その一方をそろえてほかの量で」(p.179)算出・比較するのです.10m^2の部屋に5人いるとき,「5人÷10m^2=0.5人/m^2」と計算したくなるところを,「1m^2当たりだと,5÷10=0.5なので,0.5人」とします.「単位量当たりの大きさ」の解説(p.180)の中に,「〜を単位量にして」という表記が見られ,これが先述の「1m^2当たりだと」に対応します.

で、かけ算の式の順序にこだわることがおかしいとなれば、
当然、0.2×4 と 4×0.2 は区別しないはず。


となると・・・


学習指導要領をかえなくてはいけないのではないだろうか。

http://kodomo.artet.net/?eid=1228800

小数×整数が4年,小数(整数を含む)×小数が5年と分かれたのは,最新(現行)の学習指導要領からです.
キーワードは「累加」です.すなわち,0.2×4は0.2+0.2+0.2+0.2=0.8と計算できるよね,ということです.数教協アタマでいくと,それらの分離は,出てきにくい発想かもしれません.
「0.2×4」という式で表される状況は,例えばGreerの分類の「Equal measures」が典型的です.《算数解説》p.107(第3学年)の出題をアレンジしますと,

  • ひもを4等分した一つ分を測ったら9cmあった.はじめのひもの長さは何cmか.

に対して

  • ひもを4等分した一つ分を測ったら9.2cmあった.はじめのひもの長さは何cmか.

とすることはできますが,

  • ひもを4.2等分した一つ分を測ったら9cmあった.はじめのひもの長さは何cmか.

とするわけにはいかないのです.

A × B


の、Aを「被乗数」、Bを「乗数」と呼ぶのかどうか、
というところから議論せねばならないのですね・・・

http://kodomo.artet.net/?eid=1228801

《算数解説》から一例を挙げると,p.142で「ウ 乗数や除数が整数の場合の小数の乗法,除法」が解説されており,その中で「例えば,0.1×3 ならば,0.1+0.1+0.1の意味である。」と記しています.このとき「3」が乗数でないと,意味は通じません.

だって、「はり金の重さ」の導入のあとすぐ、
面積の問題なんだもん・・・
しかもタイル使ってるし・・・


これだと、3×2.6を続けてやりたくなりますよね。

http://kodomo.artet.net/?eid=1228802

そこに書かれている問題は,「一つの出題に対して,複数の解き方がある例」に見えます.また,「小数×整数は,長方形の面積の計算にも適用できる」ということも示しています.
この時点では,○を小数,□を整数として,○×□=□×○は学習していないと思われます.長方形を描いたら成り立つじゃないか,というのについては,長方形の面積でしか成り立たない(そして学校教育は,長方形の面積や《積指向》に基づいて,かけ算を指導しているのではない)とも感じます.

女の子が言うところの
「かけ算のきまり」が何をさしているかは不明。
なお、小3の「かけ算」の単元で
「かけ算のきまり」という項目があり、
ここで交換法則(用語はナシ)を学ぶというのが
なかなか皮肉な話になっている。

http://kodomo.artet.net/?eid=1228803

「かけ算のきまり」が何をさしているのかは,それまでの教科書や,授業・学習の内容,先生の言うことに当たるべきと,私も思いますが,小数×整数に限って言えば,《算数解説》p.142に例示されています.書かれている問題に適用すると,次のようになります.

  • 重さが2gだったら,2×4という式で表せるので,2ではなく2.3として(形式不易の原理*1),式は2.3×4
  • 2×4=2+2+2+2だから(累加),同じように2.3×4=2.3+2.3+2.3+2.3=9.2.答え9.2g
  • あるいは,2.3は0.1が23個という意味だから(小数の仕組み),それが4つなので23×4=92.ということで0.1が92個あるので,計算の結果は(「2.3×4=」の右に書くのは)9.2 答え9.2g

交換法則よりも,この問題で考えるべき性質,「計算のきまり」があるように感じ,プロセスを書いてみました.ただ,教科書センターで気づいた、自分の時代遅れさ加減 | TETRA'S MATHを読む限り,どちらも念頭に置いていると思っておいてよさそうですね.
なお,累加にせよ,小数の仕組みにせよ,乗数が整数なので適用できるのであり,たとえば2.3×4.1となったら,うまくいきません.(その解決策が「乗法の意味の拡張」と呼ばれ,5年で学習することになります.)


http://kodomo.artet.net/?eid=1228805http://kodomo.artet.net/?eid=1228806も読みましたが,前述の「交換法則を適用する対象」「Equal measures」で説明がつきそうです.
教科書センターで気づいた、自分の時代遅れさ加減 | TETRA'S MATHに戻りますが,「因数」については,高木貞治の名前も忘れないでほしいなと思います.今月13日に,読み直しています.「因数の順序」であって「乗法の順序」とはしていません.またその対象は自然数であり,分数の自然数倍だとか,量の何倍(最終的には実数倍)だとかは,構成要素となる2つの数または量は書き分けられています.

はり金1.5m分の重さが知りたければ、たし算で答えを出せばすむ話です。しかし、いまの目的は「小数×整数」の計算の仕組みを知ることなので、この数値を使った出題のしかたは、あまりうまくないと言えそうです。そうなんですよね、結局いまの目的は、「小数の計算の仕組みを知ること」なのだから、そのために適切な問題を選ぶ必要がある。題材含めて。しかし、計算の仕組みを知るだけではなく、その計算を使って問題を解けるようにならなくてはならない。たとえば、上記の問題で、「1.5×4=6」はマルにできるとして、「4+2=6」はどうしましょうか。そんなふうに考えていくと、結局、学校のテストの目的は、「与えられた問題に正しい答えが出せるかどうか」をみるためのものではない、ということになりそうです。知りたいのは学習目的が果たせたかどうかであり。テストでそれがわかるかどうかは疑問ですが、少しでも知りたいのだったらば、問題を周到に作っていかなくてはならない。

http://kodomo.artet.net/?eid=1228805

これは「マルかバツかでいうと,マルをつけるが,答案からは,そこで学ぶべきことが身についているとは言えない」ということと関係しそうです.
いまの教育では,「ルーブリック」が一つの解決策です.マルかバツか,1か0かの分類ではなく,数段階に,達成度を分けるというものです.2年のかけ算について,http://www.kasanken.com/03shidouan/2nen/2-20071006-kakezan.pdfのラス前のページに,ルーブリックと評価結果が載っています.

(最終更新:2013-01-19 夕方.URLを[]http://d.hatena.ne.jp/takehikom/20120222/1329861595[]から変更)

*1:この言葉は《算数解説》に見当たらず,『算数教育指導用語辞典』pp.18-19で確認しました.開いて気づいたのですが,そこの脚注に,乗法の意味(かけ算の順序)に関する注意事項も記載されています.