某年月日,幼稚園の生活発表会がありました.妻と,観に行きました.
「あのな」
「どしたん」
「うえの子のな,歌とダンスを見て思ったんやけど…」
「…」
「ダンスはしっかりやってたな.全身,使こて」
「せやね,ちゃんとビデオ,撮れた?」
「ああ,再生してみよか…(再生中)…まあこんなんやな」
「残しとかんとね」
「せやな.あ,ちゃうんねん俺が聞きたいのは」
「どしたん」
「声,抑え気味になってないか? 運動会のかけっこの前もそうやったんやが」
「あれねえ…人前で,いい声を出そうと思ってるんかな」
「いい声?」
「斉唱とか合唱とかなんかの声やね」
「声楽,かいな」
「そんなんやね.小学校で,3年になったら,音楽の専科の先生がついてね」
「はう? 自分のときは…ああ,5年から音楽だけ別の先生やったな」
「そのときに,ちゃんとした声の出し方を教わるねん」
「ふーん.てことは,うえの子も,誰かから教わってるんか?」
「いいや」
「ほなあの子の我流で,苦労して何やらやっとんかいな」
「そうやないかな」
生活発表会は,体育館の中で行われました.保護者らが座るイス席は,部屋の中央部にあります.イス席と舞台の間には,園児が座るスペースのほか「ビデオ撮影用ジュータン」というのがありまして,演目が変わるたびに,撮る人が入れ替わり立ち替わりしていました.
最初に年少組が歌うときに,ビデオ撮影用ジュータンの中央真ん前が空いていたので,座ってみると,ジュータンより前に,紙が貼られていました.
「先生」と書かれています.
そこに先生が座って,舞台のお子たちに指示をするので,中央真ん前でビデオを構える際には注意してくださいよ,という説明書きも,添えられていました.