わさっきhb

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正方形と長方形

いきなりですが問題です.

長方形には当てはまるけれど,正方形だと当てはまらないことは,何でしょうか.

論理的には,長方形に対して成り立つ性質は,そのまま正方形にも成り立ちます.例えば「4つの角がすべて直角である」や「2本の対角線の長さが等しい」が思い浮かびます.逆に,正方形なら成り立つけれども,長方形では必ずしも成り立たない性質もあります.「隣り合う辺の長さが等しい」「対角線が直角に交わる」などです.
といったところで,解答例です.長方形では,2つずつ,角が合うようにして,折り重ねると,長方形ができます.しかし正方形に対して同じ操作をしても,正方形にはなりません.紙を使って,簡単に実演できます.
別の切り口を,書いてみます.長方形の縦と横を決めたとき,縦の長さを固定して,横に伸び縮みさせても(ただしその長さを0にしないようにして),長方形をつくることができます.しかし正方形に対しては,同様に横方向に伸び縮みさせると,正方形でなくなってしまいます.
このことは,大人モードで,2次元の直交座標系を使って,表すことができます.まず4点,O(0,0),A(a,0),B(a,b),C(0,b)をとります.a,b>0とします.このとき明らかに,四角形OABCは長方形(正方形を含む)です.aとbが,正の範囲で任意に動いても,長方形(同)であることには変わりません.
正方形になるのは,a=bかつそのときのみです.そこでA'(a',0)という点をとります.ただしa'>0,a'≠aとします.この点A'は,「縦の長さを固定して,横に伸び縮み」させる操作に対応します*1.さらに,B'(a',b)とします.そうすると,四角形OA'B'Cは長方形ですが,正方形ではありません.
正方形であり続けるには,a=bを維持したまま点Bを動かすことが必要です.直線y=x(x>0)上に,その点がなければならないのです.そのように点Bを動かしたとき,点Aと点Cも動きます.したがって,「縦の長さを固定して,横に伸び縮み」させることができません.
「面積」を使って表現すると,長方形の面積は,縦の長さと横の長さに対して複比例の関係であるが,正方形の面積は複比例ではない,と言えます.「複比例」に関しては,日を改めて取り上げます.

むかし書いた正方形と長方形

はてブのコメントに「文脈自由文法を学べ」と書かれていましたが,“正規表現”を(形式言語理論における)文法として表したものを“正規文法”といい,正規文法は“文脈自由文法”でもあります.すなわち,“正規文法”として書いたのなら,それは“文脈自由文法”と言えますが,逆は成り立ちません.しかし,“文脈自由文法(かつ正規文法ではない)”によっては,それと等価な“正規文法”,そして計算機上の正規表現で表せるものもあります.「ナニナニ文法」は他にいくつかあって*3,それぞれのクラス(文法の集合)は包含関係によって階層化されており,チョムスキー階層なんて呼び方がついています.
*3:ここまで読んで,何が何だかでしたら,“正規文法”を正方形に,“文脈自由文法”を長方形に見立ててください.四角形や多角形に見立てられるものもあります.

約束の途中

なぜ正方形で当てはまらなくなったか

「長方形には当てはまるけれど,正方形だと当てはまらないこと」を導くために,「2つの長方形の関係」「2つの正方形の関係」に着目しています.
ある操作を,任意の長方形に適用すると(他の形の)長方形が得られるが,その操作を,任意の正方形に適用してできる(他の)図形は,必ず,正方形にならない,そんな操作を示した次第です.
比較すると,「論理的には」として書いたそれぞれの性質は,一つの図形に関する命題と言えます.

*1:a'=(1/2)aにすると,「2つずつ,角が合うようにして,折り重ねる」ときの横の長さとなります.