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連続量÷連続量=分離量

今月書いた,「醤油を分ける問題」を,数式を使って見直してみます.個別問題と(その集合としての)問題の区別や,SQLといった,情報科学関連のトピックも織り交ぜたいと思います.

なお,かけ算の式よりも,わり算の式のほうが多いのには,理由があります.「分離量÷分離量=連続量」と「連続量÷連続量=分離量」が考えられるからです.前者の例は,先ほど書いた,平均を求める場合です.後者には,今月6日に指摘した,同等の量という場面での包含除(全体の量÷1つ分の量=幾つ分)が該当します.
ところで,13リットルの醤油の件から,もう少し面白い(頭の痛い?)ことを学べます.
「13リットルの醤油を3リットルずつに分けると、3リットル入りの醤油がいくつできるか」という問題の答えを出すなら,「13÷3=4あまり1」と式にしたあと,答えは4つとなります.
ですが「13リットルの醤油が入った容器がある.3リットルの容器に分けて入れ,もとの容器を空にしたい.3リットルの容器はいくつ必要か」という問題にすると,式は「13÷3=4あまり1」で先ほどと変わりませんが,3リットルの容器は,5つ必要となります.4つだと,13−3×4=1で,もとの容器にまだ1リットル残ることになり,空になってくれないからです.
これらは,あまりのあるわり算を学習中にも解ける問題ですが,取り扱いとしては,切り上げ・切り捨てと関連させるのが合理的に思えます.13÷4=4.3…として,小数の部分を切り捨てるのが前者の出題,切り上げるのが後者の出題になるわけです.

分離量と連続量,かけ算とわり算

上記のうち,「13リットルの醤油を3リットルずつに分けると、3リットル入りの醤油がいくつできるか」は,一つの個別問題です.そして,「13リットル」と「3リットルずつ」が与えられときに,「いくつ分」を求めるという,操作的な書き方になっています.
問題(個別問題の集合)を意識するとともに,宣言的に表すことができます.
S1={(a,b,q)|aリットルの醤油をbリットルずつに分けると,bリットル入りの醤油がq個できる}
こうすると,(13,3,4)∈S1です.aとbに小数が入ってもよく,例えば(8.2,1.8,4)∈S1となります.13リットルを3リットルずつ分けても,7.8リットルを1.8リットルずつに分けても,できるのは「4つ」です.いずれも,あまりは「1リットル」です.
ただ,こう表してみると,(13,3,1)や(13,3,2)や(13,3,3)も,S1に属することになってしまいそうです.「1個できる」「2個できる」「3個できる」と言われれば,確かにそうだからです.そういった値を取り除くには,集合で記述する際に条件を入れればいいのです.
T1={(a,b,q)|aリットルの醤油をbリットルずつに分けると,bリットル入りの醤油が最大でq個できる}
T1は,S1を使って表すこともできます.
T1={(a,b,q)|(a,b,q)∈S1,¬∃(a,b,q')∈S1[q<q']}
「¬∃要素∈集合[条件]」は,条件を満たす要素はその集合に存在しないという意味です.
余談ですが,このような書き方は,SQLで問い合わせ文を作ったり読んだりするときにも,使えるかもしれません.「最大で」と書いたので,max関数を使いたいところですが,簡単には取り入れられないのです.もちろん数学的な利点,具体的には「読みやすさ」「書き分け」も指摘できます.すぐ下の,T2の同様の記述と,読み比べてください.
さて,引用に書いたもう一つの(個別)問題も,同様に集合で表してみましょう.
S2={(a,b,q)|aリットルの醤油が入った容器がある.bリットルの容器に分けて入れ,もとの容器を空にするとき,bリットルの容器はq個必要である}
T2={(a,b,q)|aリットルの醤油が入った容器がある.bリットルの容器に分けて入れ,もとの容器を空にするとき,bリットルの容器は少なくともq個必要である}
 ={(a,b,q)|(a,b,q)∈S2,¬∃(a,b,q')∈S2[q'<q]}
ここでは,「bリットルの容器」を割るなどして「\frac{1}{3}bリットルの容器」を作ったり,容器を使い回したりしないと仮定します.関連する検討は,今年はじめ,子どもの視点でにて行っています.
ここまで,a,b,qの取り得る範囲を明確にしていませんでしたが,ここで確認しておきましょう.まず,aとbの取り得る範囲は,正の実数とすることができます.aについては,0を含めてもかまいませんが,bは,そうするわけにいきません(0で割ることになってしまう!).しかしqはそれらと異なります.0または正の整数です.q=0になるのは,S1やT1に属する3つ組(a,b,q)について,a<bのときです.1リットルしかないのに,1.8リットル入りの醤油と称して売るわけにはいきません.
集合T1とT2,そしてそれらのa,b,qの取り得る範囲から言えるのは,連続量の包含除(「分け算」)によって,「いくつ分」に対応する商が,整数すなわち分離量になる,そんな事例があるということです.次にすべきなのは,「分け算」を「わり算」にすることです.
T1では,aとbの値が決まれば,次の式によって(a,b,q)∈T1となるqが求められます.
q=\lfloor a/b \rfloor
わり算の記号には,「÷」ではなく「/」を使っています.それと,床関数を使用しました.\lfloor x \rfloorは,x以下の最大の整数を表します.「ガウスの記号」のほうがなじみという人も,いるかもしれません.
この記号を使わないなら,商と剰余の関係
a=bq+r
でも,表現できます.0≦r<bという制約を入れれば,qはaとbから一意に定まります*1
T2だと,こうなります.
q=\lceil a/b \rceil
こちらは,天井関数を使っています.\lceil x \rceilは,x以上の最小の整数です.
商と剰余の関係に,少し手を加えて
a+r=bq
と書くとしましょう.このとき,「13リットルの醤油が入った容器がある.3リットルの容器に分けて入れ,もとの容器を空にしたい.3リットルの容器はいくつ必要か」は,13+2=3・5という等式に対応します*2.この式の値すなわち15は,「15リットルまでだったら,3リットルの容器5つに入る」ことを意味します.
そしてこの式も,0≦r<bと制約すれば,qはaとbから一意に定まります.
(最終更新日時:Sat Sep 29 05:17:01 2012ごろ)

*1:0≦rだけにすると,集合S1を得ることになります.

*2:小学校の算数でこのような式を書けという意図はなく,商と剰余の関係,そして天井関数(切り上げ)をもとにすると,このような等式もあり得るという事例を紹介したまでです.